白坂依志夫 : ウィキペディア(Wikipedia)

白坂 依志夫(しらさか よしお、1932年(昭和7年)9月1日 - 2015年(平成27年)1月2日)は、日本の脚本家である。本名︰八住 利義(やすみ としよし)。市川市が特別協力する水木洋子の名を冠した「市川市水木洋子シナリオ賞」選考委員長。日本シナリオ作家協会全部委託承継会員著作者管理検索 検索結果、日本シナリオ作家協会、2015年8月19日閲覧。。

略歴

1932年(昭和7年)9月1日、東京府東京市(現在の東京都)に生まれる。父はロシア文学者から脚本家に転じ、映画脚本界の大御所として知られた八住利雄(1903年 - 1991年)、母の父(母方の祖父)が山本露葉(1879年 - 1928年)、母の実弟(母方の叔父)が山本夏彦(1915年 - 2002年)である。

中学生時代から、多作で知られた父のラジオドラマの脚本などを代作。成城学園高等学校卒業。早稲田大学文学部在学中は、左幸子や新東宝の若手俳優と劇団を結成し演劇活動に熱中するが、やがてアルバイトで脚本を書き始める。

1953年(昭和28年)に大学を中退。1955年(昭和30年)、大映東京撮影所に脚本家として入社する。ペンネームは、デビュー当時の阪神タイガースの二遊間コンビ、白坂長栄と吉田義男に由来するが、特にタイガース・ファンという訳ではなかった。

高校時代から交流があった三島由紀夫作品を原作とした『永すぎた春』(監督田中重雄、1957年)で注目され、1957年(昭和32年)、大映を退社し、各社と契約。『巨人と玩具』(監督増村保造、大映、1958年)、自らも出演した『野獣死すべし』(1959年、東宝、監督須川栄三)、『われらの時代』(監督蔵原惟繕、日活、1959年)と映画会社をまたにかけて、若々しい感性の作品をたてつづけに執筆し、日本映画界の若き才能として活躍する。また、1958年(昭和33年)にはテレビドラマにおいて、同年に完成した東京タワーを指す語をタイトルに、テレビの勃興を脅威に感じる映画界の人々を描く異色作『マンモスタワー』の脚本を執筆し、芸術祭奨励賞を受賞した樋口[2008], p..。

同世代の若き文化人たち、大江健三郎石原慎太郎寺山修司谷川俊太郎武満徹和田誠伊丹十三らと盛んに交流した。増村保造とは名コンビとして、1978年(昭和53年)の『曽根崎心中』まで、多くの作品を作り続けた。大映倒産後には、増村映画のプロデューサーであった藤井浩明、増村とともに独立プロダクション「行動社」を起こした。

私生活ではプレイボーイとしても知られ、女優たちとの赤裸々な交際などを回顧したエッセイ『白坂依志夫の人間万華鏡』を月刊「シナリオ」誌に連載し、大いに話題を呼んだ。のちに別冊『脚本家白坂依志夫の世界 書いた!跳んだ!遊んだ!』としてまとめられた。門下生に石松愛弘桂千穂がいる。中川三郎(1916年 - 2003年)の長女で女優の中川弘子(1936年 - )と結婚したが、のちに離婚した。

2015年(平成27年)1月2日、肺炎のため、東京都内の自宅で死去した。満82歳没。葬儀は近親者のみで行い、喪主は長女の竹宮映子が務め、白坂の死はその4日後の同6日に報じられた。

おもなフィルモグラフィ

白坂が手がけたおもな劇場用映画、テレビ映画の一覧である。

  • 『永すぎた春』 : 監督田中重雄、1957年5月28日公開
  • 『青空娘』: 監督増村保造、1957年10月8日公開 大映東京
  • 『暖流』 : 監督増村保造、1957年12月1日公開
  • 『巨人と玩具』 : 監督増村保造、1958年6月22日公開
  • 『完全な遊戯』 : 監督舛田利雄、1958年11月12日公開
  • 『マンモスタワー』 : 1958年11月16日放映(テレビ映画・東芝日曜劇場)
  • 『からっ風野郎』 : 監督増村保造、1960年3月23日公開 - 途中降板(脚本菊島隆三安藤日出男
  • 『紐』 : 監督石川甫、1960年7月4日・同11日・同18日放映(テレビ映画・ナショナルゴールデン・アワー)
  • 『バカヤロウの風景』 : 1960年8月12日放映(テレビ映画・サンヨーテレビ劇場)
  • 『ドキュメントフィルム日本1960』 : 監督岡本愛彦、1960年11月25日放映(テレビ映画・サンヨーテレビ劇場)
  • 『好色一代男』 : 監督増村保造、1961年3月21日公開
  • 『黒の超特急』 : 監督増村保造、1964年10月31日公開(黒シリーズ) - 増村保造と共同で脚本
  • 『大根と人参』 : 監督渋谷実、1965年1月3日公開
  • 『東京オリンピック』 : 監督市川崑、1965年3月20日公開 - 和田夏十谷川俊太郎・市川崑と共同で脚本
  • 『けものみち』 : 監督須川栄三、1965年9月5日公開 - 須川栄三と共同で脚本
  • 『第50回全国高校野球選手権大会 青春』 : 監督市川崑、1968年9月21日公開 - 井手雅人・谷川俊太郎・伊藤清と共同で脚本
  • 『五人の野武士』第3回『女をつれて地獄へ行け』 : 監督内出好吉、1968年10月22日放映(テレビ映画)
  • 『盲獣』 : 監督増村保造、1969年1月25日公開
  • 『おさな妻』 : 監督臼坂礼次郎、1970年11月12日公開 - 安本莞二と共同で脚本
  • 『木枯し紋次郎』第17話『無縁仏に明日を見た』 : 監督土屋啓之助、1972年5月20日放映(テレビ映画) - 大藪郁子と共同で脚本
  • 『真夜中の警視』 : 1973年4月3日 - 同年5月15日放映(テレビ映画)
  • 『トリプル捜査線』第5話『人気歌手・ギャング団の襲撃』 : 監督井上昭、1973年8月6日放映(テレビ映画)
  • 『野獣死すべし 復讐のメカニック』 : 監督須川栄三、1974年6月15日公開 - 工藤裕弘・須川栄三と共同で脚本
  • 『非情のライセンス』第22話『兇悪の夫婦』 : 監督松島稔、1975年2月27日放映(テレビ映画)
  • 『動脈列島』 : 監督増村保造、1975年9月6日公開 - 増村保造と共同で脚本
  • 『黄金の犬』 : 監督山根成之、1979年6月2日公開 - 加藤盟と共同で脚本
  • 『曽根崎心中』 : 監督増村保造、1978年4月29日公開 - 増村保造と共同で脚本
  • 『愛の嵐の中で』 : 監督小谷承靖、1978年4月29日公開 - 安本莞二と共同で脚本
  • 『皮ジャン反抗族』 : 監督長谷部安春、1978年12月2日公開
  • 『探偵物語』第10話『夜の仮面』 : 監督長谷部安春、1979年11月20日放映(テレビ映画)
  • 『薔薇の標的』 : 監督村川透、1980年4月19日公開

参考資料

  • 『シナリオ』別冊『脚本家白坂依志夫の世界 書いた!跳んだ!遊んだ!』、日本シナリオ作家協会、2008年6月発行
  • 『「月光仮面」を創った男たち』、樋口尚文、平凡社新書、平凡社、2008年9月発行 ISBN 4582854354

関連項目

  • 市川市水木洋子シナリオ賞

外部リンク

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