「"原作ファン"はもうちょっと怒ってもいいと思うよ。」52ヘルツのクジラたち 赤の他人さんの映画レビュー(感想・評価)
"原作ファン"はもうちょっと怒ってもいいと思うよ。
内容を詰め込んだせいで、ある種の「見易さ」を追求してしまったのか?
演技が大げさなため見ている側としては感情移入出来なかった。
映画であるはずなのに、心情を全てセリフで説明しているので安っぽい印象になってしまっていると思う。
あまりにも映画が酷かったので、急いで原作を買って読んでみた。
そちらの方がマシだが、感動の押し付けという点においては似たりよったり。
――以下は原作と比較しての感想――
映画ではムシを家に連れ帰って風呂にいれる際、ムシが全く抵抗せずにTシャツを脱がされてた直後に背中の痣を映したところで、まず違和感を覚えて少し感情が離れてしまった。
原作では、ここを描写してくれていたので一安心して読み進めていった。
映画では、登場人物たちの感情表現の大きさと、心情説明的なセリフの多さになかなかついて行けないまま物語が流ていってしまう。
原作では、あそこまでオーバーに叫んだり怒鳴ったりはしない。
主税のキャラクターが登場時から飛ばし過ぎてて、ヤバいヤツの匂いしかしない…
喧嘩騒動を起こした部下をいきなりクビにすると発言したり、謝罪のための1回目の食事で「あ~んして」を繰り出したりする。
原作では快活なキャラクターで徐々に親しくなるが、そういった経過がないから好感を持てない。
主税がアンさんに「親にも打ち明けられないような状態で…」と特大ブーメランを投げつけたところで思わず笑ってしまった。
原作では『あの親にしてこの子あり』な環境のため主税の立場は強いままだったから、アンさんへの報復は叶ったというのに、改変によって道化のようになってしまっている。
バックハグからの腹部刺傷、そこからの「逝くなー!」が個人的にはこの映画の爆笑ポイントとしてのハイライトとなり
以降まったく感情移入出来ずに、淡々と感動ポイントを見せつけられる。
原作でもこの辺りから話の筋と展開がグダグダになってきて、感動シーンとそれを発生させるための後出しの説明を繰り返す始末。
登場人物たちがあの世界の中で生きている気がしなくて、ただただその場面場面で感動的なシーンを演じさせられてるように感じでしまってかなり残念だった。