隣人X 疑惑の彼女のレビュー・感想・評価
全84件中、1~20件目を表示
自分と「違う」ということをどこまで受け入れられるのか
観たのはだいぶ前で、映画を観てから原作もあることを知った。他の人も書いていたが、タイトルからしてバリバリのSFサスペンスだと思っていたのだが、どちらかと言えばSFヒューマンドラマに近い内容だった。
宇宙難民であるXは、人類に同化していて見た目では全く分からず、性質的にも人類とそんなに違うとは思えない。アメリカは早々に難民Xの受け入れを表明し、それに追従するような格好で日本も難民Xの受け入れを決める。
この「アメリカに追従する」というところが結構重要だと思う。何しろ、国民に納得感がまるで無い。しかし我らが日本国民は基本的に「お上が決めたことは嫌々でも守る」という、何よりも常識と礼節を重んじる民なので、その捌け口が「Xのあぶり出し」という受け入れるけど差別するという行動に繋がっていくのだ。
「オレ、自分でも知らなかったけどXだったわ」とSNSで公開しちゃうアメリカ国民とはちょっと違うのである。
Xは見た目にはXだと分からない。Xだからクサいとか、Xだから非常識とか、Xはゲテモノを食べるとか、そういう違いなんて全く無いのに、躍起になってXを探す姿は滑稽でもある。
まぁ、Xと知らずに結婚したら子どもはXハーフなわけだから、そのうち人類はXだらけになるわけだし、何やら特殊な能力があるらしいことも後々発覚するので、人類存亡という意味では由々しき事態かもしれない。
でも一般生活に支障があるのか?と問われれば答えはノーだ。
結局のところ「自分とどれだけ分かり合えないか」しか他者との距離は測れないのに、理解以前の部分で他人を判断したがるのは単純に楽をしたいだけ。
特に不満は無いけど、これと言ってとても良いシーンも無く、面白く観られたけど印象の薄い映画であることは否めない。設定はインパクト有るのに…。
上野樹里の出演作を観ること自体が久しぶりで、映画だと「サマータイムマシ・ブルース」以来、個人的には10年以上観て無かったことになる。
「なんか久しぶりだなぁ」と思いながら観ていたことの方が印象深いくらいだ。
原作では良子とリンのバイト先でのちょっとしたやり取りみたいな日常パートの中で、彼女たちの心情を繊細に掘り下げているようなので、X探しよりも各人物を掘り下げる方向に作ったほうが深みがあって良かったんじゃないかと思う。
週刊文春なんてこんなもんじゃないんですか
外国人労働者の苦労や冷えた親子関係、それらは普通に描いた方がより見...
「∴」
難民問題とともに地球外生命体Xは人間に擬態化できる能力がある事実。これは『火の鳥』に登場するムーピーみたいな存在なのか?興味津々での鑑賞。最初から、何でもかんでもアメリカ追随の問題が提起されていたし、Xへの排他的な日本人体質が浮き彫りに・・・
笹憲太郎が担当することになった疑惑の人物は柏木良子と台湾人のリン・イレン。その台湾人のレンちゃんはバイト先の居酒屋でヘビメタミュージシャン志望の拓真と親しくなり、同じコンビニでバイトする良子とは憲太郎が付き合うことになるというラブロマンスの要素もあった。どちらかというと社会派SFよりはロマンス要素のほうが強かったかなぁ。
ペトリコールという言葉も初めて知った(忘れてるだけかも)けど、本が好きだという良子の日常がなぜかほのぼの。さすがは上野樹里。ただ、プラネタリウムから星の話題にもっと触れて欲しかったかな・・・Xの手首には「∴」もあることだし。
良子の父親(酒匂芳)がX疑惑の中心となり、スクープを掴んだ憲太郎の心理変化描写も見事でした。結局は普通の人間として生きていても誰にも害は与えないX。レンちゃんの苦手な日本語にしてもそうだし、日本人が排他的で疑心暗鬼に満ちている部分を上手くえぐり取っていたように思います。それにしても、Xはいつ頃地球にやって来たんだろ?気になってしょうがなかった。
人の内面が一番大事
大人しい上野樹里
XでもYでもZだろうが、どうでもいいじゃないか!
原作未読にて鑑賞。
俳優陣はみんな良かった。
だいぶ良かった。
良かっただけに脚本の粗が目立ち、
もったいないなぁと思いました。
異星人というブッ飛んだ要素による
移民や多様性、偏見や差別といった
社会派ドラマになってほしくないなぁ。
と思いつつ鑑賞を進める。
しかしながら、社会派テーマに
持っていこうとする制作陣と、
それを抑え込もうという俳優陣の演技が
ぶつかり(?)中途半端になってしまいます。
あなたの愛した人が、移民だったらどうしますか?
愛した人に犯罪歴があったらどうしますか?
差別主義者だったらどうしますか?
なにかを詐称していたら?
裏の意図があって近づいてきたのだとしたら?
貴方の愛した人が、異星人だったらどうしますか?
そんなのどうだっていいじゃないか!
って、胸を張って言えますか?
では逆に。
相手の過去の経歴、手術歴、渡航歴、
犯罪歴、思想、家族、年収、交友関係…。
それを明かしてからじゃないと、
あなたは人を愛せないのですか?
と、自問自答しながらモヤモヤしながら
見終わりたかった。
なので、”3点ぼくろ”が出てきて興覚め。
「はい、この人は地球人」「この人はX」って、
明かしたからなんなの⁉
別の意味でモヤモヤしてしまいました。
地球人を超えた多様性
原作は未読。『小説現代長編新人賞』を受賞した作品の映画化。
ある惑星内での紛争によって地球に移民してきた宇宙生命体『X』。地珠人に紛れた『X』を捜し出す攻防を描いたSF映画だと思って鑑賞。ところが、展開は全く違った方向へ…。多様性の在り方への警鐘とも言えるテーマが、根底に流れた社会派ドラマとして描かれている。
宇宙生命体『X』と疑いのある女性・柏木良子と、それを取材しようとして近づいた週刊誌の覆面記者の笹憲太郎とが、次第に恋に落ちていくラブ・ロマンスを中心に描かれていく。また一方でも、同じく『X』と疑われる台湾出身の留学生の女性とバンド活動をする男とのラブ・ストーリーも並行した展開するため、番宣からSF要素の強いミステリーを期待していたので、正直、肩透かしを喰らったのは否めなかった。
しかしながら、その中で、取材目的の為に自分の正体を隠して柏木に近づいた笹の罪悪感に対する葛藤も描き、人種や文化などの多様性に対する差別とか、認知とか言った現代の社会問題を、地球人と宇宙生命体『X』とに置き換えて描くことで、単なるSFミステリーではなく、ヒューマン・タッチなメッセージ性の強いテーマの作品として仕上がっている。
上野樹里が、ミステリアスな雰囲気を醸し出して、『X』と疑われる謎の女性・柏木良子を演じ、W主演のもう一人、仕事と柏木との恋の狭間で揺れ動く冴えない週刊誌記者・笹役を林遣都が演じている。2人の揺れ動く関係性が、切なさを誘う。また、最初は全く分からなかったのだが、いつもは禿げ頭がトレードマークの酒向芳が、髪の毛ふさふさで柏木の父親役を演じていたので驚いた(笑)
SF映画の常識を逆手に取ったアイデア《日常的SF》
隣人エックスというネーミングが上手いです。
宇宙人でも、地球外生命体でも、エイリアンでもない、
ただの隣人。
そして多分、無害。
SF映画のお約束がほとんどありません。
1、地球人と同じ外見=Xは人間に義体化する。
2、同じ言語を話す=万能の能力者?
3、戸籍(ID)を普通に持っている
4、地球人には一切の危害も加えない。
最初に但し書きがあります。
☆惑星Xで紛争が起きた。
☆☆アメリカ政府は惑星難民Xとして、受け入れた
しかし翻って日本では!!!
一般国民と見分けのつかないXに対して、
《危害は一切加えない》
これを本当に信じて良いのか?
まず個としてXを見つける。
Xを探して特定して
それをニュース・ソースとして週刊誌の売り上げアップに繋げようと、
多くの出版社が血眼になる、
「週刊北都」は一丸となってXのインタビューを取るため、
予測される範囲で疑わしい人間に張り込みを開始する。
その特命チームに志願した落ちこぼれ記者が、笹(林遣都)である。
彼が張り込む相手はコンビニアルバイトの柏木良子(上野樹里)
正直言って毛色の変わっただけの《ラブストーリー》です。
予算も少ない。
ロケ地もない。
金なしで、アイデアひとつ・・・って映画。
コスパは最高です。
最初の一時間はほぼ退屈。
ラスト近くなって急転直下でストリーがやっと動き出します。
結論から言って、ハートウォーミングな良いお話しでした。
言葉を聞くのではなくて、心を読むのよ!!
とか、
当たり前に、愛する人を信じて大事にする。
見分けの全く付かない【宇宙人ネタ】で一冊の本を書き、
それが映画になる。
嘘のような笑いの少ない真面目な映画でした
隣人が宇宙人だなんて、
信じられますか?
あなたは?
心を打たれるヒューマンドラマ
冒頭の設定を字幕にして物語の前提を提示する手法。
それが「人を傷つけない宇宙人「X」 アメリカの発表で少なからずの数の宇宙移民が地球に住み着いている…」という強烈な設定表示から作品が始まる。
この発表によって、Xは本当に人を傷つけないのか、彼らはどこにいる、彼らを特定せよ。
このような国民の疑心暗鬼に答えるべく、出版社は我先にとXを探し出すことに躍起になっていた。
主人公は卯建の上がらない記者で、たった一人の肉親である祖母の施設費用を滞納し続けていた。
会社の命令でXと思しき2名の人物になんとか接近し、彼らの素性を探るが、同時に彼女を好きになってしまう。
この二人のターゲット女性は同じコンビニでバイトしていて、群像的にお互いとお互いのパートナーとの物語を描いている。
やがて主人公は度々夢の中に現れる人物の顔をしっかりと記憶するが、彼こそがXだと信じ込む。そしてそれが彼女の父だということが判明、スクープのお金欲しさに彼女の父を訪問して彼女の父をXに仕立て上げた…
この背景に見えるのが、移民政策だ。そして異人だから何をするかわからないというかつての、いまでもそんなふうなアメリカ社会を思い起こさせる。
心で見ることが大切という作品の主題に、お金と引き換えてしまう主人公の心の苦しみを「X」たちはよく知っているのだろう。
主人公が犯してしまったことは、普通に考えれば決して許されないことだ。押し付けがましい謝罪の仕方もまた共感できないものの、彼は自分がXだと言及することで、視線のターゲットを自分したことで世間のバッシングを背負った。そして金儲けがすべての会社とケリをつけたことは良かったと思う。
彼女は、彼がどれだけお金を必要としていたのかを、彼の祖母へ指環を返しに行くシーンで表現していることも見事だった。
そして彼女自身が父との確執を乗り越えられたことが、自分自身もう一歩先へ希望を求めてブックカフェをオープンさせたことで表現している。
しかし彼女は、彼を許すのだ。この許しこそ、この作品が最も伝えたかったことなのだろう。
しかし上野樹里くんは、素晴らしい女優だと思った。作品の中では36際という設定だが、20代でも全く違和感なしだ。
全84件中、1~20件目を表示