コンクリート・ユートピアのレビュー・感想・評価
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火事場泥棒
元日の能登半島地震から半年が経ちました。映画どころではない生活が続いていたので、このような作品が公開されたことも知りませんでした。そろそろ落ち着いてきたのでトラウマもなく鑑賞することが出来ましたが、やはり思い出すのは実際に多発していた火事場泥棒。現実には生きるための泥棒なんてそう多くはないことに心が痛みます。
この作品では局地的な災害ではなく、巨大隕石が地球に激突したかのような全世界的なディザスター後の世界。極限状態に置かれた人間のサバイバル本能と醜い争い、コミュニティの排他的団結心が描かれていました。代表と呼ばれるようになったヨンタク(イ・ビョンホン)が祭り上げられ、やがて住民を支配していく様子。まるでゾンビのいない「ウォーキングデッド」みたいな世界観でした。
イ・ビョンホンがカリスマ的なダークヒーローになるのかと思っていたけど、そういったキャラではなく、リーダーなんて誰でもよかったようにも感じ取れました。そして、選ばれたヨンタクが本当に真の住民だったのか?という意外な展開。ストーリー的には帰ってきた隣人少女へウォンがもっと活躍すると思ってたのに違ったなぁ・・・怒濤の反乱とかで誤魔化された印象も残った。
一昔前には韓国のマンションやデパートなんかが手抜き工事で崩壊したニュースが多かったけど、ファングンアパートの周辺はそんなマンションばかりだったのだろうか。一棟だけ崩壊しなかったのは耐震基準に合致していたからなのか?奥能登へは何度も行きましたけど、周囲が全壊した家ばかりなのに一軒だけ無事だった家もあったことを思い出します。マンションという独特な近所づきあいというのも盛り込んであったように思います。また、マンションの住民はみな家族!という言葉にも異様ながら説得力がありました。
全体を通して、戦争の縮図といったイメージが残りました。しかも生存競争という古代の戦争。ミョンファのその後のストーリーも気になる作りとなっていましたが、「金を払わなくていいの?」という台詞が妙に現実的に思えます。あぁ、またウォーキングデッドを見たくなってきたなぁ~
思いの外楽しめる
アンバランスさ
人を人としてあらしめる要素とは何なのか?
大災害で崩壊した世界は「サバイバルファミリー」のようでもあり
ゾンビが出てこない「新感染 ファイナル・エクスプレス」のようでもあって
愛は愛なんだけどもっとモラル的な意味の愛というか。
キリスト教のモチーフが度々でてくることもあり、
そういう人間愛みたいなとこに焦点をもってきた作品だったと思う。
あとやっぱり言わなきゃいけないイ・ビョンホン。
自分で切ったみたいな髪型もそうだけどキャラ造形が素晴らしかった。
なんだけど全体で見たときに存在感が強すぎるし
準主役なのに主人公を完全に喰っちゃってるみたいな。
とても良く出来た作品だっただけに、そのアンバランスさとか
粗さみたいなものが目に付きやすかったのかなと思う。
大災害の中、たった一棟無事だったマンション。なんちゅう無理ある設定...
ユートピアって⁇
韓国ソウル壊滅的な地震?災害が起こります。一棟だけ残ったマンションに住む住人対生き残っている人々とありそうなストーリーだが、なかなか面白い作品でした。
ここまでの災害が起こると人間の本質が出てくるのは当然で、何処にでもいる口だけおばさんが登場する。偶然に、消火活動に参加した男性ヨンタク(イ・ビョンホン)をリーダーにする。自分では責任取りたくないやなーと感じてしまう。マンションの住人以外の人間を排除しようとする。なかなかムカつくババァです。そこに乗っかってくる住人も簡単やなーと感じましたが、自分の居場所を確保したいと思う事は当然だとも思ってしまう。
このマンションをユートピアにする為に、規律を作りカラオケなどで娯楽を与えて人間の心理をコントロールして行く。皆んなが盛り上がっているのが、異様に感じる。
そこで、主人公の夫婦がその対立に翻弄されます。妻のミョンファは、常に冷静で正義感が強い。旦那のミンソンは徐々にヨンタクに
擦り寄りマンションの住人と一致団結して行く。
その一方でヨンタクは、怪しげでストーリーが進むにつれて過去が明らかになり、1人の少女の出現でヨンタクvs ミョンファとなって行く。
サバイバルの中にサスペンスとヒューマンドラマを混ぜた闇鍋的な映画でしたね。
終盤少しの希望が残るラストになっているので、夫婦の絆も少しばかり見せた感じがあり、感動に終わりました。
生き残っていく為には、何が正解か?相手が人間だけにさまざまな考えがあって当然。だからややこしい。ゾンビなら、人間VSゾンビで殺したら解決するが物資の取り合いで止む無く人を殺して行くしか無いとなると、人間の精神は崩壊して行くだろう。
自分ならどう行動するだろうと?
なんか、いろいろ考えさせられる映画でした。
人間の醜い争い
本当の
倒れなかったアパートとサバイバル
巨大地震のあと、一棟だけ倒壊せずに残ったアパートでおこる危機と道徳の戯画絵巻。非常時の人の醜さに焦点が置かれてエゴが強調された話になっている。
ふつう一線主役級になるとかっこわるい役をやらなくなるものだがビョンホンは泥臭い役でも引き受けてしまう人だと思う。それだけが僕の世界(2018)や私たちのブルース(2022)を見たときもそれを思ったが、本作でも脛に傷を持ち、しっかりとかっこわるさを出していて「役者」だと思った。
他ではモラルがテーマゆえ善良そうな俳優がキャスティングされている。
イテウォンのパクソジュン、「力の強い女」パクボヨン、はちどりのパクジフ。三パクにくわえて韓国映画/ドラマに出てくる中年女性でいちばんよく見るキムソニョンがアパートの婦人会長を演じた。
imdb6.7、RottenTomatoes100%と75%。
トマトメーターが高すぎると思った。
批評家たちが褒めている部分で共有されているのは俳優の演技(とくにビョンホンの)とブラックユーモアとプロダクションデザイン。
人間の本性が露呈する、よくあるディザスタースリラーだとしつつもアンサンブルが上手で(極限状態での人間性を描く)逆転のトライアングル(2023)やハイ・ライズ(2015)や蝿の王(1991)と比較してもいい出来だった──としていた。
個人的にはトマトの批評家のようには感じなくて、映画ゆえの誇大表現は解るにしても「こんなひどいことにはならないでしょ」と思ってしまうところが多かった。
とはいえ災害時の自制心に自信があるわけではなく、家屋や家人を失ったという災害のニュースを目の当たりにするたびに、もしじぶんがそうなったらどうしよう──と考えることがよくある。
日本は地震大国なので映画のような事態がないとは限らない。おそらくそれはこの映画を率直に楽しめなかった理由でもあると思った。
先日ネットフリックスで見たマドンソク主演のBadland Hunters(2024)は本作の続編という位置づけになっているそうだが(どうりでどこかで見たようなアパートだと思ったが)むしろアクションコメディに徹したBadland Huntersのほうが個人的には楽しんだ。
そうは言っても悪くない映画だった。
住人がそれぞれのサイドストーリーを秘匿していること。また、周辺をサルベージしているあいだに人を殺戮してでも食料を奪うのが常態化していったり、非アパート民を匿っていた住人を処罰し、次第に狂信的な全体主義が敷かれていく行程がしっかり描かれていて、有り得るリアリティをもっていた。結局ボヨンの最後の台詞がこの映画を転結していて要するにたとえ普通の人たちであっても悪環境とストレスを与え続けることでどこまでも落ちていく──という話だった。
ただし集団において人の醜さが露呈する──という話ならば「今、私たちの学校は」や「Sweet Home -俺と世界の絶望-」あるいは「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」や「My Name」といったドラマで見られるように韓国のもっとも得意とする修羅場であるゆえに、コンクリートユートピアになんとなく既視感を覚えたのはBadland Huntersを先に見てしまったから──という理由だけではない気がした。
美しさが正しさとイコールになっている韓国映画らしく本作のパクボヨンとパクジフはシンパシーの集約係だった──こともありジフが酷いことになってしまうのは残念だった。
人間のエゴの末路
死ぬまでを“生きる“→不条理劇
大災害により機能を全て失った世界。
ソウルにただ一つだけのアパートが残った。
外はマイナス26度の寒気で餓死者が山積みしてる状況。
そのアパート・・・
多分10階建くらい。
住民2〜300人。
電気なし(エレベーター使用不可)
水無し、
国家無し(警察・消防・病院)
インターネット無し。
食糧(個々の家の備蓄のみ)
救難が来ないとなると餓死するまで、一ヶ月か?二ヶ月?
この映画はサバイバルして、どう生き抜くか?
という映画では無い。
アパートの外にいる部外者を排斥するために、
リーダーを立てて、少ない食糧を分配して、
いかに規律正しく人間的に最後の日までを過ごすか?
でもアパートの住民はそこをユートピアと錯覚している。
そこは外部と何一つ変わらぬ「ディストピア」なのだ。
死ぬまでを如何に人間的に生きるか?
という映画。
902号室の住民に全財産を騙し取られたヨンタク(イ・ビョンホン)が、
どさくさに紛れて《902号の住民を殺して》
アパートの住民にに“成りすます“
そして一階の火災を大活躍して消し止めた実行力から、
リーダーに祭り上げられる。
ともかく住民は《希望》というものに縋りたかった。
このままでは、
《死ぬ》
それを先延ばししたかった。
残った人間の悪あがき!!
車も使えないから、
川のそばに移動して、住み、
多少は暖かくなるだろうから、
畑を耕し、
鶏を飼い育てて、
なんてのも駄目なのね。
無意味なのね!!
全ては砂塵と化したディストピア。
早く死ねた者が勝利者・・・
なのだという《不条理》
セットとか、荒廃したアパート群、
草木も水も暖気も何も無い、
希望がまったく見えない。
ディストピア感は良く出ていた。
《死を受け入れよう》
(ゾンビのようになって生き延びるより)
このアパートは末期癌の患者ちたちの
“ホスピス”なのだから・・・
それしか思い付かなかった。
地震よりも怖いかもしれない、その後。
善悪で片付けられない
2024年映画館鑑賞7作目。
冒頭から、理解不能な地盤隆起と建物の倒壊が波のように襲ってくる。初めて観る映像でしばらくあっけにとられた。
そして不思議と一棟だけ無事だった高層アパートの住民達の過酷なサバイバルの日々が始まる。集団で生き残るには住民の組織化と助け合いが必要(人間の本能)。選ばれた代表は住民からの支持を獲得し、次第に「力」を得ていく。
文明が発達する前の人類のコミュニティ構築の過程もおおよそこんな感じだったのかも、と観ていると、徐々に追い詰めらた住民と代表が狂気に走り始める。
代表ヨンタクは悪人だったのか、ミンソンは間違っていたのか、正しかったのはミョンファか?一見、ミョンファは極限状態でも人間らしさを保つ好人物のように見えるが、その正義感に基づく行動で少女や外部の人間をかくまう男を死に追いやってしまう。
ミョンファの「皆、普通の人たちでした」という台詞と、ヨンタクが死の間際に見つめた家族写真が印象的なシーンだった。
極限状態に陥ったとき、人はどうなるのか、考えさせられる怖い映画である。
公開時期が…
ゴキブリ
突然の大規模な地盤隆起によりソウルの街は壊滅状態に陥る。
ほとんどの建物が全壊した中で唯一崩壊しなかったマンション、それがファングンアパート。
周辺から多くの人が避難してくるが、同時に不法侵入、殺人未遂、放火などの事件も頻発するようになる。
部外者を脅威と感じ始めたマンションの居住者たちは、住民だけのルールを作って居住者以外を追い出していくことに。
そんな「住民たちのためのユートピア」の代表に選ばれたのは902号室の冴えない男、ヨンタクであった。
2024年劇場鑑賞1本目からえっぐいの来た。
もうこれ、既に今年ベストでは?
格差、閉鎖的コミュニティ、胸糞展開、アクション、殺人、グロ、美男美女、純愛、演技、セット、演出、映像美、ブラックジョーク……etc
韓国映画で観たいものが全て詰まっている。
確かに公開はタイミング的に最悪ではあった。
考えないようにしても元旦のことが少し頭を過ぎる。
ただ、あくまでもエンタメだ。そして映画だ。
大災害はいつ起きるか分からない。
それと同時にこういったことが起きないとも言い切れない。
実際に自分が住人だったらどうだったろう。
恐らく同じように集団心理に飲まれていたと思う。
私はこの映画を思いきり評価したい。
予想を遥かに超えてくる作り込まれた作品。
純粋に映画としての完成度が高すぎる。
ラストでミョンファが言っているようにアパートの住人たちは至って普通の人間だった。
しかし、いざ異常事態が発生した時、目に見えない“流れ”が発生した時、我々はどう行動できるだろうか。
日常が狂気へと変貌していく様がとても丁寧に描かれており、グイグイとこの世界観へ引き込まれていった。
0がマイナスになる。
最近どこかで聞いたキャッチコピーにも似ているがまさにそんな感じで、動き出したら止まらない負の連鎖に観ているのがキツくなる。
もうやめてくれと思っても、一度流れ出した濁流は留まることを知らない。
この時点でかなり好みの映画だ。
ヒトコワ系だけではないヒューマンドラマも魅力的。
中盤まではかなり精神的にキツかったが、後半作り上げられた負のユートピアが音を立てて崩れていく様、そしてその嵐の後の静けさはまた違った雰囲気となる。
設定だけではワンシチュエーションな展開にも思えるが、かなり色々な要素が詰め込まれており、最後の展開は個人的に涙を流しながらガッツポーズするほどの激アツ展開。
後述するけど、ヒロインが天使すぎるって。
教会のシーンとか完璧すぎる。
「正直詰め込みすぎて何が伝えたいのか分からない」みたいなことを書いてる人もいた。それもめちゃくちゃ分かる。
でもね、私はこの作品が好きだよ。
韓国の格差問題が映画になることはしばしば。
本作でも、近隣のドリームパレスというファングンアパートよりもランクの高いアパートの住人たちが助けを求めてやってくるが追い出される。
この格差の逆転、もしくは交差というもので思い出されるのが『パラサイト 半地下の家族』。
キャッチコピーでも「パラサイトに続く傑作」とあったが、個人的には結構納得だ。
韓国社会と日本社会において、決定的に違うところと言えば兵役の有無であろう。
パンフレットに銃に関する解説があった。
一般市民でも許可を得て所持は出来るが、使用しない場合は警察署に預けなければならない。
韓国の男性は兵役時に使い方を習うためある程度使いこなせると言う。
これは本当にキーワード程度の豆知識だが、韓国社会に強く結びついている兵役制度は、本作においてもかなり重要なポイントかもしれない。
技術面や細かな演出も素晴らしかった。
アパートや捜索に行った街の一部はセットらしい。
襲撃時にアパートに散っていく住民たちはまさにゴキブリだし、ミョンファとへウォンがグチャグチャの遺体を見つけたシーンの対比としてミンソンが傷一つないホールケーキを見つけるのもなかなか面白い。
作品の細部に監督やスタッフのこだわりが感じられた。
そして、やはりキャストの質の高さ。
主演のイ・ビョンホンは昔の面影などまるでない(もちろんいい意味で)。
若い頃よりも今の愛すべきおっさんって感じの方が好きだな。指ハートと歌声が聴けます。ファン必見。
その主演を喰って完全に優勝されていたのがミョンファ役のパク・ボヨン。
住民たちが壊れていく中で1人冷静さを保ち住民の看護にあたるミョンファはまさに白衣の天使。
夫婦が別れてしまう最悪の方向も考えたが、最後まで愛を忘れないでいてくれてありがとう。
パク・ソジュン演じるミンソンとお似合いすぎて、別世界なり前日譚なりでまた2人が観たいくらい、この夫婦が好きになった。
昨年の『別れる決心』のこと然り、年始の韓国映画は最強かもしれない。
終映ギリギリだったが映画館で観れてよかった。
으라차차 황궁!! 가자 파이팅!!
震災直後に見るのはツライ
善悪の彼岸
映画としてはのっぺりした印象でしたが、ゾンビ映画の亜種の様な作りで結構好みでした。ゾンビ映画の「コミュニティターン」に特化した感じですかね。だもんで、お国柄はともかく事に至ったら日本も大差ないと思うので考えさせられました。そういう意味では"必見"とも言えるでしょう。
やはり"食"の確保という観点で色々とあるわけですが、どーにもヒロインにムカムカとしてしまって…。御高説ごもっともでございますが、じゃあ貴方はその"食"に対してどんなアクションしたんですかね?と言いたくなってしまった。だもんで、ラストも少しだけ消化不良。そもそものコミュニティ規模が違うし、きっと同じ問題がすぐにでも表面化するでしょうからね。
そんな諸々も含めてオススメです。
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