「環境問題訴求映画としては弱いが、ネイチャー系映画と映画としてなら及第点」ブルーバック あの海を見ていた Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
環境問題訴求映画としては弱いが、ネイチャー系映画と映画としてなら及第点
2024.1.2 字幕 アップリンク京都
2022年のオーストラリア映画(102分、G)
原作はティム・ウィルトンの『Blueback(1997年)』
脳卒中で倒れた母の元に帰る海洋学者が故郷の思い出を振り返るヒューマンドラマ
監督はロバート・コノリー
脚本はロバート・コノリー&ティム・ウィントン
原題の『Blueback』は、劇中で主人公が魚につける名前
物語の舞台は、オーストラリアの西オーストラリア州にあるロングボード・ベイ
海洋学者のアビー・ジャクソン(ミア・ワシコウスカ、15歳時:イルサ・フォグ、8歳時:アリエル・ドノヒュー)は、助手のギトゥンドゥ(Albert Mwangi)とともに海洋調査に出向いていた
珊瑚礁の実態を調査するために海に潜り、検体を採取してはそれを記録していくアビー
そんな折、幼馴染のブリッグス(クレランス・ライアン、15歳時:ペドレア・ジャクソン)から「母ドラ(ラダ・ミッチェル、老齢期:エリザベス・アレクサンダー)が脳卒中で倒れた」との連絡を受ける
慌てて故郷に帰るアビーだったが、母は脳卒中の影響で言葉を発することができないと聞かされる
アビーは母との思い出に耽り、自分が海洋学者になろうと決意した過去に思いを馳せていた
映画は、8歳時に初めて海洋でダイビングをした思い出から始まり、15歳時に海洋の専門学校にいく決意を固めるまでを描いていく
母は地元の海を守る環境活動家で、湾岸開発業者のテッド・コステロ(エリック・トムソン)と事あるごとに衝突していた
時には警察が鎮圧するデモに発展し、母は決定権を持つ評議会に訴えかけていく
その頃のアビーは母と距離を置き始め、8歳時に遭遇したブルーバックと名付けたウェスタングローバーという魚との日々を過ごしている
ブリッグスと良い感じになりながらも進展せず、魚の絵を描いては、より詳しくなるために勉強に励む日々を過ごしていた
さらに、漁師のマッカ(エリック・バナ)と仲良くなり、担任のカーライル先生(Dalip Sondhi)からたくさんのことを学んでいく
アビーは、母の活動から距離を置いていたが、ある時、自分が描いた絵を持って町役場へと向かった
固有種の絶滅危機を訴えるものの、評議会からは良い反応を得られない
だが、有権者の一人が心を変えたことで、母の活動は一歩前に進むことになっていた
映画は、ほぼ回想シーンで構成され、主にブルーバックとの日々が描かれていく
ヒーリングビデオにも似た映像美と魚たちとの交流が描かれ、物語としてはさほど奇妙な展開を迎えることはない
ロバースヘッドと呼ばれる湾の窪みに棲んでいたブルーバックを助けるために取った行動が決定機となって海は守られることになったのだが、環境汚染の背景に違法な経済活動があるというわかりやすい展開になっていた
これらは原作者の体験談に近いものと思われるが、環境系の訴求効果としては、広大な海の映像と自然との戯れを見せることで、これを壊す意味があるのか?を問うていく流れになっているように思える
湾岸開発の無許可状態での強硬とか、リアルに描かれる側面もあるものの、そのあたりが背景になっていることが本作の特徴的な部分だろうか
いずれにせよ、海洋ネーチャー系ドラマとしては淡々とした内容で、ドラマ部分に重きを置くと少し退屈な映画かもしれない
ブルーバックとの交流はどうやって撮ったのだろうかと思わせるほどの接近描写になっていて、助けるためとは言え「ブルーバックを殴るシーン」があったりするので、別の意味でハラハラしてしまう
これらの映像美に浸る映画になっているので、それを楽しめる人ならば問題ないと思う
環境問題への提起としては弱いものの、これ以上提案が強いとクドイと思うので、これぐらいがちょうど良いのかもしれません