コラム:人間食べ食べカエル テラー小屋 - 第9回
2019年10月9日更新
やたら凝りすぎ!「道化死てるぜ!」はクラウンホラーの真骨頂
数あるホラージャンルの中でも、クラウン(ピエロ)ホラーはかなりポピュラーな部類と言えるだろう。宇宙からクラウン型宇宙人がやってくる「キラークラウン」(1988)や、お父さんがクラウン衣装を着たら脱げなくなって恐怖の子喰いクラウンに変貌していく「クラウン」(2014)など、これまでにもあらゆるクラウンホラーが作られてきた。
最近では、スティーヴン・キング原作の2度目の映像化である「IT イット “それ”が見えたら終わり」(2017)が大ヒットを記録。クラウンホラー大国アメリカを中心に、世界中で恐怖のクラウンが次々と誕生し、近年は「IT イット “それ”が見えたら終わり」大ヒットのおかげで更に勢いを増している。一見愉快な見た目ながらも、人々に恐怖を植え付ける白塗りの存在は、まさにホラーという題材にうってつけなのだ。
さて、今回紹介する「道化死てるぜ!」という完全にどうかしてる邦題の本作品は、アイルランドからやってきた、オカルト要素が入ったクラウンホラーコメディだ。
道化師に扮した男が、訪問先の子供たちが仕掛けたいたずらのせいで頭に包丁がぶっ刺さって盛大に血を吹き出しながら死亡。それから6年後、当時いたずらで道化師の命を奪った子供たちが立派なクソガキに育ちキャンパスライフを送っていた。そんな彼らが家でド派手にパーティーをしている最中、道化師流黒魔術によって死んだはずの道化師が復活! パーティー中の家に乗り込んで、かつて自分にいたずらを仕掛けたクソガキどもを愉快に殺しまくる!! という非常にシンプルなストーリー。残ったリソースは全てキラー道化師の殺しに注ぐという潔い構成が素晴らしい。
キラー道化師が活躍し始めるのが少々遅く、前半は若干ダレてしまうのが難点ではあるが、それを切り抜けて一度キラー道化師が暴れ始めたら、もうあとはパーティータイム!! 豪快・爽快・痛快なキリングシーンの目白押しで、ハイテンションのままラストまで一気に駆け抜けていく。
最大の見どころは、やたら工夫の凝らされた殺害シーンの数々である。本作のキラー道化師は、ナイフで一刺ししてハイ終わり、なんて味気ない殺し方は絶対にしない。彼の道化師としての矜持が殺人に全集中しているので、毎回非常にクリエイティブな殺し方を見せてくれる。
手足を順番に千切ったあとに、口に手を突っ込んで口内から無理やりウサギを出したり(こいつ何言ってんだと思うだろうけど本当にやってるんですよ!!)、腸を引きずり出してバルーンアートを始めたりと、相手によって手口を変えて、如何に面白く殺すかを追求するキラー道化師。殺人方法にちゃんと道化師っぽい遊び心を加えているのも偉い。
血と臓物の量も十分で、並大抵のホラーでは見られない凄まじく力の入った人体破壊が次々と出てくるので、ゴア好きも大満足の仕上がりとなっている。
キラー道化師に襲われる若者たちのほとんどが、見事なまでのクソガキとして描かれているのも良い。下手に彼らに感情移入させず、こいつらが面白い殺され方をされるところを見せて観客を楽しませるという、作り手の目的がしっかりと明確化された仕上がり。だから、こちらとしても肩の力を抜いて、ゲラゲラ笑いながら道化師の殺戮劇を心ゆくまで堪能することができるというわけだ。キラー道化師が殺しの場面以外でも、愉快な歩き方で移動するなど、一挙手一投足が完全に道化師なところも、本作の楽しさを増幅させている。
世の中に数えきれないほどクラウンホラーは存在するが、ここまで面白殺人に力を入れた作品はなかなか無い。キラー道化師という設定を見せ場でしっかり活かしてくれている。「道化師がこんな殺し方をしたら面白いよね!」「この道具ですげえ殺人技を思いついたんだけどどうかな?」そんな作り手たちの楽しげな道化師殺人談義が、作品を通してこちら側にも聞こえてくるよう。楽しくてしっかりグロい殺戮ショーは、ホラー好きなら一見の価値ありである。
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筆者紹介
人間食べ食べカエル(にんげんたべたべかえる)。人間食べ食べカエルです。X(旧Twitter)で人喰いツイッタラーをやっています。ID @TABECHAUYOで検索してみてください。WEBや誌面で不定期に寄稿をするほか、新作へのコメントなどを書いています。好きなジャンルはホラーとアクションで、特にモンスターに人が食べられるタイプの映画に目がありません。「ザ・グリード」に出てくる怪物を目指して日々精進しています。どうぞよろしくお願いします。
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