「君たちはどう生きるか」は子どもが楽しめる映画か?【夏休み企画・映画.comママ&パパ座談会】

2023年7月27日 13:00


何歳なら楽しめる?
何歳なら楽しめる?

宮崎駿監督が手掛けたスタジオジブリの長編アニメーション「君たちはどう生きるか」が7月14日に公開され、約2週間が経ちました。ストーリーやキャストなど作品に関する情報を伏せたまま、宣伝もゼロで公開に踏み切った本作。鑑賞した人たちの感想も二極化しており、映画.com(https://eiga.com/)のユーザーレビューも★3.5(5つ星評価・7月27日現在)と比較的高い評価ではあるものの、絶賛する声がある一方で、「内容がよくわからなかった」「つまらなかった」とコメントしている方も少なくありません。

公式サイトも予告編も存在しないため、お子さんがいる方の中には、子どもを連れて行ける作品なのか気になっている人も多いと思います。そこで、映画.com編集部で子どもがいるメンバーを集めて、「『君たちはどう生きるか』は子どもが楽しめる映画か?」をテーマに座談会を開催してみました。


【作品概要・あらすじ】
 2013年公開の「風立ちぬ」を最後に長編作品から退くことを表明した宮崎駿監督が、引退を事実上撤回して挑んだ長編作品。宮崎監督が原作・脚本も務めたオリジナルストーリー。

第2次世界大戦末期。牧眞人(まき・まひと)は、火事で母ヒサコを亡くす。軍需工場の経営者である父親と母の妹ナツコの再婚が決まり、眞人は父親とともに母の故郷に疎開することになる。母の生家は古いお屋敷で、離れにはアオサギが住み着いている塔があった。眞人は屋敷に仕えるばあやたちから、その塔は母の大叔父が建てたもので、大叔父はある日、塔の中で忽然と姿を消してしまったいう話を聞く。やがて眞人はアオサギによって塔へ導かれ、異世界へと誘われていく。


【目次】
・大人が観ておもしろかった?
・子どもが観て楽しめる映画なのか?
・何歳の子どもなら楽しめる?
・自分の子どもに観せたい?


<参加者>
A子:40代 長女10歳(小5)、次女5歳(年長)
O男:30代 長男4歳(年中)、次男2歳
K男:40代 長女6歳(小1)、長男4歳(年中)
S子:30代 長男13歳(中1)


◆大人が観ておもしろかった?

A子:この映画は評価が二分しているようなので、まずみなさんの率直な感想を聞いていきたいと思います。

O男:初っ端にこんなこと言うのもアレなんですが、鳥が怖かったです(笑)。小学生並みの感想ですみません。

K男:うちの妻も同じです(笑)。子どもが小さいので、交代で観に行ったのですが、妻は鳥恐怖症なので鳥の描写がちょっと怖かったと言っていました(笑)。

O男:鳥が怖いは置いといて、一方でとにかく「すげえ映画」だと思いました! うまいこと感想が出てこないので歯切れが悪く聞こえると思いますが、「すげえ映画」でした。

A子:わかります! 私も観終わった後、「なんかよくわからないけど、すごいものを観たぞ……!」って思いました。すごく胸に響いたんですが、正直、内容を理解できてるとは言い難いっていう。

O男:場面の説明がほとんどなくて、とても暗喩的な物語になっているのでわかりづらいですよね。かつ展開が早いから、世界観を咀嚼する時間が足りない。これが「君たちはどう生きるか」が意味不明と思われやすいメカニズムなのかなと。

S子:宮崎監督作はメッセージ性が強い作品が多いですけど、ここまで難解なものはなかったように思います。

O男:でもこの映画に関しては、物語は特に“理解”する必要はなくて、“感じる”ようなオープンマインドで観られたらすさまじい映画体験になるんだと思いました。宮崎駿監督の思考や人生が観る者の頭と胸に流れ込んでくるんです。

A子:物語を通じて宮崎監督の死生観や人生観が伝わってきましたよね。もちろん今までの作品でも感じましたけど、この映画ではそれをもろに浴びた気がしました。

K男:僕は単純に心を大きく揺さぶられたので、素直におもしろい(映画)と思いましたね。“おもしろい映画体験”と言い換えてもいいかもしれません。もちろん意味がわからないシーンもありましたが、絵の持つ力だけでも圧倒的でしたし、とにかく飽きることなくスクリーンに集中できました。

A子:よくわからない部分はあるけど、スクリーンにクギ付けになってしまう。確かに滅多にない映画体験でしたね。よくわからないとつまらなくなって寝てしまいがちですけど、全く眠くはならなかった。

K男:例えば「トップガン マーヴェリック」のような映画は単純に楽しいし、手に汗握ると思うんです。「君たちはどう生きるか」は「宮崎監督は、どんなことを考えながら作ったのだろう」と作品の背景にも思いを馳せながら観ていました。それでも最後まで飽きずに観られたので、おもしろい映画体験だったなと思います。

O男:とはいえ、観ている間「なんじゃこりゃ?」とも思いましたよね(笑)。凝り固まった大人ではなく、発想が柔軟な子どもが観たらどんな体験になるんだろうっていうのはとても興味があります。


◆子どもが観て楽しめる映画なのか?

A子:では、本題の「子どもが観て楽しめる映画なのか」について話していきましょうか。

S子:私が観た上映回は20代以上のお客さんがほとんどで、子ども連れは数組しかいませんでした。公開初週の日曜の昼間だったんですけど、3~5歳くらいの兄妹を連れたお母さんがいて、遠くから「あの子たち、大丈夫かな?」って勝手に心配していました。

O男:3~5歳の子を連れて行くのは割とチャレンジャーな気がしますね……! 僕は公開初日の午前8時半の回に観賞しました。9割以上の座席が埋まっていましたが、圧倒的に中高年以上が多かったです。大学生くらいのカップルや、ママ友らしき人たちが数人で連れだって来ていましたが、子連れの方は目視した限りでは見当たりませんでしたね。

K男:僕も日曜の昼過ぎの回でしたが、お子さん連れは3~4組で、小学校2~3年生くらいの男の子と女の子を連れた家族がいました。上映中、子どもたちが何度か小さな声で親に質問していたんですけど、総じて大人しく映画を観ていました。寝ている様子もなかったです。

A子:私も最初は小5の娘と観に行こうと思っていたんです。でも「もののけ姫」や「風の谷のナウシカ」はまだ怖くて観られないのでどうしようかなと……。とにかく情報がないので、公開初日に観た同僚にヒアリングしたら、「小学生だと少し難しいかも。ただ、過去の宮崎駿作品を観ていて、好きな子なら観れちゃうと思います」っていう回答。結局、一人で観に行きました。

S子:私も中1の息子を誘ってみたんですけど、もう映画自体、母親とは観に行きたくないみたいで、興味ないって断られてしまいました……。

A子:思春期到来ですね……。でもうちの娘も「一緒に観に行く?」って聞いたら、「うーん、おもしろいなら行こうかな」みたいな反応でした。CMとか宣伝がないと情報に触れる機会がないから、子どもは関心の持ちようがないのかもしれませんね。

S子:親が主導となって映画館に連れていく以外、観るきっかけがないですよね。でも、情報がない状態で子どもを連れていくのはハードルが高い。

O男:確かに、事前情報がないと、連れて行って子どもにとってトラウマを与えるような内容だったらどうしよう、って思いますよね。でもこれって、情報網が発達した今だからこその感覚というか。僕らの親世代はそこまで気にしていなかったと思うんですよね。

A子:昔はスマホなんてないし、テレビも一家に1台しかなかったから、家族みんなで同じものを観るしかなかったですもんね。振り返れば、自分が子どもだった頃は、親の趣味にあわせて映画を観ていました。「インディ・ジョーンズ」とか「グーニーズ」とか「エイリアン」とか……、軽くトラウマになったりした作品もあるんですけど、“怖いけどおもしろかった”っていうイメージの方が強くて。こうやって映画の仕事に就いているってことは、ポジティブな影響の方が大きかったってことですし。

O男:映画が好きで映画を仕事にしている人って、だいたい「子どもの頃に観ちゃった映画がトラウマになって……」というエピソード持ってますよね(笑)。

S子:今の時代は情報が多すぎて、慎重になりすぎてしまっている部分もあるのかもしれませんね。


◆何歳の子どもなら楽しめる?

A子:実際、「君たちはどう生きるか」は何歳くらいの子なら楽しめると思いますか?

K男:僕は小学校3~4年生くらいであれば、最後まで観られると思いました。「崖の上のポニョ」のような単純明快なわかりやすさはないけれど、「何か不思議なものを観た」っていう感じで楽しめる子はいるんじゃないかな。

アニメの楽しさの1つに、至極当たり前ではあるのですが、「絵が動く」っていうのがあると思うんですね。僕はそういう意味で、宮崎監督の世界で生み出された多種多彩なキャラクターが思い思いに動きまくってるのを観られただけでも楽しくって。子どもにもそれは通じるんじゃないかなって思いました。

O男:僕は4歳と2歳の男の子の親としての考えなんですけど、未就学児って普段は比較的ゆるふわなコンテンツを観るわけですよね。絵本とか教育番組と比べるとジブリ作品は刺激があって、それが子どもたちにとっては心地良いみたいなんです。

息子たちは「となりのトトロ」と「天空の城ラピュタ」を呆れるほど繰り返し観てるんですよ。もちろんアニメーションの楽しさから作品世界に入っているんですが、まだ幼いけど物語もかなりのレベルで理解していて、4歳が「サツキちゃん、メイちゃんが見つかってホッとしたね」とか言う。これはすごいなと。

A子:まだストーリーが追えないくらい小さな子って、アニメ映画を観せても途中で飽きちゃうことが多いと思うんですけど、うちの娘たちも「となりのトトロ」や「崖の上のポニョ」は2歳くらいから大好きで飽きずに最後まで観ていました。

O男:「脳を発達させることは『脳に刺激を空気入れのポンプみたいに与え続ける』ことをイメージするといい」と幼児と脳科学に関する本に書かれていて。未就学児にとってジブリ作品は心地いい脳の刺激になるようなので、観せることで脳の発達も促せる、と僕は思っています。ジブリ作品は脳に良い。

K男:子どもって大人が思っている以上に、ちゃんと伝わってる部分があって。実はうちの6歳と4歳の子どもたちも、7月21日放送の「金曜ロードショー」で「もののけ姫」を初めて観て、それをきっかけに「『もののけ姫』もう一度観たい」と言ってここのところBlu-rayで毎日繰り返し観ています。

A子:「もののけ姫」を! 小5の娘は開始数分で怖いって言ってギブアップしました(笑)。幼いほうが楽しめるっていうはあるかもしれないですね。

S子:「君たちはどう生きるか」は太平洋戦争末期が舞台で、冒頭は戦争の色が濃いですけど、「もののけ姫」に比べたら、「君たちはどう生きるか」は子どもが観て怖い映画ではありませんよね。

O男:「鳥が怖い」とか言いまくっていたので、“怖い映画”みたいなイメージになってきていますが、別に物語やアニメーション自体は怖くはない。ただ、物語の背景に“死”があり、死の匂いが濃密に漂っているので、作品全体のムードが怖い。これが映画館という密閉空間と合わさった時に相乗効果を生むわけですよね。

で、個人的な意見ですけど、この映画を映画館で観るのは、未就学児にはあんまりオススメできないかなと。映画館の暗くて密閉された空間で観ると、作品のムードと、音の大きさも相まって小さい子どもは不安だし怖くなりやすいと思う。これは刺激ではなく恐怖心を与えるだけなので、必然性がなければ避けたほうがいいんじゃないかと1人の親としては思います。一方で、自宅など明るいところで未就学児が観る分には不安感は和らぐから観られると思います。

K男:うちの子も映画館の暗闇と大音量を怖がるので、映画館に行く時は、耳栓を使って音のボリュームを下げることがあります。ただ、O男くんが言ったように、自宅などでいろいろと調整できる環境であれば、怖いシーンは飛ばしたり、逆に好きなシーンは何度も観たりできるので、大いに楽しんでくれそうな気がします。それこそ鳥が話しているだけでも子どもはおもしろいかもしれない。それこそインコの大群のシーンは、大人の方が怖いと思うかもしれませんよね(笑)。

A子:おばあちゃん軍団や、“わらわら”みたいに子どもが喜ぶキャラクターも出てきますしね。子どもの記憶に残るのって、おもしろかったシーンや気に入ったキャラクターだったりしますよね。

K男:ネットの書き込みを読んでいても「意味が分からなかった=つまらなかった」という論調で語っている方をちらほら見かけたのですが、どうしてそんなにみんな正解を求めてるんだって思いますね。「なんだかよく分からないシーンもあったけど、なんだかすごいものを観た」という体験だっていいし、「あのシーンは、こういうことかな?」って人それぞれの捉え方があっていいわけで。

A子:わかりやすいものを求める時代なんですかね……。今は映画やドラマを「倍速視聴」で観る人も多いみたいですし。でも、この映画は倍速視聴だと完全においてけぼりですよね。Wikipediaに詳しいストーリーも載っていますけど、この作品はあらすじを読むだけじゃ伝わらない。


◆自分の子どもに観せたい?

A子:では、最後に皆さん、自分のお子さんに「君たちはどう生きるか」は積極的に観せたいですか?

K男:自宅で観られるようになったら、ぜひ観せてあげたいと思います! まだ幼いから、あと4年くらい経って、下の子が小3、上の子が小5くらいの頃かな。

O男:僕はさっきの発言と矛盾して聞こえるかもしれませんが、「子どもが映画館で観たがったら、観せてもいい」とは思っているんです。子どもが観たいと言ったらそれは必然性だと。映画館で観て怖かったら出てくればいい。映画は自由なんだから、そういう映画体験があってもいい。だから予告編が見られるようになったら、「これ観たい?」と聞いてみます。

A子: 「お兄ちゃんが行くなら自分も観たい!」と2歳の弟さんが言ったら、映画館に連れていきます?

O男:2歳も「観たい」となったら連れていきます! ただ、途中で出ないといけない可能性が高いので、出口に近い端っこの席をとります(笑)。

S子:子連れの途中退席は“あるある”ですね(笑)。

K男:あるあるですねぇ。うちは「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」ですら、下の子がクッパのシーンを怖がって、トイレに3回位逃げました(笑)。

O男:うちは、子どもの意思を優先して、やらせてみて嫌がったりダメだったりしたらやめればいいというぼんやりした方針です。あとちょっと思ったのは、映画館のいいところって、命の危険が皆無なレジャーである、ということですね。

A子:映画館は最も安全な夏のレジャー!

O男:子どもの事故のニュースに心を痛めているので、子どもたちにいろんなことをさせてあげたいと思いつつ、安全は守りたいとも思うんですよね。うちはこの夏は外では慎重に遊びつつ、映画館も安心して楽しむというのでいこうと思います!

K男:映画の仕事をしてる身としては、子どもにも映画の楽しさを知ってほしいけど、小さいうちはどうしたって難しい場面もありますもんね。まずは家で歴代のジブリ作品を楽しんでもらって、来るべき「君たちはどう生きるか」鑑賞に備えるのも良いかもしれません。

S子:私も大切なメッセージが内包されているので、いつかは子どもに見せたいですね。でも、基本的には本人の意思に任せたいかな。個人的には、中学生以上に推奨します。

A子:何年後になるかわからないですが、「金曜ロードショー」の初放送はものすごい数字をたたき出しそうですね。今日はありがとうございました!

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