コラム:メイキング・オブ・クラウドファンディング - 第20回
2021年2月19日更新
■コロナ禍で模索する公開のあり方
大高:この映画は昨年の秋にイオンシネマ茅ヶ崎で公開して、今年の2月20日にユーロスペースで公開するということで、あまり劇場公開の方式としては前例がないと思いました。そこに至った経緯とか狙いについてもぜひお聞かせください。
三澤:イオンシネマ茅ケ崎に関しては前作も上映してくださったので、そのご縁でお願いしました。そこでいかにこの作品の存在感を示して全国に持っていけるのか、ということを挑戦したんです。ここに髭野(純)さんが加わり、MotionGalleryさんを活用させていただいて、これから全国に広げていきたいと思っています。
大高:ユーロスペース以降は何か決まっている流れはあるんですか?
三澤:ユーロスペースの後は川崎市アートセンターと横浜シネマ・ジャック&ベティで2週間おきに上映があって、その後は大阪のシネ・ヌーヴォ、京都みなみ会館、神戸の元町映画館など、10か所で決まっています。
大高:今のコロナ禍における劇場公開って色々大変だと思うんですけど、監督とキャストの皆さんで感じているところはあったりしますか?
三澤:本当に2月20日に公開できるといいなって思ってます。緊急事態宣言もね、延長するかもしれないとかという話とかもあるので、まあ様子見ながら。(※インタビュー収録日は1月26日)
大高:去年イオンシネマ茅ケ崎で公開した時は、ティーチイン的なイベントはやっていましたか?
三澤:イオンシネマは舞台挨拶がNGだったんです。その代わりにお客さんたちには市内の居酒屋に来てもらって、ティーチインというかトークセッションみたいなことをしました。あとは今作の共同プロデューサーの森浩章さんの経営する茅ヶ崎館で、この4人と堀さん、沙希役の小篠恵奈さんによるYouTube配信用のトークセッションをやりました。できるだけ観てくださった方とか、これから観てくださる方とつながれる機会を作るようにしました。のめりこんでくれる人は2回も3回も観てくれていました。
大高:今だと、ユーロスペースはオンラインイベントとかですかね?
三澤:オンラインイベントじゃなくて、登壇イベントするなら席数を半分にしなくちゃいけないという制限があります。
髭野:今のユーロスペースさんのレギュレーションとしては、イベントの場合は座席半分で最前列も潰すという感じですね。あとレイトショーができないので、平日の昼間にイベントがやれるかどうかというのはあるんですけど、土日は是非ともやりたいなと思ってます。僕が緊急事態宣言中にやっていた他の作品は、監督だけが舞台に立って、他の登壇者はリモート出演にしました。色々と試行錯誤はありますが、2月20日の公開初日はリアルで舞台挨拶をやりたいですね。
大高:劇場公開と同時配信は考えてますか?
三澤・髭野:考えてないです。
大高:今は劇場公開が難しいですよね。それこそ僕が釜山国際映画祭に一緒に行った「鈴木さん」という作品はどう公開するのかが全く決着がついていなくて、みんなにどうしたらいいんですかね?って聞いて回っています。同時配信をしないとなかなか厳しいのかしらって思ってはいますけど。
三澤:配信にするかしないかは、映画のタイプにもよるのかなって思います。この作品は映画を見ながら「なんだろう?」って思う時間が他の映画より多いので、モニターで見ていると途中でやめちゃうじゃないかなって思ってます。それでも終わってからの満足度はバッチリなんですけどね(笑)。映画館で見てほしい一方で、(森)優作が言ってくれたエピソードを紹介してもらっていいですか?
森:友達がこの映画を観た感想なんですけど、「いつもポケットに入れておく小説みたいな映画だ」って言ってて、それは自分もすごく共感しました。この作品はその場限りの映画館で、その日の気分にもよる映画でもあると思うので、そういう意味の面白さ充分にあります。だけどふとした時に、また観たいなと思う瞬間がすごく詰まった映画でもあります。なにか見えないものが動いている力がある映画だと思うから、そういった面でも、映画館以外でも観てもらえる面白さはあるのかなと思います。…すごい無理やり配信を宣伝している奴みたいになってるけど(笑)。
大高:最後に、この映画をどういう風に観てほしいかなど、観客へのメッセージを頂けたらと思います
森:コロナ禍によって外出や行動がままならないがゆえに自分の身近な環境でしか生活ができないという状況が、今の僕たちだと思います。自分がいる社会や住んでる町に対して、改めてすごく敏感になる生活形態になってきている状況だとも思います。そういう意味でこの映画は、自分の身の回りの社会がどう動いているかというものをすごく感じられるような作品になっています。観客の皆さんにはそれを感じてもらえたらいいなと思います。
中崎:映画の中に正解みたいなものを探すんじゃなくて、自分の感覚で違和感を感じるところとか、共感できる役やシチュエーションを投影しながら、自分なりの答えみたいなのをいくつか出して欲しいですね。そしてそれを他の人と議論をぶつけ合いながら楽しんでもらいたい作品です。それが映画の楽しみ方の一つでもあるので。ちょっと状況的に難しいかもしれないんですけど、そうなればいいなあって思っています。
守屋:日本独特というか、ちょっと閉鎖的な環境を描けている映画です。僕は子供の頃に感じた、閉塞感のある場所というのは空気が重いというか、なにか居辛そうにしている人の雰囲気が漂っている。この映画はそれを思い出させます。そういうところから抜け出したくても抜け出せないという人たちの苦しみも描いているので、この映画を観て、そういうところをもう一回見直してみたらいいんじゃないかと思います。
永嶋:僕は映画を観た人から「誰を軸にして観たらいいのかずっと分からなくて、全員を見るしかなかった」みたいな話を聞きました。だけど多分、人生ってそういうものなのですよね。この映画を観て、自分とあの人とか、あの人にとってのあの人とか、そういった他人に思いを馳せたり置き換えて考えたりすることで、生きていく中で1つのヒントになるようなところもあったりするんじゃないかなと思っています。そういうのを感じてもらえたらいいんじゃないかな。
大高:皆さんありがとうございます。最後に、三澤監督お願いします。
三澤:そうですね。この映画は上映時間79分で短いんですけども、たぶん3日くらいは楽しめると思うんですよね。3日じゃ短い? もっと楽しめるかな? とにかく見甲斐もあり話し甲斐もある映画だというのは、今までの釜山映画祭やイオンシネマ茅ケ崎での上映で観てくださった方々の反応を見て、すごく自信を持って言えます。香港では「2度見るなら『TENET テネット』より『落葉』」ということになっているみたいです。映画を見て語りたいならテネットよりも大磯です!
一同:(笑)
三澤:茅ヶ崎上映時に観客の方が作ってくれた「#ジワジワ広がる」というハッシュタグを使いながら、ジワジワと侵食していきたいなと思っています。
2021年2月20日(土)より渋谷・ユーロスペースほか全国で順次公開
「ある殺人、落葉のころに」
Written and Directed by 三澤拓哉
守屋 光治 中崎 敏 森 優作 永嶋 柊吾
堀 夏子 小篠恵奈 盧鎮業 成嶋瞳子 大河原恵 平田真人 八戸邦子 磯貝幸毅 中川香果 清水形 松詠人 本田由揶 桐山雄気 朝倉倭士 宮岡亜実 福地冷緒 三澤啓吾
Producers:黄飛鵬(『冬のセミ』-オムニバス映画『十年』)/ 三澤拓哉(『3泊4日、5時の鐘』) Co-Producer:森浩章 Director of Photography:廖天駿 Gaffer:西あずさAssistant Director:市原大地 Editors:三澤拓哉 / 黄飛鵬 Sounds:李志峰 Music:岩本エイジ Costume:神脇清人 Hair and Makeup:藤垣結圭 Still Photography:渡辺拓真
協賛:Fujisawa GARAGE
配給:イハフィルムズ 2019 / 日本,香港,韓国 / シネマスコープ / カラー / 5.1ch / DCP / 79min / 日本語 (C)Takuya Misawa & Wong Fei Pang