コラム:若林ゆり 舞台.com - 第63回
2017年12月21日更新
第63回:「ブロードウェイと銃弾」で“楽”なミュージカルに初挑戦する城田優のギャップに萌え!
そう、城田は「ブロードウェイと銃弾」に入る前(この取材のすぐ後)、世界でもトップと言われるミュージカルスター(ラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲス、シンシア・エリヴォ)と共演する「4Stars 2017」の本番真っ最中(東京公演:東京国際フォーラムで12月20~28日)。城田は2013年、「4Stars」でとんでもなく高いレベルの共演者たちと舞台に立つことにより、成長を実感。「またやらせてほしい」と働きかけ、2度目のチャレンジが実現した。
「3人のおかげでレベルアップできる。非常に意味のある経験です。でも正直、『4Stars』のことを考えただけで心臓をギュッとされるように緊張してます! ニューヨークに1週間ほど稽古しに行っていましたが、まだ恐いです!!」
自信家でもある城田が、「実はめちゃくちゃマイナス思考でビビリ」な一面を覗かせて恐がる。このギャップ! ブロードウェイでのデビューも視野に入れているかと思いきや。
「僕はミュージカルでてっぺん取ってやるとか思ったことは一度もなくて、むしろその逆。『絶対に僕なんかミュージカルスターにはなれない』と思いながら生きてきたんです。ただ、役者としてミュージカルは武器になると周りからも言われたし、自覚もしていました。『エリザベート』のトート、『ロミオ&ジュリエット』のロミオ、それに『ファントム』という、宝塚でトップスターの方がやる役をやらせていただいたことで“男性版宝塚スター”と言っていただくこともあります。でもブロードウェイに進出するなんて、いまは考えていません。今回もブロードウェイで思ったのは、『まだこんなレベルの高いところでは闘えない!』ということでしたね。ラミンやシエラは『ユウ、絶対にブロードウェイでやってみるべきだよ』なんて本気で言ってくれる。でも、僕は自分が『歌めっちゃくちゃうまい』とまでは思っていないんです。それに、言葉の壁というハンデを乗り越えなければ始まらない。『4Stars』では日本語、英語、スペイン語、フランス語でも歌うんですが、発音はもちろん、感情をどう込めるのかが難しい!」
「4Stars」でまた驚くべきレベルアップを果たすであろう城田にとって、その次のステップである「ブロードウェイと銃弾」は「中休みみたいなもの」なんだとか。
「富士山に登って、酸素足りなくてヒイヒイってなって、頂上まで行って、『やったー登れた、がんばった甲斐があったー』って感動して、そこから地上に降りたときの『空気、おいしいー!』という状況が『ブロードウェイと銃弾』です(笑)。そう言うとナメているみたいに聞こえるかもしれないんですけど、そうじゃない。なぜそう言うかというと、日本語だからなんです。自分の知り尽くした言葉で、感情の込め方や台詞の間まで思うとおりにコントロールできるんですから最高ですよ。『楽だ』といっても『楽をする』というより『楽しめる』の方なんです」
ミュージカルではほぼ、重めの作品ばかりが多かった城田。コメディというジャンルへの冒険には「ワクワクしている」という。
「演出を担当される福田さんのことはよく知っていますし、共演者の方々も楽しみでしかたない。アドリブもチョコチョコ入れてくるんだろうなぁと思います。ですが僕は、アドリブ合戦には参加しません。チーチという役を崩したくないので。チーチは基本的にずっとコワモテで、そのくせすっごく熱く芝居を語る、というイメージ。面白いクセなんかは入れてもいいかもしれないけど、ふざけることはしたくない。福田監督の映像作品『明烏』や『勇者ヨシヒコの冒険』でやったようなオーバーなコメディ芝居は、今回は封印。『ミュージカルを楽しむ』というのが僕の目標です。『4Stars』の不安が「100」だとしたら、『ブロードウェイと銃弾』は「2」。タップだけは不安ですけど、どっかで『何とかなる』って思っている自分がいるんです。とにかく楽しませますよ。そこはお約束します。それがエンターテインナーの仕事ですから!」
「ブロードウェイと銃弾」は2018年2月7~28日、日生劇場で上演される。大阪・福岡公演もあり。詳しい情報は公式サイトへ。
http://www.tohostage.com/bullets/
筆者紹介
若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。
Twitter:@qtyuriwaka