シチリア・サマーのレビュー・感想・評価
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イタリア映画の変容と底力を感じさせる1作
乾いたシチリアの夏。バイク事故がきっかけで知り合った2人の少年が、やがて惹かれ合い、恋に落ちていく。
しかし、島民たちの嫌悪感と偏見が恋の行方を遮断する。
あまりに衝撃的なこの物語が事実に基づいていることにまず驚く。この事件を受けてイタリア最大規模のLGBTQに関する非営利団体"アルチゲイ"が設立されたというから事実に違いなのいだが。
時代は1982年。例えば、『君の名前で僕を呼んで』は同じ時代の北イタリア、ロンバルディアの夏が背景になっていた。こっちはアンドレ・アシマンの原作小説をジェームズ・アイボリーが脚本にした、言わばフィクションだし、2つの作品を単純に比較することは無意味かも知れないが、風土や価値観によって差別にも温度差があることは否めないだろうとは思う。
シチリアの青い海と空、カラフルなファッション、ワイルドで暴力的な若者たちetc、これが長編デビューのジョゼッペ・フィオレッロ監督の演出からは、イタリア映画界のレジェンド、ピエロ・パオロ・パゾリーニの影響も感じる。イタリア映画の変容と底力を感じさせる1作だ。
タイトルなし(ネタバレ)
単なる同性愛者の話で、シチリアの夏を感じられるだけではありません。
予備知識なく鑑賞して、エンドロールの文章で実際にあった事件に基づいた話だと知り衝撃を受けました。
島の中で男好きだと知れ渡り、孤立している主人公の少年。時代が違うとはいえ、島民の執拗なまでの罵りや悪ふざけが絶えず、見ていて気持ちの良いものではなかったです。日本も島国でみんなと同じである事に囚われる国民性なので、通ずるものを感じました。
もしも自分がこの時代に生きていて、自分の家族や友人が同性愛者だったら?もしくは自分が同性愛者だったとしたら?lgbtに関する法律に対しては懐疑的で慎重派ですが、個々の恋愛は自由のはず。固定観念や集団心理とは恐ろしいものだと改めて思いました。
この少年2人がとても爽やかで美しいので、それだけがせめてもの救いでした。
愛の弾圧
予告も観ず、実話がもとになっていることも知らずに鑑賞。
この時代の価値観、偏見、抑圧にのまれた社会でただ愛し合った若い少年ふたりが悲しくも美しく、しばらくは引きずった。
ニーノとジャッレ、それぞれ違いすぎる環境で育ったふたりが「一緒にいたい」それだけでは叶わない現実に何を思ったのか考えるだけで胸が痛い。彼らにとっては確かに恋で、愛で、友情で、名前がつけられなくても、認められなくても一緒にいたかったんだよな… あの終わり方で短い恋が永遠になったと捉えて、もう一度観直したい。
自分的ベストムービーに入る作品になりました。毎年、夏になるたびに思い出したい。
美しいシチリア
怒りと暴力のなかで、ひっそりと芽生えた“自由な愛”
気性の荒い人々、怒鳴り声、支配、暴力。
この映画の世界は、愛を育むにはあまりにも過酷だった。
ジャンニとニーノは、決して「社会から理解されないから不幸だった」わけじゃない。
あの世界では、そもそも感情を静かに育てる余地がなかった。
サッカーの試合で怒鳴り散らす家族、支配する母親、黙認する大人たち。
そんな中で出会った二人の繊細な感情は、最初から「壊される運命」にあったようにすら思える。
銃声のあとに残ったのは、自由を求めた少年たちの残響だけ。
こんなにも切なく、やるせない結末はない。
「君の名前で僕を呼んで」や「Summer of 85」と違い、
これは**“環境”が愛を殺す話**だった。
そしてそれは、今の世界のどこにでも起こりうる現実かもしれない。
カメラが美しい反面
イタリアの雰囲気たっぷりで楽しめました
LGBTQを世に問う映画なんだけど、私はただ単に良い映画だったと思いました。
危うさに終始ドギマギする感じが、とても良かった。
シチリアの景色も良かった。
劇中に繰り返し出てくる何でもない料理とか食事の様子。
繰り返し出てくるワールドカップ西ドイツ大会のテレビ中継。
バルの前の暇な男たちのたむろ。
それらがイタリアの雰囲気たっぷりで楽しめました。
丁寧な作りの映画は好きです。
美しい少年たちの純愛
愛の不思議
観終わった瞬間はどう考えてもバッドエンドだと思ったけど、もしかしたらハッピーエンドだったのかもしれない。
副題はきっと「家族愛」だろう。一見、仲が良く厳格な父を持つ愛のある家庭のニーノと血の繋がっていない暴力を振るう父に反抗出来ない母親を持つジャンニ。しかし実際に2人が当時のイタリアでは禁忌である関係にあると知った時、ニーノの父は叱責し小屋に閉じ込めジャンニの母は受け入れ背を押した。当時の基準も踏まえてもどちらが正しいという事は判別出来ないが家族愛の要素とするには十分だと思う。
初めて見た時、ラストの銃声にとんでもなく驚いたのを覚えている。これが実際に起きたという事、思い返せば犯人を匂わせるシーンもあった。この事件で人生が変わったのは当事者2人だけじゃないということを深く考えさせられた。
2025/2/26
あまりに悲しい恋の行方
個人的にはこれといって特別このテーマに興味があるという訳ではないはずなのだが「君の名前で僕を呼んで」や「Summer of 85」がとても良かったので、そのあたりの雰囲気を求めて鑑賞。
これは別物。甘酸っぱいとかほろ苦いとかのレベルでは全然収まらない明日なき青春劇。
本作の舞台は避暑地ではなく、主人公達の背景も裕福という感じではないため、映像的にどうしても重苦しく映るし、特別なことに対しての大衆の反感があまりにどぎついため、観ていてとても辛く気が滅入ってくる。
ましてや衝撃のラストは、犯人は誰か?なんて考えたくもないほどショックで、居たたまれない気持ちになる。
シチリアのきれいな景色も、このストーリーの中では彩りを失い哀しく映る。
全体を通し良い作品だとは思うし個人的にも嫌いではない作風なのだが、本作を2度観る気力はしばらく湧かない気がする。
BLっぽい見方で楽しめる美形の二人の恋路の映画だが、映像に現れない...
宗教が背中を押す
同性愛であるが故に蒙らねばならなかった悲痛な運命をたどる二人の若い男性の実話に基づく物語です。
アフリカ系アメリカ人の人々が長年にわたって人間扱いされない歴史を刻んで来た事は知識として子供の頃から知っていました。それだけに『イージー・ライダー』を初めて観た時、白人であっても長髪と言うだけでライフルで撃ち殺されるラストシーンには「こんな事が本当にあり得るのか。これは単なる象徴的描写なのか」と驚かされました。後に、アメリカには確かにあんな風土がある事を知ったのですが、でもあれは1960年代のお話でした。
しかし、本作の舞台は1982年のイタリアです。僕が海外旅行していたらここを通りかかったかも知れないのです。同性愛者をからかったり、侮蔑する人が居る事は想像できますが、それがここまで暴走するのかと空恐ろしくなります。カソリックのお膝元であるだけに自分の価値観に反する事は一層許せないのかなぁ。宗教がこの悲劇の後押しをしたのは間違いなく、それもしっかり描かれていました。
【”君の隣に居られるのは、僕しかいない。”1980年代の一夏、シチリア島でバイクの事故をきっかけに出会った二人の男子の友情から恋が芽生える様を描いた、哀しくも美しい作品。】
ー クイアの資質を持つジャンニと、バイク同士の事故で知り合ったニーノ。気を失っていたジャンニの口からニーノが息を吹き込んだ時から、二人の友情は始まり、徐々に恋心に変わって行く。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ジャンニとニーノの10代の二人の美しい顔と、彼らを取り巻く環境が実に鮮やかに描かれている。
・ニーノは咳が酷い花火師の父を気遣い、彼の代わりに祭りの際に見事に花火を打ち上げ、父から認められるシーンの夜空の美しい花火と彼の嬉しそうな顔。そして、ニーノは、バイク事故で知り合ったジャンニを家族に紹介する。
・そして、ニーノは採掘場の仕事を彼に嫌がらせをしていた若者が来たことで辞めていたジャンニの為に、一緒に花火の仕事を始めるのである。
■だが、二人の関係が親密になるにつれ、人の噂が広まって、ニーノの母カルメラにジャンニの性癖が伝わり、ニーノの母がジャンニの母リーナに電話をするシーンから不穏な空気が漂い始めるが、物語はあくまで二人の仲を焦点に描いて行く。
・Wカップサッカー、イタリア優勝シーン。ニーノの弟トトが、冒頭は臆病な子供だったのが、教えられながらウサギを撃ち殺すシーン。
■だが、私の記憶だとイタリア南部は封建的な土地であり、同性愛者に不寛容な土地柄であり、名誉殺人も許容されていた・・。
<ジャンニは、母や一部の街の人達から手荒い扱いを受け部屋で過ごしているが、イタリアの優勝で歓喜に湧く人達の中、久しぶりにいつも二人で遊んでいた秘密の湖で遊び、大岩の上に二人並んで寝転がり・・、乾いた銃の音が二発鳴り、暗転する。
今作は、美しきイタリアの風景、そこで生きる人々を背景に、偶然に出会い友情を育み、その思いが恋に変遷していく過程を美しくも哀しみを持って描いた恋物語なのである。>
映画としては退屈
時代的と土地柄の背景が分からないのもあり、ちょっと入り込めない。時間も長いし。
最後の銃声、知らないと「心中?」とも思えてしまう。実際の犯人が不明のままだから仕方無いんだろうけど。
女性をナンパしないと失礼っていうイタリア人が同性愛には凄く閉鎖的なんだ・・・・まぁ、キリスト教圏だからなぁ。聖職者が少年への性強要が毎年の様に出てくるけども。
美しくも短く燃えて
ある実際に起きた事件を題材にした映画。
予備知識をまったく入れずにみました。
美しい少年2人が幸せそうに微笑んでいる。
たぶんボーイズラブ系?
シチリアと言えば、「ゴッドファーザー」の故郷。
マーロン・プランド演じるコルレオーネ・ファミリーの
生まれた土地。
マフィアは登場しませんが気性が荒いですね。
やはりマフィアの抗争に巻き込まれたのかな?
とか、あとは、
心中かな?
と色々想像を巡らせました。
1980年代初め、シチリア島の田舎町で、17歳のジャンニは
周囲の大人たちから、「ヘイ、ミス・イタリア!!」とか、
「ゲイ!!」とか言われて周囲から浮いた存在だった。
母親を経済的に援助するフランの工場で働くものの、
フランコは高圧的な上に、母親はブランコにとても気を遣っている。
バイクを届ける仕事を頼まれたジャンニは、バイクの衝突で
花火師を父に持つ17歳のニノと知り合う。
そして愛というより、「ただ一緒の時間を過ごしたい2人」
海で泳ぐシーンは3回くらいあって、水中撮影も美しい。
同性愛と言っても直接的愛の描写は殆どないので、
周りがそんなに騒ぐのが不思議な感じです。
でもジャンニとニーノはともかく会いたい、
一緒に時間を過ごしたい、
どれは強く伝わってきました。
若くて美しい2人の男の子ジャンニとニノに
不潔感は全く感じられません。
バイクが衝突した時に気絶したジャンニに、躊躇いもなく
口から人工呼吸を施すニノ。
(ここはちょっと大胆だと思ったけれど・・・)
俗に言う【世間の目】
ジャンニの母親、そしてニノの母親がジャンニをニノを見る
《険しい目付き》が
尋常でなかったです。
ジャンニが矯正施設にいた」のはどうして?
分からないことも多かった。
お母さんたちは、結末で起こる悲劇を半ば予期していたのでしょうね。
花火師のニノの父親の代わりに、お祭りの花火を上げる2人。
お祭りは素敵だったけれど、
花火は日本より美しくなかった。
それにしてもボーイズラブの男の子2人は、バイクの二人乗り、
これが定番中の定番。
キアヌ・リーブスとリヴァー・フェニックス・・・
「マイプライベート・アイダホ」
ティモシー・シャラメとアーミー・ハマー、
「君の名前で僕を呼んで」
荻原利久と八木勇征馬の、
「美しい彼」、
自転車の2人乗りももちろん入れて、
ラストのバッドエンドは私の予想を超えていました。
さすがにマフィアの産出国。
時代がLGBTQに不寛容だと言っても、殺すほどの悪いこと、
と言う認識はとても酷い。
ラスト、よかった
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