「冷静沈着かつ透明な緊張感を持続させながら展開する異色作」リアリティ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
冷静沈着かつ透明な緊張感を持続させながら展開する異色作
何も事前情報を頭に入れないでこの映画を観た。結果的にそれが良かったのかもしれない。会話劇として、サスペンスとして、さらにその向こう側でうごめく心理に焦点を当てた人間ドラマとして、本作に引き込まれる自分がいた。何しろ「あらすじ」さえ読んでなかったので、冒頭から一体何が起こっているのか、目の前に現れた男たちは何者なのか、何が真実なのか、事態はどう転がっていくのか、全くもって不可知。おそらく作り手も最初からそれを目論んでいるのだろう。ほとんど説明のないニュートラルな立ち位置から、観客が少しずつ状況を飲み込んでいける巧みな構造に仕上がっている。そして我々が本作の真意について理解する時、この映画はメッセージ性を帯びたもう一つの側面をあらわにするーーー。冷静沈着なセリフの報酬を単調に陥らぬまま成立させた俳優陣も上手い。ちなみにリアリティとは主人公の名。この象徴的な言葉がタイトルに掲げられたのも納得だ。
コメントする