「女優は泣けない」女優は泣かない サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
女優は泣けない
物静かでドラマチックな作品を想像してしまうポスターとタイトルとは裏腹に、軽くて陽気なオープニングにがっかり。結構期待を裏切られた開幕だったんだけど、後半から一気に巻き返し、最終的にはしっかりと泣いてしまった。なんでこんなベタでド直球な人間ドラマに涙してしまうのか。
コントでも始まるのかと思うほど、ダサくて雰囲気に似合わない音楽とやりつくされた演出。音楽を担当した人は本当に映画を観たのかな...と疑いたくなるほど。笑いを生み出したいとしても、流石にやり方が古臭すぎますぞ。この映画には洋楽が絶対ハマるはず。総入れ替えしたバージョンが見てみたい。演出だってそこまでコッテコテにしなくても。ストーリーだけで充分面白いですから。
伊藤万理華目当てで見に来たけど、正直言ってディレクター役にそぐわない女優さんだし、そもそもこのディレクターをもっと掘り下げて描けば面白くなったはず。深みのある傑作まではあと一歩。それでも、《女優は泣かない》の怒涛の回収が、そこまでの残念なポイントを完璧に覆すほど素晴らしかった。これほどタイトルに深い意味がある作品は珍しい。お涙頂戴映画とは言わせない。ラスト30分に監督の強い思いとこだわりが詰まっていた。
なんたって最後の蓮佛美沙子の清々しい表情は最高だ。これまではインパクトのある役柄に巡り会えず(もしかしたら知らないだけかもだけど)、個人的にはあまり印象に残ったことが無かったが、本作で一気にイメージが変わった。上映館の少ない低予算映画でも、大きな爪痕を残したことに変わりは無い。プライドが高く、どれもこれも他人のせいにしていたのが文無しドキュメンタリーをきっかけに一転。シンプルなストーリーながらに、蓮佛美沙子の好演のおかげで心打つ作品に仕上がっていました。
人が覚悟を決める瞬間は、何度見たってカッコイイ。
ラストシーンに込められたメッセージは深く、主人公たちの晴れ晴れとした姿を見て心の底から勇気づけられました。最近の邦画は侮れない。上映館激少ですが、ぜひ。
シリアスパートはわざとらしかったですが、コメディパートの曲は個人的に好きでした。
このへんは好みですし、すべてがフィルムスコアリングではないので、仕方ない部分もあるかと。
蓮佛さん、自分も『スイート・マイホーム』が初見でしたが、いい役者さんですよね。