コラム:メイキング・オブ・クラウドファンディング - 第9回

2016年11月17日更新

メイキング・オブ・クラウドファンディング
(c)「雨にゆれる女」members
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■クラウドファンディングには気合いが必要

大高:今回はクラウドファンディングでプロジェクトが立ち上がった段階で予告編クオリティーのティザー映像があったり、キービジュアルの様な完成度の高い写真もあったりして驚きました。中でも既に1日分撮影している、ということに作品に対する熱意がすごく感じられました。特に主演俳優であり、大手芸能事務所に所属する青木崇高さんがプロジェクトの全面に立つやり方は簡単ではなかったと思うんです。

松田:そうですね。ある程度キャリアのある方が全面に立ってプロジェクトのアピールをするのは難しいことだと思います。

大高:そこはやはり、半野さんと青木さんの関係性があって成立したんですか?

半野:そもそも今回、僕が映画を撮るに際に出した条件が1つだけありました。それは「青木崇高を主演で撮りたいんです!」というものでした。そして僕から青木に直接依頼をしたら、彼が事務所を説得してくれ、そのお陰で今回主演して貰えることになったんです。まだ脚本が完成していない段階で(笑)。そしてその時「これは映画作りにおいて新しい一つの方法を提示できるんじゃないか?」って思ったんです。

大高:新しい方法ですか?

半野:今回みたいに主演俳優が全面にでてプロジェクトへのサポートを募るやり方だったら、本当の熱意が伝わるんじゃないかと。 要するに作る側と頼まれた側が、守られた安全な場所で映画を作っているのではなく、役者も本気で一緒に映画を作ろうとしている、ということです。

大高:確かに、リターンには映画で使われた青木さん制作の小道具があったり、Tシャツにイラストをデザインしてくれたりしていて、お金のサポートに対するお礼はもちろんですけど、“映画を一緒に作っていこう”という気持ちそのものが伝わってきました。

半野:そうですよね。スタッフや俳優はもちろんですが、やっぱり出資をしてくれた人も映画を作る仲間だ、という気持ちは強くありますね。

大高:いいですね! クラウドファンディングをしたら、全然連絡を取っていなかった旧友から応援された、といったお話など、お金以上にクラウドファンディングで立ち上がるコミュニティに感動すると言うお話もよく聞きます。なので単なるお金集めだけでなく、ファンコミュニティーを作る役割も大切なのかと思います。今後クラウドファンディングと映画の可能性については何か感じるものはありましたか?

半野:これからクラウドファンディングはいろんな形で多様化していくと思うんです。今はプレゼンターが個人からお金を集めるシステムになってますが、例えば今後は対個人だったものが対企業になったり。他にも権利分配の様な事も起こってくる可能性もあると思うんですよね。そうするとクラウドファンディングの内容は間違いなく多様化すると思うんです。

大高:なるほど。

半野:しかし、クラウドファンディングの面白いところって、ある種閉じられた分野のものにオープンな人たちが賛同してくるということなので、やっぱり小さなプロジェクトを応援する方に大きな面白味はあると思うんです。要は5億円のプロジェクトに10万円サポートした時と、300万円のプロジェクトに10万円サポートした場合では応援した感覚に大きな差があると思うんです。

大高:確かにそういう側面もあるかもしれませんね。MotionGalleryとしては金額の規模の多寡はあまり重視してはいなくて、クリエイターが強い思い入れがある作品やプロジェクトを数多くサポートして行きたいなと想いますね。

半野:ただね、企画をしている人の気合いが足りないと思うんです。もしもプロジェクトを立ち上げる人が、「集まらなくてもいい、集まらなかったらできなくても仕方ない」なんて考えるならやらなくていいと思うんですよね。

大高:あぁ、それはとても重要な視点だと思います。web上のコミュニケーションであっても、「集まらなかったらできなくても仕方ない」と想っていたら、その想いは見ている側に伝わってしまいますし、そういう場合はなかなか応援しづらくなってしまいますよね。

半野:例え100万円のプロジェクトでも、集まらなかったら企画した自分が100万円入れます! 位の気合いでやらないと、人からお金を集めるということはそんなに簡単なことではないと思います。

大高:それは集める金額の大きさではなく、作品自体に対する向き合い方や態度にも通じるお話ですよね。

半野:そういうことです。やっぱり今後は熱意のある企画が増えると、その企画に参加した人の満足度も増えるはずなので、プレゼンター側がより一層本気をだして頑張ろう! という気持ちになると思うんですよね。そういった企画を作る側の熱量によって、今後クラウドファンディングが世界へ広がるレールにのるのか、それとも所詮サブカルチャーのレールだね、ということになるのか分かれていくと思います。

大高:なるほど、プラットフォーム側としてもとても勉強になります。最後に今後の展開について教えて下さい。

松田:まずは 11月19日から映画が公開となりますが、テアトル新宿での公開を起点に地方へもたくさん広がっていければ嬉しいです。今、地方での公開も続々と決まっていますので公式ホームページで御覧いただけたら。コレクターの方も東京以外にもたくさんいらっしゃるので、心強い。面白い試みを続けていけたらいいですね。

半野:例えばですけど、映画のDVD販売はせずにレンタルDVDショップで1週間無料で貸し出すというのはどうですか?そしてそのあとは全て回収してもう二度と観れない、という企画があったら面白いと思うんですよ。

大高:それはものすごく話題になりそうです。

松田:それはもし劇場公開の収益で製作費がリクープできていたら検討しましょう(笑)。

大高:なるほど、そうなれば更に面白い企画も生まれそうですね!

半野:そういう馬鹿なことをするためにもみなさん是非劇場へお越しください。

大高:今日はありがとうございました!

11月19日(土)テアトル新宿にてレイトロードショー

クラウドファンディングについても語る半野監督
クラウドファンディングについても語る半野監督

筆者紹介

大高健志(おおたか・たけし)のコラム

大高健志(おおたか・たけし)。国内最大級のクラウドファンディングサイトMotionGalleryを運営。
外資系コンサルティングファーム入社後、東京藝術大学大学院に進学し映画を専攻。映画製作を学ぶ中で、クリエィティブと資金とのより良い関係性の構築の必要性を感じ、2011年にMotionGalleryを立ち上げた。

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