コンクリート・ユートピアのレビュー・感想・評価
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今この時期に見るかどうか
金曜日午後、東京都心・有楽町マリオン内の丸ピカ(丸の内ピカデリー)は、席数600を超える松竹系の旗艦映画館。
そこに観客は、韓流ファンとおぼしきおばちゃんを中心に、僕を入れて40人までいなかっただろう。
キラー・スマイルの国際的俳優、イ・ビョンホンの名演は健在だったが、日本国内ではもう客を呼べないのか。
いや、それ以前に、大地震がつい先日発生したこの日本では上映のタイミングが悪かったか…。
もう何年も前から、一部の韓国映画は日本の先を行くような内容、セールスを誇る存在だった。しかし、昨年後半は、「君たちはどう生きるか」「ゴジラー1.0」「PERFECT DAYS」(正確には日本映画ではないが)と、セールスや内容が国際的に注目される日本映画が相次ぎ、久々に韓国映画に対して溜飲が下がる思いがした。
今も公開中の、先の日本映画3本を再び(ゴジラは既に2回見たが)見て、2024年の映画鑑賞の1本目にしてもいいかな、と思っていたが、気になる韓国映画としてこちらにシフトしたら、上記のように館内はガラガラだったのである。
配給元にとっては、積極的に宣伝できず、場合によってはお蔵入りしても不思議はない内容だったろう。そこを公開してもやはり、宣伝がいきわたっていなかったか…。
しかし、内容的には韓国映画のエンターテイメント性の高さを実感できるものだった。
地震(はっきりそうとも示していないが)後の景色、アパート(韓国では日本のマンションをそう呼ぶようだ)内の人々の軋轢、主人公をめぐるサスペンスタッチな内容などなど、いずれも十二分に面白く、表現・描写も日本映画や今どきのハリウッド作品に比べると結構にハードで本気度を感じさせてよかった。
大地震が襲った能登は、筆者の出身地と同じ県だ。能登には直接的な縁者はいないものの、故郷の人びとの苦境を知るにつけ、東京でのんびりこんな映画を見ていていいのか――と思う(うそ)。
映画の結末も中途半端なハッピーエンドではなく、「パラサイト」にも通じる、作り手の映画魂が感じられてよかった。
2時間10分の尺はやや長めで、もうちょっと整理されていれば満点にしてもよかった、と思う。
丸ピカでは、どういうわけかパンフレットが売られていなかった。
ないのだろうか? 店員に聞かなかったけれど。
ひょっとしたら、被災地の石川県内の映画館では上映されていないのでは? と思って調べたら3館で上映している。しかし、ほとんどチケットが売れていない印象。
石川県ではやはり、避けたい映画なんだろう。
イ・ビョンホンの演技力に脱帽
日本では韓国俳優で一番人気なのかな イ・ビョンホン、日本で韓流俳優といえば多くの人がイ・ビョンホンと答えるでしょう。その彼ですが非常に難しい役を見事に演じきりました、最初は冴えない一住民ですが少しずつカリスマ性を帯びていきます。その正体がラストでは明らかになるのですが素晴らしい彼の存在感と演技力でやりきったのではないでしょうか。
最初のとぼけたキムヨンタク(役名)
部外者を決して許さないキムヨンタク
皆から慕われるキムヨンタク
怖いキムヨンタク
頼もしいキムヨンタク
優しくも不気味なキムヨンタク
キムヨンタクじゃなくなったキムヨンタク
しかし、私が一番好きだったキムヨンタクはお祭りの時のカラオケのキムヨンタクですね
ちょっと意外かもしれませんが、、(笑)
ちょっと古めの韓国のアイドルが歌うようなポップス?ぽい曲をベッタベタのステップを踏んで歌うシーンが何故か忘れられません、このコミカルなシーンがよりこの登場人物の存在感を際立たせている!なーんて私だけかな(笑)
それでも人間はユートピアを目指す
昨年の「非常宣言」に続き正月はパニック韓国映画で鉄板。映画の本質たる荒唐無稽を力づくのリアリティで強行突破する現場の熱さ本気度はハリウッドにも真似できずやわな邦画ではとうてい太刀打ちできない。そしてなんといってもイ・ビョンホンの怪演がすさまじく災禍の中焼肉パーティーでカラオケを熱唱する姿は圧巻。「梨泰院クラス」のパク・ソジュンも新婚の一般ピープルが段々と狂気に駆られていく様を見事に演じており、最初に住人たちが洋服ダンスのバーやオモニの杖などを武器として次々と手に取っていくシーケンスが好き。それにしてもエンディングへ向かうにつれ、食料が底をつき始めるにつれサバイバル~生存競争~戦争への構図が顕在化し、その基本単位としての家族(マイホーム)がメインテーマであることに気づかされ深く悩む。誰も見殺しにしない(排除しない)平和的解決こそがばかげたユートピアではないのか?と。
エメリッヒっぽかった
能登をはじめ、北陸一帯があんな悲惨な状況にあるときに観るような映画ではなかったな、と逆の意味で絶妙なタイミングな作品でした。
内容的には、ディザスター&サバイバル映画系。
災害原因は語られません。
ハルマゲドンか地下核爆発か、みたいに、広範囲に地下から地面が「爆ぜる」表現のみでした。
壊し方はほぼエメリッヒ。
テーマとして、極限状態で人間は
「自分だけ生き残るため他人を踏みにじるか?」
または
「困ってるときは【お互いさま】の精神で、互いに助けあうのがいいか?」
という二択になるかと思います。
こういった生き方を迫る作品……
なんかいろいろ過去に観たな…???
『マッドマックス』シリーズ、『北斗の拳』、アニメ版の『日本沈没』とか。
ゾンビ映画とか。
極限というのが生死与奪を誰か他人に握られた監獄内という意味にすれば、北朝鮮を描いた『トゥルーノース』とか、ホロコースト内のユダヤ人たちを描いた多くの作品とかにも当てはまるし……
問題提起としてはいいけど、結構見飽きたような。
それと、誰も「外」と連絡とろうとも、情報を取ろうとしないのが謎。
無線でもネットでも、とにかく何が起きているかを把握したうえで、救助要請をしたり、食糧確保や逃げられる場所(避難所)とかの情報を取ろうとするはずなのに。
また韓国(首都ソウル周辺)が災害で壊滅したら、自国政府がダメでも、1週間以内にはアメリカや日本などの同盟国が助けに来ると思うのだが。
もしも他国が来ることができない状況~たとえば地球規模的な地殻変動を伴う災害なら、わからなくもないが、まずそういう意味でも「外」との関わりを描いておくべきだったんじゃないかと。
そして、地球規模の災害だった場合、空が晴れや薄曇りではなく、核戦争後みたいな雨になる可能性もあるしなぁ、といろいろ疑問に思ったりもしました。
災害のせいで氷点下というならわかるけれども、地球温暖化の影響で、夏はクソ熱く冬は氷点下というようなニュアンスを冒頭のカーラジオで説明しちゃってるし。
スルー力を発揮しても、その辺を「雑」としか感じられなかった。
イ・ビョンホンの演技力と、パク・ソジュンの存在感はよかっただけに、かなり残念。
もやる。
見なきゃよかった。
集団のヒステリー?
段々に危機感の中でヒーローを求めていくのは分かる。
だけどあまりにも短絡的というか…ここまで代表に熱狂するのか?理解できない。
もう少し、丁寧に見せてくれたら共感したかも。または、ありきたりだけどサイコパスで突き抜けてたら。
そして、自身を偽っていた代表も実は被害者であり加害者なんだけど…このアパートの局面では、リーダシップをとって(あるところまでは)自警を司ってたんだよね。
実は、詐欺被害者で騙したヤツを殺していたんだけれど…そのことは悪だけれど、正義を振りかざして暴くのも、この状況下ではうまく飲み込めない。
そして、女の子をいきなり突き落としたのも、え?って感じ。
能登地震のことがありながらも見たけれど、見なくてよかったかなと嫌な気持ち。
最後の場面だけが救い。
よかった
クオリティが高いし題材もいいし、退屈なところもないし面白くないわけではないのだけど、なんかちょっと物足りない。期待しすぎたのだろうか。
死体もごろごろ出てくるし、美術も素晴らしいし、迫力もある。ユーモアさやふざけたところがなく硬いからだろうか。テンポとかグルーヴ感とか、全体的なセンスとか、が合わなかったのかもしれない。登場人物に魅力を感じられなかったせいだろうか。特に好きなキャラもいない。
正体を見抜いた隣の部屋の女の子が穴に突き落とされてあっけなく死ぬ。殺した男に成り代わってしっかり認知症のお母さんのお世話をしている。うんちの処理までしていて、なかなかできることではない。
団体行動が苦手なので、あのマンションには絶対にいたくない。車が動かせるなら人気のない山か海に行って自給自足生活をする。車が動かなくても徒歩で移動して人のいない場所に行く。争いがなくてもいたくない。
アジア圏に住む私たちのための地獄図絵
人間の本性
残機
年始になぜかスタンバイしてる韓国映画。ド派手な作品助かります〜と思っていましたが、中々ヘビーな作品で1から10までしっかり楽しめました。
初っ端とんでもない地割れで一つのマンション以外全部ぶっ壊れて、そこに元々あった寒さが襲って圧死と凍死のダブルパンチの中の人々を描くという、韓国こういうの好きね〜というのが伝わってくる作品でした。
破壊のVFXはかなり見応えがあって、ディザスタームービーとして見たかったなぁと思いました。
マンションの元々の住人たちは最初こそ助け合いの精神を持っていたものの、他の住人ことゴキブリたちが自分勝手になっていく様を見て、追い出そうとしてからがある種崩壊の始まりだったなーと思いました。
ヨンタクがリーダーシップをとって行動するため、住民が崇めるようになってからヨンタクが調子に乗ってしまったり、働いた分の報酬といったところでの差別が生まれてしまったり、ミョンファの正義感などなど色々と交錯していく中で分かっていく謎が物語に深みを与えていたと思います。
ミョンファの正義は素晴らしいと思うんですが、この世紀末な世界でそんな事言ってらんねーよなぁと少しイライラさせられました。明るい時間帯に食料とか渡したらそりゃバレるよ…。
偽ヨンタクの正体がバレてピンチに陥ってからはオーバーすぎて笑ってしまうところも少々ありました。
告発した903号室の少女をとっ捕まえて肥溜めに突き落とすのはこりゃまた唐突だなと笑ってしまいましたし、そこからは他の地域にいた人々が全員襲ってきて、ヨンタクもボコボコにされて食料を奪われて、住民たちも全員出ていく感じで終わりを迎えて、ミンソンとミョンファだけは脱出するものの、ミンソンは死んでしまい、ミョンファは助けられて、新しい生活を送っていくというまぁアンパイなところに落ち着いたなぁとは思ってしまいました。
設定が先行して面白く感じるのに、本編はその期待を超えてはこないのがここ最近の韓国映画だと思います。荒廃後の世界というのが興味深かったのに、基本はマンション内での揉め事がメインなのもあって、もう少し世界観の広がりが欲しかったなと思いました。
今年も多くお世話になると思う韓国映画でしたが、どうしてもちょい面白かったなーくらいの評価で落ち着いてしまうので、こんな評価を覆すくらいの傑作がポンポン出てきてくれたらなぁと思っています。
鑑賞日 1/9
鑑賞時間 13:35〜15:55
座席 J-13
ちょっと気分が悪くなります
人間の本質を抉り出すように描くパニックスリラー
こんなことを感じながら鑑賞しました。
・ふつうの人でもパニックのさなかにおいては善悪の判断がつかなくなる
・それは同調圧力による気がする
・パニックのさなかだと他人への優しさ薄れる人もいる
・でも助け合って生きていこうとする優しさで生きている人がいる
イ・ビョンホンさんはちょっとオーバーな演技だったように思います。
しかし、パク・ボヨンさんはすごく良かったです。彼女が主役ですね。
本作においては、井上真央さんに似ているな~と思いました。
それにしても実にマンガ的と言いますか、このシチュエーションだけで
描き切るところは、今の日本映画からは生まれないように思いましたし、
観てよかったとは思いました。
日本国内も大変な状況ではあり、この作品に食指が動く方は
少ないかもしれませんが、一見の価値はあると思います。
アパートは住民のものです
日本でも高度経済成長期に団地建設のラッシュがあったが、今では特に地方に行くほどその団地地帯がゴーストタウン化している現状を目の当たりにする。
そんなことを韓国の住宅事情が説明される冒頭の映像を観ながらぼんやりと考えていたが、次の瞬間に一気に意識が画面に引き戻された。
天変地異によってあっという間にソウルの街は破壊し尽くされてしまう。
ただひとつ奇跡的に倒壊を免れたひとつのアパートを残して。
これも災害が起こった時の人間の本質を残酷なまでに問いかけてくる作品だ。
人は希望を失った時にその本性が顕になる。
はじめは避難民を受け入れていたアパートの住民だが、次第に争いが耐えなくなり、住民の過半数が避難民を追放すべきだという意見を持つようになる。
投票によって代表に選ばれた男が避難民に退去を命じるが、それに反発した者たちとの間で流血沙汰になってしまう。
しかし代表の気迫に押された避難民たちは退去を余儀なくされる。
住民たちは声を上げて代表の栄誉を称え、代表はその声に恍惚な表情を浮かべ、やがてカリスマ的な存在となっていく。
ここで描かれるのは住民と非住民との完璧な分断だ。
代表は何度も「アパートは住民のものです」と宣告する。
外からやって来た者には容赦をしないが、住民がいくら規則を破っても命を取るようなことはしない。
代表はやがて住民を結束させるためのルールを掲げ、彼らを縛り付けていく。
後にその代表の男の出自が明らかになるというサスペンスの要素もあるのだが、この映画を観ていかに非常時に人の思考が麻痺していくかを思い知らされた。
そして善人でいられるか、悪人になってしまうかは、その人間の本質ももちろんあるが、その時の状況次第でもあるのだ。
たまたまアパートの住民であったという為に「持っている」側にいられた人間か、非住民であるが為に「持たざる」側に立たされてしまった人間。
アパートの住民のほとんどが自分たちだけが助かる道を選んでしまったが、自分たちだけ助かっても意味がないのだ。
集団心理とは恐ろしいものだが、それでも人は助け合わなければ生きていけない生き物だ。
身勝手の先にあるのは憎悪と破滅だけだ。
正直、観ていて暗い気持ちになるシーンばかりの作品だ。
そして自分だったら正常な思考でいられるだろうかと何度も考えさせられた。
このアパートには夢も希望もなかったが、映画の終わりは少しだけ光が射し込むような柔らかさを感じた。
最高の映画哲学
怖い
最初から最後まで力強いショットが続き、気持ちよく観られる。
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