コラム:人間食べ食べカエル テラー小屋 - 第7回
2019年8月21日更新
頼りになります!カリスマ市長!! 中国発のディザスター映画が超爽快
観測史上最大かつ最強の台風が発生! 台風の直撃ルートに位置する中国沿岸部の都市は、圧倒的な破壊力の暴風雨によって壊滅状態に陥ってしまう。このままでは犠牲者は増えるばかり。大自然の力の前では誰もなすすべがないのだろうか……。そんな絶望的な状況の中、一人立ち上がる者がいた。そう、市長である!! 市長は圧倒的指揮力と圧倒的行動力を駆使して、皆を率いながら台風に立ち向かうのだった!!!
台風。それは、破壊神の如く全てを吹き飛ばす自然界の脅威である。ひとたび街に直撃すれば、交通機関は麻痺し、時には建物すらも吹き飛ばされる。人々は、ただそれが過ぎ去るのを待つしかない。時は2008年。中華人民共和国から、そんな自然の驚異に真っ正面から立ち向かう、あまりにもアツいディザスター超大作が誕生した。それが「超強台風」である!!!
ここ日本でも一部でカルト的な人気を誇る本作。その人気の秘密と言えば、やはり主役である市長だろう。通常、映画に出てくる市長と言えば、その大半が役立たずで、結果的に現場の人たちが泣きを見ながら何とか頑張って事態が解決する、というのがありがちな展開だ。
しかし、本作の市長は全く違う。人並外れた行動力で自らガンガン動き、全てを解決に導いていく。台風の存在を知るや否や、映画内の市長としては非常に珍しく人命を最優先して非常事態宣言と共に即避難を指示。更には市長なのに軍すらも動かしてしまう。
雨風が荒れ狂う港で「船がないと生活が出来ねえ!」と避難を頑なに拒否する漁師たちのもとに、なんと市長自ら駆けつけると、彼らの前で膝をつきながら説得を始める。そして市長が膝をついた最高のタイミングで背後から波がザッパーン!! 市長の溢れんばかりの誠意と荒波のコンボで、漁師たちは「市長……!!」と感極まり、最終的にみんなで避難をするのだ。
市長の活躍ぶりをザっといくつか書き出しただけでも、その凄さが伝わるだろう。この他にも、市長はあらゆる方面に出向いては大活躍していく。津波に乗ってサメが侵入してきたら「私は特殊部隊にいた!」と言い放って敢然と立ち向かう! こんな頼りになる市長いますか!?
スーパー市長が、災害映画の定石を片っ端からブチ壊していく様が爽快すぎて、観ているこちらも「行け!市長!!」と思わず応援を送りたくなってくる。
あと、市長が何か良いことを喋り始めると、毎回必ず同じ感動系BGMが流れるところも好きなポイントだ。市長以外にも濃くて魅力的なキャラが沢山いるのだが、市長が喋り始めたら完全に彼の独壇場。感動的なBGMをバックに、全てのキャラがむせび泣くのだ。この必殺感動パートは、最早様式美と言える。全編を通して過剰なまでに強調して描かれる、市長の圧倒的カリスマ力がたまらない。
本作のもう一つの見どころとしてディザスター描写が挙げられる。現在は、災害を描く際にCGを使うのが主流だ。2008年でもとっくにCGメインの時代であるが、本作はなんと、CCを殆ど使わずにミニチュア特撮一本で災害を描き切っているのだ。
しかもそのクオリティが非常に高い。精巧に作られた街並みに、マジの水流をドドドッと勢いよく流し込んで全て押し流すというアナログな撮影方法で台風の脅威を表現。おかげで、異様に生々しく、迫力のある映像に仕上がっている。この独特な味のあるディザスターシーンも必見だ。
本作は、上述したような度を越した市長の活躍ぶりを始め、それ以外にも強烈に楽しい見どころが沢山詰まっており、繰り返し何度も観たくなる作品である。もし未見の人がいたら、ホラー専門配信サービスOSOREZONEで配信開始となったこのタイミングで是非ご覧頂きたいと思う。最初は、本作がホラーなのかと疑問に思ったが、「超強台風」はそんな些細なジャンルの違いなど乗り越えてしまう素晴らしいパワーを持つ作品なのだと気づいた。あと、台風から見たらこの市長はホラーでしかないと思うし。何より「超強台風」が観られればそれでいいのである。
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筆者紹介
人間食べ食べカエル(にんげんたべたべかえる)。人間食べ食べカエルです。X(旧Twitter)で人喰いツイッタラーをやっています。ID @TABECHAUYOで検索してみてください。WEBや誌面で不定期に寄稿をするほか、新作へのコメントなどを書いています。好きなジャンルはホラーとアクションで、特にモンスターに人が食べられるタイプの映画に目がありません。「ザ・グリード」に出てくる怪物を目指して日々精進しています。どうぞよろしくお願いします。
Twitter:@TABECHAUYO