劇場公開日 2023年11月24日

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「R18+で楽しむ春画入門」春の画 SHUNGA 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0R18+で楽しむ春画入門

2023年12月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

浮世絵の中でも猥褻系を扱った春画を題材にした映画と言えば、10月に公開された「春画先生」がありました。「春画先生」はR15+指定のフィクションでしたが、こちらはドキュメンタリーにしてR18+指定。私が観に行ったシネスイッチ銀座では、両作品を同時上映していました。今までメディアで取り上げられることが殆どなかった春画という分野を扱った映画が同時に2作品も上映されるなんて、流行の波が来ているのでしょうか?

で、「春画先生」との比較で本作の感想を述べるとすれば、本作はドキュメンタリーだけに様々な春画をいろいろな人の眼から語っていました。一方「春画先生」はドラマなので、当然ドラマの部分が主体になるのは分かりますが、世の中的に扱われることが少ない春画の分野を取り上げた作品の割に、その概略的な説明が少なすぎた感があり、加えて物語後半になると内容的に春画から離れて行ってしまう展開になったりと、ちょっと欲求不満でした。その点本作は、春画のイロハを解説してくれるばかりか、個々の春画の裏側に潜むモデルたちの物語にも踏み込んだ話もあり、「春画先生」に足りない部分を満たしてくれた感がありました。

春画について思ったことは、鈴木春信や喜多川歌麿、歌川豊国に葛飾北斎と言った超有名な浮世絵師が手掛けている作品が多々あるにも関わらず、明治政府が猥褻図画に指定して規制したことから、表舞台から消えてしまいました。その後21世紀になって、大英博物館が春画展を開催するに至り、ようやく日本でもスポットが当たるようになったようです。そもそも浮世絵全般にしても、明治時代に入り急速に衰えて行ったものの、ヨーロッパを中心に評価されたことをきっかけに日本でも再評価されました。自国の文化を自分で評価出来ず、欧米が評価すると有難がるという他人任せで主体性のない態度は、実に情けないものだなと思ったところです。

一方大変面白かったのは、春画が単なる「エロ本」ではなく、怪奇物っぽいものがあったり、小人になった主人公の「真似ゑもん」が、色道修行に出かけ、浮気が見つかる場面に出くわしたりと言った滑稽な系統の作品もあったりと、「笑い絵」としての要素もあったことが分かったこと。また、髪の毛や下の毛を写実的に精緻に彫り上げたり、観る角度によって色合いが変わる肉筆の春画など、今の技術では出来ないような高い技術を駆使した作品もあったようで、この辺りは驚きました。

そんな訳で、評価は★4とします。

鶏