劇場公開日 2024年5月10日

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「音のしずくを体全体で受け止め心を揺らす」Ryuichi Sakamoto | Opus 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5音のしずくを体全体で受け止め心を揺らす

2024年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

坂本龍一が音響監修を務めた109シネマズプレミアム新宿で行われた試写会にて、本作に触れた。一年前に亡くなった坂本龍一がこのモノクロームの映像の中で確かに息づいている。映し出される彼の後ろ姿。鍵盤を押さえる指の動き。すっと息を吸って表現へと昇華させていく表情。本作に刻まれるのはピアノ一台を使った演奏シーンのみだ。インタビューや経歴紹介などのドキュメンタリー要素もない。セットリストには私が中学生の頃から何百回と聴き続けた楽曲も並ぶが、これほど体全体で一音一音を受け止め、荘厳に広がりゆく音色に心を揺らした経験は初めて。指先から繊細に生まれる音のしずくが、身と心をゆっくりと満たしていくのを感じた。観客のいないスタジオで収録されたコンサートゆえ、そこには拍手などの要素も一切ない。それゆえ教授の演奏が映画館の客席の私たち一人一人に深く親密に語りかけているように思えるのだ。これほど貴重な贈りものはない。

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牛津厚信