ノンフィクションは「痛み伝える一番の方法」 「ホテル・ルワンダ」監督が虐殺の歴史描く理由
2017年11月23日 10:00
[映画.com ニュース] 「ホテル・ルワンダ」(2004)のテリー・ジョージ監督が、新作「THE PROMISE 君への誓い」でオスマン帝国によるアルメリア人大量虐殺を描いている。ジョージ監督はなぜ、“虐殺の歴史”を題材に選ぶのだろうか。自身の信念を交え、その理由を明かした。
ナチス・ドイツによるホロコーストの約20年前、約150万人が犠牲になった知られざる悲劇があった。映画は、20世紀始めにオスマン帝国(現在のトルコ共和国)が行ったアルメニア人大量虐殺事件をベースに、負の歴史にさらされた3人の男女が繰り広げるヒューマンラブストーリー。トルコ政府が虐殺を認めていないことから、表立って取り沙汰されることが少ないテーマに、ジョージ監督が挑んでいる。
ジョージ監督による「ホテル・ルワンダ」は、ルワンダ虐殺の真っただ中で命を救うため尽力したホテルマンの実話を描き、日本では劇場公開を求める署名活動にまで発展した。繰り返されてはいけない現実の悲劇に焦点を当てる理由を、ジョージ監督は「ノンフィクションや史実をもとにしたドラマが、映画界でも最もパワフルなジャンルだと信じているんです」と語る。
デビッド・リーン監督作「アラビアのロレンス」や、スティーブン・スピルバーグ監督作「シンドラーのリスト」、ウォーレン・ベイティ監督作「レッズ」、コスタ=ガブラス監督作「ミッシング(1982)」を引き合いに、「優れたノンフィクション映画が作られることで、ホロコーストやチリ・クーデターやロシア革命のような歴史的出来事を人々に知らしめることが出来ました」とも述べる。続けて「私は自分のキャリアを、そんなパワフルさを感じるジャンルに捧げたい」と信念を明かし、「そのまま映像化しても実際のドキュメンタリーやニュース映像のような凄まじさは伝えることはできないが、映像に映っていないことを暗示して観客へ想像してもらうこと。これが私にとって人々の恐怖や痛み、喪失感を伝える一番の方法だと思うのです」と矜持をにじませた。
物語は、オスマン帝国の村に生まれ育ったアルメニア人医学生ミカエルが、アルメニア人女性アナとその恋人であるアメリカ人記者クリスと出会うところから始まる。次第にひかれ合うミカエルとアナだったが、第1次世界大戦とともにアルメニア人への弾圧が強まり、ミカエルは故郷で虐殺の現実を知る。一方のクリスとアナは、オスマン帝国の実情を世界に伝えようと奔走。3人は、複雑な愛を抱えながらも激動の時代を生き抜いていく。
キャストにはオスカー・アイザック(ミカエル役)、シャルロット・ルボン(アナ役)、クリスチャン・ベール(クリス役)のほか、ジェームズ・クロムウェル、ジャン・レノら豪華な面々が結集。7点の場面写真も披露されており、運命に翻ろうされた3人の男女が、それでも愛と正義を貫き懸命に生きる姿を切り取っている。
「THE PROMISE 君への誓い」は、2018年2月3日から東京・新宿バルト9ほか全国で公開。なお1月下旬には、ジョージ監督の来日も予定されている。
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