リアリティのレビュー・感想・評価
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ルールを守る倫理と破る倫理
本作のタイトルは、主人公の名前からきている。だが、ダブルミーニングで現実感を意味する「リアリティ」の意味もあると思われる。本作は実話を基にした作品で、トランプ政権時代に国家機密をリークして逮捕されたリアリティ・ウィナーのFBI尋問記録の台詞を記録からそのまま再現している。自宅に戻るとFBI捜査官の2人が立っており、「なるべく恐怖心を煽らない」ような口調で話しかける。一見フレンドリーな二人の捜査官と主人公の間に流れる緊迫した空気が本作の肝で、彼女は何をしたのか、本当にやったのか、それとも濡れ衣なのかが徐々に明かされる。探りを入れる捜査官の2人と困惑する主人公のやりとりだけで全編を通している。
主人公の部屋にはどういう意図なのか(単純に実際の部屋を再現したということか)風の谷のナウシカやハローキティ、ポケモン関連のアイテムが置いてある。深い意味があるかどうかはよくわからない。
機密を扱うものとリークするもの、どちらにも倫理観がある場合とない場合がある。本作の本質は主人公は本当に機密リークの犯人なのかだけでなく、機密をめぐる倫理にあるのだと思う。これは日本ではなかなか浸透しない倫理観だ。ルールには従うべきだが、ルールを作る側がおかしい場合、ルールを破ることにも倫理がある。とても重要な指摘をしている映画だ。
冷静沈着かつ透明な緊張感を持続させながら展開する異色作
何も事前情報を頭に入れないでこの映画を観た。結果的にそれが良かったのかもしれない。会話劇として、サスペンスとして、さらにその向こう側でうごめく心理に焦点を当てた人間ドラマとして、本作に引き込まれる自分がいた。何しろ「あらすじ」さえ読んでなかったので、冒頭から一体何が起こっているのか、目の前に現れた男たちは何者なのか、何が真実なのか、事態はどう転がっていくのか、全くもって不可知。おそらく作り手も最初からそれを目論んでいるのだろう。ほとんど説明のないニュートラルな立ち位置から、観客が少しずつ状況を飲み込んでいける巧みな構造に仕上がっている。そして我々が本作の真意について理解する時、この映画はメッセージ性を帯びたもう一つの側面をあらわにするーーー。冷静沈着なセリフの報酬を単調に陥らぬまま成立させた俳優陣も上手い。ちなみにリアリティとは主人公の名。この象徴的な言葉がタイトルに掲げられたのも納得だ。
A Day on the FBI Job
Here's something I haven't seen before: a drama scripted entirely off of a tape-recorded interrogation. Also: a film set entirely during the FBI raid of someone's home. Sweeney excels in showing the leaker going through the grown-up version of getting sent to the principal's office. A forgotten episode in turbulent news that should be reviewed before we return to Trump election shennanigans.
真実か名前か?
Reality(真実)のタイトルから犯罪捜査のサスペンスかと思ったが主役の容疑者の名前Reality Leigh Winner にも掛けていたのでしょう。
リアリティ・リー・ウィナーは、アメリカ空軍の退役軍人で、名誉除隊後も最高機密のセキュリティクリアランスを保持していたため軍事請負業者プルリバス・インターナショナル・コーポレーションに翻訳者として就職。彼女は2016年のアメリカ合衆国選挙におけるロシアの干渉に関するNSAの情報報告書を漏洩、政府の機密情報をメディアに許可なく公開したとして2017年、FBIに逮捕され2018年、史上最長の5年3ヶ月の刑を言い渡されました。映画は2017年6月3日にFBI捜査官がウィナーの自宅を家宅捜索、尋問を行った様子を当時のFBIの録音記録を元に脚本とした再現ドラマでした。そのせいか、画面でも録音を強調するかの様な音声波形のインサートがありましたね。
明かな冤罪、不当逮捕でもないですし、テレビの報道特番で済むような話を何故、ティナ・サッター監督は舞台化や映画化までしたのか分かりません。
ウィナーの弁護士は、6月3日にFBIの尋問を受ける前にミランダ権利(黙秘権、供述が証拠に使われること、弁護士に立ち会いを求める権利)が読み上げられなかったと主張し自白の無効化を訴えましたが却下された経緯があり、推測ですがその辺の真実を明らかにしようと言うのが監督の狙いだったのではないかと思いました。確かにFBIのセリフ内容は微妙ですが、あくまでも任意のお尋ねと度々念を押していたので証拠として有効だったのでしょう。
問題があるとすれば退役後もウィナーの国家機密情報へのアクセス権を無効化しなかったNSAの方にあるんじゃないでしょうか、彼女は空軍ではペルシャ語、およびアフガニスタンの公用語であるダリー語とパシュトー語を話す言語学者としてドローンプログラムに配属され傍受した外国の会話を盗聴し米軍に情報を提供、「650人の敵の捕獲、600人の敵の戦死、900の重要目標の特定を支援した」として空軍表彰メダルを授与されたことでの特別待遇かな。
また、機密文書を受け取ったネットメディアのインターセプト社も問題、真贋を確かめようと受け取った文書をNSAに渡したためFBIの捜査が開始された経緯から責任を感じたのかウィナーの弁護士費用を払っていたようですが情報提供者の秘密を守る基本が出来ていないのは看過できませんね。
兎に角、映画は捜査官とウィナーの対話ベースなのでサスペンス感を期待したのは失敗でした。
圧倒的リアリティ…
ロシアゲートは知っていたが、事件の裏側に彼女の漏洩があったことを知らなかった。FBIの取り調べが冒頭中々核心に迫らないのも、実際そんなものなのかも知れない。と言うか録音書き起こしなのだからリアルなのだろう。一見平凡そうな女性が大勢の男達に囲まれ、可哀想だと思っていたが、漏洩していたとは。。しかし、国家機密漏洩は罪なのだろうが、この情報を隠蔽することが国民にとって果たして罪だったかは正直分からない。ロシアがハッキングしていたのならその選挙は不正だし、増してや国家を左右する最大の選挙であり、トランプが再選した今も負の歴史が引き継がれている。そういう意味ではリアリティの告発は一石を投じたように思える。そして、それを考えさせるこんな映画を作るというのが凄まじい。
認知戦に利用された女
最近『アメリカン・イーグル』の広告モデルになって物議を醸したシドニー・スウィーニーちゃん。“良いjeans”という“良いgenes(遺伝子)”をかけたキャッチコピーが、白人優性思想につながるとしてリベラルから総攻撃を受けたのだ。そこに目ざとく飛びついたトランプが、“アメリカン・イーグルのジーンズが飛ぶように売れている。みんなでスウィーニーを応援しよう”とツイートしたもんだから、火に油を注ぐ大炎上騒ぎに発展してしまったのだ。
多分トランピアンでもなんでもないであろうスウィーニーちゃんが演じるは、ロシアゲート事件発覚の原因を作ったさる政府機関の派遣社員リアリティ。語学堪能で中東地域での正社員勤務が希望のリアリティだが、与えられた仕事は中東言語から英語への翻訳作業という地味ーな内容だ。勤務中偶然発見した“ロシアゲート”に関する報告書を印刷しどこぞの放送局に郵送する、という機密漏洩をやらかしてしまう。
映画は、リアリティの自宅で立ったまま行われたFBIによる任意取り調べの模様を、実際の録音テープから忠実に再現しているらしい。そんなテープがなぜ原作者兼監督の手に渡ったのか?事件そのものよりもその点にこそ興味がわくのだが、事件内容にふれる部分はなぜか意図的にオミットされていて、逆にそれが本作のいいアクセントにもなっている。
はたしてトランプはロシアとの共謀によって大統領選挙(2017)に勝つことができたのか。裁判では証拠不十分でトランプは無罪、ロシアゲートについての偽情報をヒラリー・クリントン陣営が2016年の選挙中に、意図的にメディアに流出させた事実も判明している。つまり、政争に利用されたスウィーニー同様、本作の主人公リアリティはその偽情報に踊らされたスケープゴートだったわけである。
劇中、『私はスノーデンじゃないわ』とリアリティがFBI捜査官に反論するシーンがあるのだが、ヒラリー・クリントンのPCからヤバいメールをロシア人ハッカーが盗み出したという事実はどうも本当のことらしい。ヒラリーが国務長官時代、私物のPCを使って各国にクリントン財団への寄付を呼び掛けたメールをハッキングし、ネット上にリークしたというではないか。
当然日本のメディアでは一切その報道が取り沙汰されることもなく、恒例のTV討論会においてトランプがその件を追及すると、窮地に立ったヒラリーが渋々認めるという前代未聞のシーンも見事にカットされていた。トランプの(FOXを除く)大手メディアに対する不信感が頂点に達した瞬間といっても良いだろう。
本作で描かれるロシアゲート前夜の漏洩事件も、結局中間選挙(2022)を見据えた民主党の報復行為だったわけだが、思うような効果を得られないまま空振りに終わったようだ。民主党にしてもトランプにしても、事実の真偽よりも選挙民がどのように思うのかという“認知戦”に終始しており、この点に関してはメディアなれしているトランプの方が一枚上手だったと言わざるを得ない。
リベラルにとっては思い出したくもない過去の恥部を扱った本作は、当然アメリカにおける劇場公開が見送られ、ネット配信のみの放映にとどまったのだとか。魔が差したとしか例えようのない無気力な派遣社員を、素っぴんノーメイクのスウィーニーちゃんが淡々と演じているこのセミ・ドキュメンタリーに、果たして政治的意図が隠されていたのかどうかも定かではない。
むしろ、いい歳こいたジジババたちの醜い足の引っ張り合いに嫌気がさしたノンポリ女子のささやかな反乱、という印象を受けたのである。能力があっても願い叶わず、まるで生殺しされているような現況の沼から抜け出したいと思いながらもままならない。檻に閉じ込めらた保護犬ボーダーコリーのように、その目はひたすらどんよりと曇って虚空を見つめていた。
いまそこにある危機
どちらの立場(2つとは限らないからどの立場が正しいかもだけど)に立って見るかで、捜査や調査の進め方の印象はだいぶん異なる。これはある日突然FBIの捜査を受けたリアリティの視点だから、連邦政府のやり方には違和感、悪意、陰謀、恐怖しか感じない。しかしひるがえって見れば、捜査や調査はそのように行われるのがある意味王道で、相手が悪人だと信じる場合には、胸のすく場面だったのかもしれないと思うと、今度は自分の神経を疑うようになる。いずれにしても、これはFBIの録音をもとにして実際に行われたやりとりのようすをセリフや時間軸はそのままに映画化したもので、かなり面白い試みの作品。観客の感覚はすなわちリアリティが感じていたこととかなり近いのではないだろうか。そう思うと、背筋が寒くなる。
トランプ2期目真っ只中ですから・・・
漏洩事件の容疑者と、FBI捜査官の尋問の様子を描く物語。
実際の尋問記録を忠実に描いた物語のようですね。それだけに、物語は地味で抑揚にかけますが、逆にリアルで緊迫感のある描写が続きます。
面白い着想でしたが、それだけの作品にも感じました。
それにしても、基本は会話劇なのに、なぜかスタジオ撮り⇒VFXが多いのは何故なのでしょうか?
私的評価はやや厳しめです。
そもそも何故この事件を映画化したのか? N.Y.現代演劇界で活躍す...
「リアリティ」が被疑者の名前だということに終盤まで気づかなかった(...
国家反逆か、公益通報か
毛糸のいとを一本一本解きほぐすかのように行われる尋問。けして脅したりすかしたりしない、しかし着実に相手の心を解きほぐし軟化させ無防備にさせてから心理的な圧力を加えて一気に自白させようとするFBI捜査官たちの巧妙な尋問手法が徐々に明らかになり、あたかも鑑賞中自分が尋問を受けているかのような追い詰められてゆく錯覚に陥るリアリティある作品。
主人公リアリティが自分の犯行を自白するまでを追ったまさにリアルドキュメンタリーな作品、観客はまさにそこにリアリティを感じる。
2016年に起きたとされるロシアによるアメリカ大統領選への選挙介入、ロシアゲート。その衝撃的な疑惑をリークした女性が逮捕され結果的に五年の拘留を余儀なくされた。
当時のトランプ政権ではそのリークは政権を揺るがす行為として国家反逆とみなされた。時の政府にとって都合の悪いリークが国にとって不利益となるのか利益となるかは判断は難しい。時の政府自体が国益を損ねることもある。それを正そうとするリークならば彼女の行為は国を思っての行為として公益通報者として保護され称賛されるべきものだ。
彼女のした行為は確かに情報漏洩として法律違反に値するが、と同時に国民の知る権利という憲法上の権利を守った行為ともいえる。自国の大統領選挙の結果が他国の情報操作によって捻じ曲げられたという疑惑は国民が知るべき事実と言えるだろう。しかし彼女は逮捕され投獄されてしまう。
尋問のさなか、彼女のリークは自分の現在の不遇な状況への憂さ晴らしが動機ともとれるような発言がなされるが、これをもって彼女のリークをただの密告と非難できない。
公益通報として重要なのはたとえ私怨などが絡んで行われたとしても客観的に見て公益となっていればそれは公益にかなった通報と判断されるべきであるということだ。
いま日本でもこの公益通報制度が揺れている。鹿児島県警の不正リーク事件と兵庫県知事のパワハラを告発した事件だ。共に被害者は公益通報者である。あろうことか一方は逮捕され、一方は自死に至っている。本来守られるべき通報者が権力によって葬られようとしているのである。それをリークされて困る権力者側がもみ消そうとしているのであるから事態は深刻である。不正を正し、より良い行政を目指すのを目的とした公益通報制度の根幹にかかわる由々しき事態である。
結局リアリティはこのような事件では5年という異例ともいえる長い拘留をされることになる。人権を軽視した政権下で処罰されたのがそのゆえんかとも思える。その人権軽視の最たる人物が再び大統領の座に就こうとしている。先日彼は銃撃を受けたが、暴力には断固反対すると息巻いていた。今までさんざん支持者たちを煽り議会襲撃事件や対抗勢力への暴力行為を扇動し、暴力の連鎖に国を巻き込んできた人間の言葉とは思えない。アメリカの傀儡国家である我々の国もこれから4年間は戦々恐々とした状況に追い込まれるだろう。
劇中捜査官に責められて追い詰められてゆくリアリティ。しかし本当に責められるべきはどちらであろうか。
真っ当なFBI捜査官と容疑者
静かだけど退屈しない映画で、あっという間の82分でした。
情報がほとんどない状態で映画を見たので、主人公の女性の様子から無実を信じていましたし、女性1人に対して大勢の屈強なFBI捜査官が次々到着するので、大げさに感じていていました。
また、FBI捜査官の女性に対して、任意調査の伝達や気遣いなどが、丁寧すぎるなと思いました。
考えてみると、あとで裁判で使われるであろう言動はこれぐらい、慎重になるべきなのでしょう。
粗忽者で信じやすい私には、FBI捜査官はムリです。
この映画には、バグった動物に優しい聡明な女性と冷静で思慮深いFBI捜査官が登場し、強欲な悪人はいません。
もし、ネットフリックスで見ていたら、
地味な映画なので、途中でやめていたかもしれないので、集中しやすい映画館で見れて良かったと思います。
刑が重すぎでは?
2017年6月3日、買い物から帰宅した25歳のリアリティ・ウィナーは、2人のFBI捜査官から声をかけられ、ある事件に関する捜査をしていると言われた。穏やかな口調で質問を繰り返す彼らだったが、徐々に緊迫感を増していき・・・ついに・・・てな話。
リアリティが名前とは、と思った。
内容で言えば、FBI捜査官の穏やかな質問の仕方が素晴らしかった。
結果は5年3ヶ月の有罪となったらしいが、国家機密漏洩ってこんなに重い刑なんだと知った。トランプにやられたのかもしれないが。
ただ、面白いかと言えば、ドキュメンタリーの再現だし、そんなに面白くはなかった。
主演シドニー・スウィーニーの表情の演技に圧倒される
実話ということで、ドキュメンタリー的なつくりなのかと思いきや、
そんなことはなかったです。
ただ、物語になっているということもなく、FBIの尋問記録の完全再現映画としか
言いようがないですね。
いきなりそこから始まるんだ!?と、冒頭から面くらいましたが、
とにかくFBI捜査官の尋問手法が本当に凄すぎる。
優しく入りこんでくるあたりが、ある意味怖いし苦しくなるくらいですが、
どんどんボロが出ていく様を見るにつけ、
主人公の名前だけでなく、作品自体のリアリティもありました。
主人公リアリティを演じたシドニー・スウィーニーによる表情の演技が圧倒的で
それだけでも観る価値がある映画だなと感じた次第です。
82分という短めの上映時間もスピード感があってよかったです。
「ヒトラーのための虐殺会議」と同様の
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