コラム:清水節のメディア・シンクタンク - 第4回
2014年3月20日更新
第4回:日本橋の最新シネコンで、立体音響ドルビーアトモスの「アナと雪の女王」に包まれる
「日本橋」が行動エリアになる日がやって来るとは思わなかった。兜町を擁する金融の街、有閑マダムの街という固定観念があったことは否めない。ゼロ年代半ばに始まった再開発は知っていながら、足を延ばそうとしなかった。3月20日グランドオープンのコレド室町2(地上22階/地下4階)、コレド室町3(地上17階/地下4階)の完成披露にあたり、日本橋を訪ねた。するとどうだろう。ファッションや食や暮らしをテーマとする複合施設が建ったというだけではない。恵比寿や六本木の一角が刷新されたときとは異なり、街全体で変わろうとする意志が伝わってくる。三越や高島屋を始めとする歴史的建造物や老舗店舗、川や橋や神社など由緒ある景観を残しつつ、新しさを採り入れていこうとする創造力が漲る。若者に媚びず、品格を保った変容。コレド(COREDO)とは、核:CORE+江戸:EDOの合成造語だという。五街道の起点であり商業の中心として栄えた街の賑わいを取り戻そうとする、意志の表れでもある。
しかも最新の大型シネコンが誕生するとなれば、色めき立たずにはいられない。コレド室町2の2~6階に入った「TOHOシネマズ日本橋」は、計9スクリーン/1770席。この地区初の映画館だ。金・土にはオールナイト上映も行われる。“アーバン ラグジュアリー シネマ”というコンセプトの下、ソファーも多数設置されたロビーを始めとする場内の色づかいは極めてシックで、ゆったりとした空間が広がる。ビジュアル面では、TOHOシネマズ規格のラージスクリーン「TCX」を2スクリーンで採用。壁一面に広がったTCXは、同規模キャパの銀幕よりも画面サイズを120%拡大。スクリーン7(406席)は縦7.9m×横18.7m、スクリーン8(292席)は縦6.7m×横16.0m。ららぽーと船橋のTCXは縦10.1m×横18.8mなので、若干小ぶりであり、そこは都市型の限界を感じさせる。
TOHOシネマズが日本橋から採用することになったのは、「プレミアボックスシート」だ。長時間の着席による疲労を感じさせないよう配慮され、海外の航空会社も採用しているというレザーシートは、従来シートに比べ1.5倍という居住性。左側に荷物を置けるスペース、右側にドリンクホルダーの付いた肘掛は、落ち着いた木目調。1席ずつ仕切られ、男独りで存分に涙を流すことも出来る半個室仕様。お隣さんの劇場マナーを気にせずに済む“シールド”としても有り難い。このシートは、スクリーン5に9席、スクリーン7に24席、スクリーン8に22席の計55席設置。料金は1席2500円(3D料金別)。大人の映画館に相応しい特等席といえるだろう。
東京駅を挟んで西南、有楽町・日比谷エリアの観客の流れがすぐさま変わるとは考えにくいが、サウンド面にこだわる作品ならば、筆者は確実に日本橋へ向かうことになる。都内初となる立体音響「ドルビーアトモス」が、スクリーン8に導入されたからだ。これまでの5.1chや7.1chサラウンドを格段に進化させ、天井にもスピーカーを配置することで、360度全方位から聴覚に訴える音場を創出する画期的なシステムである。スクリーンの中の世界の音の動きを、より自然に味わい、ストーリーへの没入感を、より深めてくれる。サラウンドスピーカーは、天井に9個×2列=18個、左右サイドに9個×2列=18個、後部に8+2個(2個はサブウーハー)。スクリーンには、L/Lc/C/Rc/Rの5ch+LFE 1ch。国内では、TOHOシネマズららぽーと船橋、イオンシネマ幕張新都心、TOHOシネマズくずはモール(大阪)、イオンシネマ和歌山に次ぐ5スクリーン目。船橋(405席)に対し、日本橋は小さめのキャパ(292席)でのドルビーアトモス導入だが、「ゼロ・グラビティ」の事故発生場面で試聴比較してみると、日本橋の方が迫真性は優れているように感じる。左右のスピーカーの高さが、船橋よりも低めであることから、音響設計の意図が、よりダイレクトに伝わってくるのかもしれない。