劇場公開日 2025年6月13日

「独特の世界観を満喫」JUNK WORLD ありのさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 独特の世界観を満喫

2025年8月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

驚く

斬新

 独特の世界観で描かれたストップモーションアニメ「JUNK HEAD」の続編にして、前作の前日談にあたる内容。
 一応、前作を観てから鑑賞した方が良いと思うが、観ていなくても本作単体で十分に楽しめるように作られている。

 流石に前作のインパクトを超えることは出来なかったが、緻密に創り上げられた異形の世界、オフビートな脱力系ギャグ、ブラックでちょっとキモいクリーチャー等、この独特の作風は今回も大変面白く観ることが出来た。

 人間側の調査団のリーダーである女性隊長トリス、彼女を護衛するロボットのロビン、マリガン側のリーダーであるダンテといったメインキャラも夫々に魅力的だったし、調査団に参加する大使と部下の凸凹コンビ、別次元の世界からやって来た少女バステトといったサブキャラも中々良い味を出していた。
 そして、彼らの前に立ちふさがるのが地下世界に生息する面妖なクリーチャーたちである。さながらアミューズメントパークのような非日常感が全編に渡って貫かれており、個人的にはこのビジュアルだけでも十分にお腹いっぱいになった。
 ただ、かなりクセが強いので、間違いなく観る人を選ぶ作品だと思う。

 物語もかなり捻りが利いていて楽しめた。前作は割とシンプルな冒険談だったが、今回は多次元世界が入り組むSF的な趣向が強い内容になっている。少し時系列が複雑なのが難点だが、伏線はキッチリと回収されているので消化不良感は残らない。

 特に、ロビンが神様になる世界の話は、前作との繋がりを考えると興味深く観れる。おそらくだが前作を撮った時からこの流れは想定していたのではないだろうか。本シリーズは全3部作という構想で考えられているが、物語、世界観、キャラクターは相当練られているように感じた。

 アニメーションとしての出来は、前作同様、決してクオリティが高いとは言えない。しかし、逆にこの手作り感溢れる所が個人的には好感が持てる。前作はほぼ監督一人で作り上げたというが、今回はスタッフや予算も増えたということだ。アニメーションのクオリティをブラッシュアップせず、敢えて前作と同レベルにしたことで、すんなりとこの世界観に没入できる。

 とはいえ、前作よりもグロさが減ったことと、スチームパンク風なテイストが後退してしまったことは少し残念だった。
 また、脱力ギャグもトリスとダンテの絡みで少し興醒めしてしまうようなシーンがあり、このあたりは今一つ感性に合わなかったという感じである。

 尚、今回は字幕版で鑑賞した。前作同様、今回もセリフは全編架空の言語で話されており、所々で聞き覚えのある日本語が出てきてクスリとさせる。どうやら吹き替え版もあるようだが、この可笑しさは字幕版でしか味わえないので観るなら字幕版の方をお勧めしたい。

ありの