「そこまで春画がよいか」春の画 SHUNGA あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
そこまで春画がよいか
良質なドキュメンタリー。でもレビューを読んでいると何か誤解を招く恐れもありそう。で、以下私見ですが。
春画が再評価されたというか春画について発信する人が増えてきたのはホントここ数年。それまではアカデミアで浮世絵を研究している人が春画について触れることはほぼなかったと思う。タブーというか全くスルーされていた。この映画にも出てくる清長のものにしても春信のものにしても春画としては傑作なのだが彼らの研究者さえ言及を避けるようなところがあった。よって画集にも入らないし展覧会もない。歌麿だけは世界に冠たる「ウタマロ」で世間的にもよく知られていた。昔から春画ファンというのは一定数いて浮世絵研究者が講演会とか外部向けセミナーを開催すると歌麿の春画について質問をする、そういった時には研究者は実に痛々しい態度で回答を避けようとする、ということがよくあったのです。
でこの映画ですが、よくこれだけの映像を残したものと感心はしますが、コメンテーターで大学の先生は一人だけでコレクターだマニアだっていう人ばかり出てくる。やはりアカデミアでの位置づけは昔と変わっていないんだとは感じました。
春画と浮世絵はイコールではありません。春画は春画としての長い歴史があって、たまたま江戸時代中期ぐらいに浮世絵の著名な絵師が題材として取り上げることがあった。そこで春画と浮世絵がクロスしたわけで、この映画を観て浮世絵がその実力を最も発揮したのが春画であると誤解した人がいればそれは違う。
もちろん春画浮世絵の傑作群における工芸的完成度というのは素晴らしい。でも技術は美人絵でも役者絵でも名所絵でも発揮されている。
そして、出演者たちがしきりに発言する「生の歓び」や「おおらかな性愛表現」。いささか最後の方は鼻についてくる。ましてや春画にインスパイアされたと言っている横尾忠則や木村了子の作品はなんじゃこれはというのが正直な感想です。
春画の特徴は固定された性器表現にあります。女性器は必ず正面を向き、男性器は横から挿入されているか、あるいはその手前にあるか。そしてどちらも痛々しく誇張されている。
これはグロテスクでありまた何枚も見ていけば見飽きてくる。
春画を必要以上にタブー化する必要はない。でも必要以上に崇めることもないというのが私の結論です。「春画という映画をご覧になりましたか。私は浮世絵の究極の形が春画だと思う。先生はどのように思われますか。」得意げに質問するマニアの姿が見えて来るようだ。
素晴らしいレビュー感謝します。
他の方と少し違う観点で語られていて非常に面白いです。^ ^
一度、冷静に全体的、現実的、地球的な視点で見直す事は大切ですよね。
すごく合点がいきました!