劇場公開日 2023年11月18日

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「ルールを守る倫理と破る倫理」リアリティ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ルールを守る倫理と破る倫理

2023年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作のタイトルは、主人公の名前からきている。だが、ダブルミーニングで現実感を意味する「リアリティ」の意味もあると思われる。本作は実話を基にした作品で、トランプ政権時代に国家機密をリークして逮捕されたリアリティ・ウィナーのFBI尋問記録の台詞を記録からそのまま再現している。自宅に戻るとFBI捜査官の2人が立っており、「なるべく恐怖心を煽らない」ような口調で話しかける。一見フレンドリーな二人の捜査官と主人公の間に流れる緊迫した空気が本作の肝で、彼女は何をしたのか、本当にやったのか、それとも濡れ衣なのかが徐々に明かされる。探りを入れる捜査官の2人と困惑する主人公のやりとりだけで全編を通している。
主人公の部屋にはどういう意図なのか(単純に実際の部屋を再現したということか)風の谷のナウシカやハローキティ、ポケモン関連のアイテムが置いてある。深い意味があるかどうかはよくわからない。
機密を扱うものとリークするもの、どちらにも倫理観がある場合とない場合がある。本作の本質は主人公は本当に機密リークの犯人なのかだけでなく、機密をめぐる倫理にあるのだと思う。これは日本ではなかなか浸透しない倫理観だ。ルールには従うべきだが、ルールを作る側がおかしい場合、ルールを破ることにも倫理がある。とても重要な指摘をしている映画だ。

杉本穂高