社会派ローラン・カンテ監督、パルムドールは「人生最大の喜びの瞬間」

2010年6月11日 15:28


カンヌの審査員たちも絶賛
カンヌの審査員たちも絶賛

[映画.com ニュース] 演技経験のない24人の子どもたちのリアルな芝居が注目を集め、第61回カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した「パリ20区、僕たちのクラス」がいよいよ公開となる。初来日を果たしたローラン・カンテ監督は、「これまで日本で作品を買ってもらったことがないんだ。労働者を描いた『タイム・アウト』のとき、日本のジャーナリストには『日本では労働に苦しんでいる人が多いから、大ウケするよ』と言われたんだけど、結局実現しなかったからね」と話した。

同作は、移民や問題児の多い中学校を舞台に、生い立ちも出身国もさまざまな24人の生徒とひとりの国語教師が傷つき反発し合いながらも信頼を深めていく姿を通し、フランスの教育現場をリアルに描いた意欲作。

 「ヒューマンリソース」(99)、「タイム・アウト」(01)など、骨太な社会派作品で知られるカンテ監督は「ずっと学校についての映画を撮りたいと思っていた。学校とは、人が初めて社会とつながる場所であり、初めて家族以外の人間関係を築く場所なんだ。社会の小宇宙“ミクロコスモ”のような、世界の縮図のようなものを僕はずっと描き続けている。だから僕のことを社会派監督と考えてもらって構わないよ」と意識の高さをにじませた。

ドキュメンタリーと錯覚するような素の芝居が話題を集めたが、「僕がキャストを選んだわけじゃなくて、興味本位で集まった子どもたちの中からワークショップに残ると決めた24人が、そのまま主人公になっているんだ。僕は即興演技のワークショップで彼らのクセや話し方を観察して、それをそのまま脚本に活かした。映画を撮るときはいつも疑問や不安でいっぱいだけど、彼らが素晴らしいキャラクターになるという確信だけは最初からあったんだ」と手応えを感じていたようだ。

また、パルムドールの受賞は大きなサプライズだったといい「もちろん、人生最大の喜びの瞬間だったよ! 全ての生徒と教師、それぞれがこの1年越しの企画に自分を投資して完成させた映画だからね。それに、現代フランスを体現してカンヌのステージに立つということは、子どもたちにとって非常に重要な経験になったと思うんだ」

パリ20区、僕たちのクラス」は東京テアトル配給で、6月12日から全国で公開。

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