コンクリート・ユートピアのレビュー・感想・評価
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災害そのものに対する掘り下げが少ない
藤子FのSFみたいでまあ面白いが
なかなか奇想天外で設定は面白くて引き込まれる。藤子FのSFみたい。ただ漫画で短い藤子Fは不穏な余韻で終わらせられるけど、映画で尺も長いからそれで終わらせるわけにはいかない。中盤あたりからこれはどういう家に落とし込むんだろうかと心配になり進むにつれて最近ありがちな結末つかずに終わりかなあと思えてきた。
イ・ビョンホンがすっかりかっこよくないおじさんになってしまい、若手の俳優さんと世代交代といういいコントラストだった。
面白いけれどそんなに満足度は高くないな。
住民代表の存在感が薄すぎる
最初の導入部分を除いて、本編はいきなり壊滅的な被害を受けたソウルの街に、唯一無事だったマンションがあることが示されるところから始まる。しかしなぜこのような壊滅的な災害が発生したのか、なぜこのマンションだけ大して被害を受けていないのか、世界の状況はどうなっているのか等、そもそもの状況がよく分からない。ストーリーの途中で明かされるのかと思いきや、結局明かされないのでもやもやしながら観ることになる。
マンションの住民代表となるヨンタクは、ストーリーの鍵を握る人物だが、終始存在感が薄い。代表に選ばれる人物なのに、マンションの火事を消化した件以外では、誰も彼の顔を知らなかったのも不自然。彼が権力を握り狂っていく様を描きたかったのだろうけど、ストーリーの途中から急にいかにもな悪人になるのがわざとらしい。しかも実は彼がマンションの住民では無かったと明かされても、彼がどんな人物か最初からよく分からないので、全然驚きが無い。
また、終盤で主人公にあたる防衛隊長のミンソンが死ぬのも、いかにもお涙頂戴的な演出で蛇足にしか思えない。死ぬ展開にする必要性が感じられない。
以上の理由により、終盤に進むに連れて観ていて退屈になってきた。この出来でアカデミー賞の韓国代表作品か、と思わされる映画だった。
未曾有の災害時における住民達のサバイバルという設定だけは面白かった。水道もガスも止まっている状況で、住民の代表を選出し、住民各自に役割を割り振る。壊滅的な世界で生き残る方法を模索する様は、見ていて興味深い。ここをもっと詳細に描いて欲しかった。
期待してなかったが、面白かった
今年の劇場公開では見逃した映画を、配信で見ました。
ソウルが大災害に襲われて、全てのヒビルが崩壊しても、たった一つだけ奇跡的に立ってるマンションを舞台にした話でした。
唯一倒壊しなかったマンションに住む冴えない男が、そのマンションの部屋での火事を命がけで消したからリーダーとなり、一緒に消化した軍隊経験のある元公務員がナンバー2の防衛隊長となって、大量に押し寄せてくる難民をマンションに入れない決定をして、サバイバルする話。
日本以外ではずっと世界の政治問題になっている、難民の受け入れがメタファーになってて、困っている人を受け入れるべきなのか、自分たちの暮らしを優先するかの社会問題を暗喩して描いてました。
エンターテイメントとしてスケールも大きく、住民と難民とのアクションもあり、それぞれの人物描写もドラマティックで楽しめるのですが。
実は、社会的なリアリティーでは突っ込みどころがありまして。ソウルで巨大な地殻変動で崩壊した設定なのですが。韓国はこれで相当、ダメージを受けてますが、今の世の中なら、世界各国からの救援物資が届くはずです。話に無いものを求めるのは、良くないかもしれませんが。ソウルではなく世界中が、説明できない地殻変動で滅びたと思えば納得がいきます。
イ・ビョンホンの怪演が素晴らしいのですが、ナンバー2のパク・ソジュンが本当の主人公で。彼が排他的に戦うのと、外部の人も救うべきだと言うパク・ボヨンの妻役との葛藤が深かったです。
最後は、悲劇でも、救いのある終わり方になってました。
映画館で観たかったです。
火事場泥棒
元日の能登半島地震から半年が経ちました。映画どころではない生活が続いていたので、このような作品が公開されたことも知りませんでした。そろそろ落ち着いてきたのでトラウマもなく鑑賞することが出来ましたが、やはり思い出すのは実際に多発していた火事場泥棒。現実には生きるための泥棒なんてそう多くはないことに心が痛みます。
この作品では局地的な災害ではなく、巨大隕石が地球に激突したかのような全世界的なディザスター後の世界。極限状態に置かれた人間のサバイバル本能と醜い争い、コミュニティの排他的団結心が描かれていました。代表と呼ばれるようになったヨンタク(イ・ビョンホン)が祭り上げられ、やがて住民を支配していく様子。まるでゾンビのいない「ウォーキングデッド」みたいな世界観でした。
イ・ビョンホンがカリスマ的なダークヒーローになるのかと思っていたけど、そういったキャラではなく、リーダーなんて誰でもよかったようにも感じ取れました。そして、選ばれたヨンタクが本当に真の住民だったのか?という意外な展開。ストーリー的には帰ってきた隣人少女へウォンがもっと活躍すると思ってたのに違ったなぁ・・・怒濤の反乱とかで誤魔化された印象も残った。
一昔前には韓国のマンションやデパートなんかが手抜き工事で崩壊したニュースが多かったけど、ファングンアパートの周辺はそんなマンションばかりだったのだろうか。一棟だけ崩壊しなかったのは耐震基準に合致していたからなのか?奥能登へは何度も行きましたけど、周囲が全壊した家ばかりなのに一軒だけ無事だった家もあったことを思い出します。マンションという独特な近所づきあいというのも盛り込んであったように思います。また、マンションの住民はみな家族!という言葉にも異様ながら説得力がありました。
全体を通して、戦争の縮図といったイメージが残りました。しかも生存競争という古代の戦争。ミョンファのその後のストーリーも気になる作りとなっていましたが、「金を払わなくていいの?」という台詞が妙に現実的に思えます。あぁ、またウォーキングデッドを見たくなってきたなぁ~
思いの外楽しめる
アンバランスさ
人を人としてあらしめる要素とは何なのか?
大災害で崩壊した世界は「サバイバルファミリー」のようでもあり
ゾンビが出てこない「新感染 ファイナル・エクスプレス」のようでもあって
愛は愛なんだけどもっとモラル的な意味の愛というか。
キリスト教のモチーフが度々でてくることもあり、
そういう人間愛みたいなとこに焦点をもってきた作品だったと思う。
あとやっぱり言わなきゃいけないイ・ビョンホン。
自分で切ったみたいな髪型もそうだけどキャラ造形が素晴らしかった。
なんだけど全体で見たときに存在感が強すぎるし
準主役なのに主人公を完全に喰っちゃってるみたいな。
とても良く出来た作品だっただけに、そのアンバランスさとか
粗さみたいなものが目に付きやすかったのかなと思う。
大災害の中、たった一棟無事だったマンション。なんちゅう無理ある設定...
群集心理の恐ろしさ…
災害時は他人でも互いに助け合う、支え合う、仲間を守る。しかし、それがルールから外れた者は排除する、仲間以外から奪う、攻撃するに変わっていく。男もいつの間にか仲間の代表に祭り立てられ、次第に巨大な権力を手にするようになると、抑えが効かなくなっていく。シザー・ハンズのジョニー・デップのような風変わりな髪型の代表役をイ・ビョンホンが好演している。群集心理の怖さを描き、誰にも止められない。究極が戦争なのだろう。
ユートピアって⁇
韓国ソウル壊滅的な地震?災害が起こります。一棟だけ残ったマンションに住む住人対生き残っている人々とありそうなストーリーだが、なかなか面白い作品でした。
ここまでの災害が起こると人間の本質が出てくるのは当然で、何処にでもいる口だけおばさんが登場する。偶然に、消火活動に参加した男性ヨンタク(イ・ビョンホン)をリーダーにする。自分では責任取りたくないやなーと感じてしまう。マンションの住人以外の人間を排除しようとする。なかなかムカつくババァです。そこに乗っかってくる住人も簡単やなーと感じましたが、自分の居場所を確保したいと思う事は当然だとも思ってしまう。
このマンションをユートピアにする為に、規律を作りカラオケなどで娯楽を与えて人間の心理をコントロールして行く。皆んなが盛り上がっているのが、異様に感じる。
そこで、主人公の夫婦がその対立に翻弄されます。妻のミョンファは、常に冷静で正義感が強い。旦那のミンソンは徐々にヨンタクに
擦り寄りマンションの住人と一致団結して行く。
その一方でヨンタクは、怪しげでストーリーが進むにつれて過去が明らかになり、1人の少女の出現でヨンタクvs ミョンファとなって行く。
サバイバルの中にサスペンスとヒューマンドラマを混ぜた闇鍋的な映画でしたね。
終盤少しの希望が残るラストになっているので、夫婦の絆も少しばかり見せた感じがあり、感動に終わりました。
生き残っていく為には、何が正解か?相手が人間だけにさまざまな考えがあって当然。だからややこしい。ゾンビなら、人間VSゾンビで殺したら解決するが物資の取り合いで止む無く人を殺して行くしか無いとなると、人間の精神は崩壊して行くだろう。
自分ならどう行動するだろうと?
なんか、いろいろ考えさせられる映画でした。
人間の醜い争い
広域2次避難の重要性
極限状態に置かれれば生き残るために人は何でもするだろうという摂理を描くために途方もない地殻変動を設定、普通、この手の災害は局地的なのに韓国どころか世界的災害と言い、援助、救済に駆けつける組織も国も一切無い。
2時間越えの長尺を人間の悲しい業を描くだけだから気が滅入るだけ、ちょっとは現実的な希望のかけらくらいは織り込んで欲しかったが、とことん破壊しつくすのもオム・テファ監督の世界観、自然災害ばかりかいつ火が付くか分からない北朝鮮との緊迫状態を抱える国のパニック映画、妙に真に迫って映りました。
東南海や首都直下がいつ起きてもおかしくない、富士山の噴火もしかりと騒がれる日本だからこそ、被害地に留まって耐えるのではなく、迅速な全国規模の広域二次避難計画を練っておいて欲しいと切望します。
本当の
倒れなかったアパートとサバイバル
巨大地震のあと、一棟だけ倒壊せずに残ったアパートでおこる危機と道徳の戯画絵巻。非常時の人の醜さに焦点が置かれてエゴが強調された話になっている。
ふつう一線主役級になるとかっこわるい役をやらなくなるものだがビョンホンは泥臭い役でも引き受けてしまう人だと思う。それだけが僕の世界(2018)や私たちのブルース(2022)を見たときもそれを思ったが、本作でも脛に傷を持ち、しっかりとかっこわるさを出していて「役者」だと思った。
他ではモラルがテーマゆえ善良そうな俳優がキャスティングされている。
イテウォンのパクソジュン、「力の強い女」パクボヨン、はちどりのパクジフ。三パクにくわえて韓国映画/ドラマに出てくる中年女性でいちばんよく見るキムソニョンがアパートの婦人会長を演じた。
imdb6.7、RottenTomatoes100%と75%。
トマトメーターが高すぎると思った。
批評家たちが褒めている部分で共有されているのは俳優の演技(とくにビョンホンの)とブラックユーモアとプロダクションデザイン。
人間の本性が露呈する、よくあるディザスタースリラーだとしつつもアンサンブルが上手で(極限状態での人間性を描く)逆転のトライアングル(2023)やハイ・ライズ(2015)や蝿の王(1991)と比較してもいい出来だった──としていた。
個人的にはトマトの批評家のようには感じなくて、映画ゆえの誇大表現は解るにしても「こんなひどいことにはならないでしょ」と思ってしまうところが多かった。
とはいえ災害時の自制心に自信があるわけではなく、家屋や家人を失ったという災害のニュースを目の当たりにするたびに、もしじぶんがそうなったらどうしよう──と考えることがよくある。
日本は地震大国なので映画のような事態がないとは限らない。おそらくそれはこの映画を率直に楽しめなかった理由でもあると思った。
先日ネットフリックスで見たマドンソク主演のBadland Hunters(2024)は本作の続編という位置づけになっているそうだが(どうりでどこかで見たようなアパートだと思ったが)むしろアクションコメディに徹したBadland Huntersのほうが個人的には楽しんだ。
そうは言っても悪くない映画だった。
住人がそれぞれのサイドストーリーを秘匿していること。また、周辺をサルベージしているあいだに人を殺戮してでも食料を奪うのが常態化していったり、非アパート民を匿っていた住人を処罰し、次第に狂信的な全体主義が敷かれていく行程がしっかり描かれていて、有り得るリアリティをもっていた。結局ボヨンの最後の台詞がこの映画を転結していて要するにたとえ普通の人たちであっても悪環境とストレスを与え続けることでどこまでも落ちていく──という話だった。
ただし集団において人の醜さが露呈する──という話ならば「今、私たちの学校は」や「Sweet Home -俺と世界の絶望-」あるいは「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」や「My Name」といったドラマで見られるように韓国のもっとも得意とする修羅場であるゆえに、コンクリートユートピアになんとなく既視感を覚えたのはBadland Huntersを先に見てしまったから──という理由だけではない気がした。
美しさが正しさとイコールになっている韓国映画らしく本作のパクボヨンとパクジフはシンパシーの集約係だった──こともありジフが酷いことになってしまうのは残念だった。
人間のエゴの末路
死ぬまでを“生きる“→不条理劇
大災害により機能を全て失った世界。
ソウルにただ一つだけのアパートが残った。
外はマイナス26度の寒気で餓死者が山積みしてる状況。
そのアパート・・・
多分10階建くらい。
住民2〜300人。
電気なし(エレベーター使用不可)
水無し、
国家無し(警察・消防・病院)
インターネット無し。
食糧(個々の家の備蓄のみ)
救難が来ないとなると餓死するまで、一ヶ月か?二ヶ月?
この映画はサバイバルして、どう生き抜くか?
という映画では無い。
アパートの外にいる部外者を排斥するために、
リーダーを立てて、少ない食糧を分配して、
いかに規律正しく人間的に最後の日までを過ごすか?
でもアパートの住民はそこをユートピアと錯覚している。
そこは外部と何一つ変わらぬ「ディストピア」なのだ。
死ぬまでを如何に人間的に生きるか?
という映画。
902号室の住民に全財産を騙し取られたヨンタク(イ・ビョンホン)が、
どさくさに紛れて《902号の住民を殺して》
アパートの住民にに“成りすます“
そして一階の火災を大活躍して消し止めた実行力から、
リーダーに祭り上げられる。
ともかく住民は《希望》というものに縋りたかった。
このままでは、
《死ぬ》
それを先延ばししたかった。
残った人間の悪あがき!!
車も使えないから、
川のそばに移動して、住み、
多少は暖かくなるだろうから、
畑を耕し、
鶏を飼い育てて、
なんてのも駄目なのね。
無意味なのね!!
全ては砂塵と化したディストピア。
早く死ねた者が勝利者・・・
なのだという《不条理》
セットとか、荒廃したアパート群、
草木も水も暖気も何も無い、
希望がまったく見えない。
ディストピア感は良く出ていた。
《死を受け入れよう》
(ゾンビのようになって生き延びるより)
このアパートは末期癌の患者ちたちの
“ホスピス”なのだから・・・
それしか思い付かなかった。
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