コラム:編集長コラム 映画って何だ? - 第53回
2023年3月23日更新
SXSW2023で、ひときわ存在感を放っていた「テトリス」
SXSW開催中のオースティンで、ひときわ存在感を放っていたのがアップルTV+の「テトリス」です。「テトリス」は、宣伝費が半端なかった。何しろ、SXSW参加者のテトリス体験は、オースティン空港に到着したところから始まるのです。
空港の、バゲッジを受け取るところで初めて「テトリス」の広告を目撃。そびえ立つギターがカッコイイですよね。ギターの左側のモニターにテトリスが映っています。
メイン会場のオースティンコンベンションセンターでは、テトリスマンに遭遇。奇妙なパフォーマンスで周りの人々を笑わせていました。
究極は、アラモドラフトハウスという劇場に敷設されたテトリスシアター。テトリスグッズが配布され、テトリスのゲームもプレイできる空間で大人気です。テトリスマンと記念撮影ができるフォトブースに行列ができています。
「テトリス」本編の上映ももちろん凄い人気で、我々は1時間前に整理券をもらっていましたが、入場したらほぼ満席でした。危なかった。
映画の内容は、思っていたのと全然違っていました。「テトリスという凄いゲームがソ連で流行っているらしい」という情報を聞きつけたアメリカ人のゲームディーラーが、「海外で展開する権利を急いで取りに行こう!」とソ連に飛びます。ゲームボーイを準備していた任天堂がテトリスを欲しがっていて、無事に権利を取得できれば大儲け確実です。
しかし、ソ連はゴルバチョフ政権が崩壊する寸前の大混乱状態。実際の権利所有者、ソ連の科学アカデミーから権利を取得するプロセスに、政府関係者などが介入してきて大騒ぎになるという、「権利案件」の映画でした。
上映後には、実際にこの権利ディールに奔走していた当事者がサプライズ登壇し、場内拍手大喝采。空港から続いたテトリス狂想曲も、見事なクライマックスで終了しました。
「テトリス」は日本でも、2023年3月31日からアップルTV+で配信開始です。私も日本語字幕付きでもう一回見るつもりです。
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi