市子のレビュー・感想・評価
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女性に対する期待が巨大な社会派風B級サスペンス
映画冒頭、主人公長谷川と市子が仲睦まじい同棲生活を送る様が描かれるのだが、この時点で先行きに大きな不安を覚えた。
出てくるセリフの一つ一つがなんというか、非常に芝居がかってかつありきたりなのだ。
「給料日前でしょ」とか、大袈裟に「美味い!美味いよ!」とか、日常の生活の一コマ風なんだけど、とても三年も同棲しているカップルの自然な会話って感じがしない、出会って3日目とかならわかるが。
しかしまあそれは掴みに失敗しているだけで、この先挽回のチャンスもあるはずと思い直して鑑賞を継続したのだが……。
そこから続く刑事とのやりとりも不自然だし子役の演技も不自然。失踪した同棲相手の相談に乗る刑事があんな風に「この女の人は、存在しないのです」みたいなこといいます?子供時代の市子を揶揄う男子たちとのやりとりとかも、目を覆いたくなるようでした。以下全般的に演技とセリフは酷かったので(市子が雨に打たれながら「全部洗い流して!」とか言うシーンが個人的に最悪でした)もう言及しません。
で、まあ詰まる話が市子は無戸籍状態で、筋ジストロフィー障害の難病で寝たきりの妹月子になり代わり、月子の社会身分に背乗りして通学や保険医療などを受けて生きてきましたという話が明かされ、更には内縁の父親からの性暴力、妹の介護疲れから人工呼吸器を外して殺してしまうなど、不幸で可哀想な市子ちゃんの過去が明かされて行くのですが、それでヒロインの市子がどんな風にそれを捉えて生きてきたのかが、正直スクリーンか全然伝わってこないんですよね。作り手側の「こんな可哀想な女の子って可愛いよね!」という、アニメ美少女を愛でるような目線は嫌と言うほど伝わってくるのですが。自分の境遇を恨むでもなく、他人を羨むでも嫉妬するでもなく。唐突にケーキ屋さんを目指す夢を語ってみたり、それも適当に投げ出してみたり。
1人の人間としてこの人は何がしたくて何を考えているの?というのが全くわからない。ただ顔が可愛い人、それだけ。あまりにも偶像化された女性像。
まあそんな批判が来るのは監督も承知の上だったようで、登場人物の1人に「市子に一方的に惚れて俺が守るとか言って勘違いしてる痛いオタクくん」を出して、そいつをピエロにすることで「俺はわかってるよ?」というエクスキューズをしたかったみたいなのですが、でも正直オタクくんが「俺が市子を守るよ!」とか言ってるのと、主人公が「市子を守りたい!」とか言ってるのの差が全然わかりませんでした。だってこの映画全体が明らかに可哀想な可愛い女の子は萌え萌えっていう要素に満ち溢れてますもんね。変なオタクくん出して市子に殺させてもいいわけ効かないですよ。
無戸籍子とかDVとか貧困とか難病とかまあいろんな社会派風の要素は盛り込んでますけど、正直どれにも作り手側が大した興味を持ってるとは思えませんね、ディテール薄いもん。可哀想な市子ちゃんを彩る要素としてしか機能してない。
進行性筋ジストロフィーで在宅で人工呼吸器つけて介護受けてる月子ちゃんとか、明らかに要支援で訪問看護の対象ですよね、殺した後看護士にどうやって誤魔化したの?とかね。
あとあれが酷かった、インターネット上で自殺志願の女性を呼び出して殺して身分証を掻っ払うくだり。
その登場人物の背景とか一切描かず、ただ顔に痣があるのを見せればみなさん説明なんて不要でしょうと言わんばかりの傲慢さ。
「こんな痣があるんだから自殺したくなって当然だし、自殺したいと言う気持ちは気の迷いではない」っていいたいんですか?控えめに言って最悪の考えだと思います。
でそんな風にデリバリーされてきたご都合主義的自殺志願者を車ごと海に直送(直葬)し、というかオタクくんに殺させて、なぜかオタクくんも一緒に死んで(←?)、自分の都合のために何の罪もない人間2人も平気で殺すサイコパスに変貌を遂げた市子を描写することで、もしかしたら監督は「アニメ美少女的なお人形」性を否定したつもりかもしれませんけど、ますます現実離れしてお人形のようにしか感じられないだけなのでそれは壮大な勘違いなのですが、とまれその後ですよ、信じられないことになんかセピア調の回想とともに市子ちゃんが本当に主人公のことを愛していたみたいなモノローグが繰り広げられるわけですよ、激エモですよね。
美少女市子ちゃんがニコンのカメラを取り出して撮影と同時にそのフレームが大写しになってスクリーン全体が写真に変わる演出を見た時は「ギャグでやってんのか?」と思いました。今時やらねーだろあれ。
つーか罪もない人間2人もぶっ殺した直後に淡い初恋モノローグみたいなの入れられてもキモいんですけど、作った人疑問に思わなかったんですかね。
そしてそのまま主人公と再会するでもなく、警察に逮捕されるでもなく、市子が鼻歌歌いながらふらふら歩くカットで映画は終わります。
バカにするのもいい加減にしろとしか言いようがないですよこんなの。エンドロールが終わった後本当に自然に「クソだな」って口から出ちゃいました。
まあでも、主演の杉咲花さんはアニメの女の子みたいで可愛かったので、その点は評価します。あとはクソでした。
総評としては、監督はエヴァンゲリオンの綾波レイが好きなんじゃないかなぁ、と思いました。あとはもうこの映画のことは忘れようと思ったので感想を書くことにしました。おしまい。
期待度○鑑賞後の満足度○ ストーリーテリングも上手い、演出も悪くない、俳優陣も殆どが好演、でもヒロインに感情移入できない。主人公可哀想でしょ、だから仕方ないでしょ、という映画は余り好きではないので…
①宮部みゆきの『火車』を彷彿とさせる物語だが、あの小説の犯人に共感できなかったのと同じく、本作のヒロインにも共感は出来なかった。
②ヒロインは確かに過酷な境遇に生まれ育ったわけだが、それが筋ジストロフィーの妹を見殺しにして死体を埋めさせたり、妹の死体を埋めてくれた母親の愛人を死なせて自殺に見せかけたりしたことへの免罪符にはならない。
③主人公をトコトン過酷な状況において、それで何かを描き出したい、観ている者の心の中に何かを産み出したい、という程の映画的創造性は感じなかったし、無戸籍という社会問題に焦点を当てる社会性にも乏しい(妹が筋ジストロフィーだという設定同様、ヒロインの境遇の過酷さを御膳立てするピースに過ぎない感じ)。
無戸籍という隠れた社会問題に目を開かせてくれた点は自分的には意義があったけど。
④中村ゆりが珍しく汚れ役。やさぐれ感はなかなか良かったが、あんなに大きな娘を持つには少し若すぎるのと、一番の元凶は貴女でしょ(男運が悪かったにせよ)という非難が霞むくらいの人間としての悲しさ・どうしようもなさ、を表現しきれていない。
⑤まあ、結局私のこれまでの人生はそこそこだったので、他人の不幸には鈍いのかな、ということも微かには自認しております。
ちょっとホラーっぽい
なんだか時系列をわかりにくくしてね。最初だけミステリーもの。
途中で刑事が説明してくれます。結構早めの説明!どう引っ張るのと不安。
でも皆さんの素晴らしい演技のおかげで楽しく観ることはできました。
長谷川君はお母さんの話を聞いていきなり泣いていたんだけど、違和感。
観客は映像で市子の半生を鮮明に観ているから、泣けるんだけど、君は透視できるエスパーか。
そういえば、監督はタイトルを「市子」にしたらホラーと間違われちゃうなんて心配をしていました。
自殺願望の女を仲介なんてさぁ。ある意味ホラーだよ。
ファムファタール的な要素も相まって、翻弄されていく皆さん。
北君はあの執着だと絶対幽霊になっちゃいますね。
東大阪の団地はその時代の私とリンクしてたので、結構リアリティある。
監督もこだわったに違いない(たぶん)。
引き込まれるような映画でとても面白かった。ただ最後の車で遺体が発見...
引き込まれるような映画でとても面白かった。ただ最後の車で遺体が発見されたシーンは市子が戸籍を得るために2人を殺したのか、北くんは単に邪魔だから殺されたのか、そしたら市子はただの殺人鬼では?と疑問が生じ、その真相がわからないまま映画は終わったので、本当はどうあったのか気になった。
ただの
殺人鬼(と書くと少し表現が強すぎますが、実際は4人も・・・。客観的に書けばこうなりますよね)の話だった。
ところが、演者の力により、それだけではなくなっている(というか、殺人を犯したことが悪いことでもないように見える)のがすごい。高校生役の杉咲花さんは高校生にしか見えなかった。
予告を見て、市子は既に死んでいて、ほんとは実態のない幽霊の話かと思っていた。うまくミスリードされてしまっていた。
最初のできごとの後、「市子、ありがとうね」と言う母親の言葉が重い。
不遇な主人公に寄り添おうとすると裏切られ、暗澹たる気持ちになる
過去に市子と関わってきた人々の一人ひとりに焦点を当てながら、「この世に存在しない」市子の人生を浮かび上がらせていく前半は、山中で発見された白骨死体とどう結び付くのかという興味とともに、グイグイと物語に引き込まれる。
ただし、中盤以降に、市子に戸籍がなく、発見された死体が彼女の難病の妹だということが判明し、市子の恋人が失踪した市子を捜す話が主体になってからも、現在と過去との行ったり来たりが続くため、話の分かりにくさと冗長さ、テンポの悪さが気になってしまった。
過去の話は、極力時系列に沿って描きながら、市子の正体等の真相の解明は、なるべくラストに持っていき、そこから、市子の恋人が彼女の母親に会うまでのクライマックスを一気に描くといったような構成にできなかったものかと、少し残念に思ってしまった。
市子が失踪した理由にしても、恋人にプロポーズされたからなのか、白骨死体が発見されたからなのかがよく分からない。
単純に考えれば、戸籍がないので婚姻届を提出することができないからだろうし、身元がバレて警察に捕まりたくないからかもしれない。
だが、もしプロポーズが原因ならば、「既に2人の人間を殺めている自分には、幸せになる権利はない」と、自責の念に駆られたからだと考えることも可能だろう。
もしそうならば、ようやく愛し合える人と出逢い、その人と一緒に暮らす幸せを手に入れたのだから、正直に罪を告白し、その罪を償った上で、また愛する人と暮らせばよいのではないだろうか?
ところが、終盤、市子が、新たに2人の人間を自殺に見せかけて殺害するに及んで、彼女に対するそうした同情や共感は、根底から崩れ去ることになる。
自らの殺人の証人を消すために更なる殺人を重ねる市子の姿は、単に警察に捕まらないよう逃れているだけの狡猾な連続殺人犯にしか見えないのである。
そのため、せっかく、不遇な生い立ちの主人公に寄り添い、彼女が幸せになるよう応援する気になっていたのに、なんだか裏切られたように感じてしまった。
結局、市子と恋人が再会することはなく、何の希望も見いだせないエンディングには、釈然としない後味の悪さが残った。
つかめない幸せ…。
市子と月子の話。
3年同棲した彼氏、長谷川義則からプロポーズをされた市子、プロポーズをオッケーするも翌日に失踪してしまった市子と失踪した市子を探す長谷川義則のストーリー。
作品観ての感想は悲しい、切ないでしょうか。子供は親を選べないけど、作品とはいえ悲しい家庭環境でした。
長谷川義則と幸せを掴めそうな市子だったけど、過去の事もあり長谷川の前から姿を消してしまった市子だったけど悲しいね!って言葉しか浮かびません。
ちょっと男にダラシナイお母さん役の中村ゆりさん何か色気ハンパなくて良かったな~
杉咲花の好演ぶりが光ってた
プロポーズされた翌日に失踪した市子。
その理由が彼女を知る人々との対話から少しずつ明らかにされるミステリー仕立ての作品。
どのような背景や過去があっても必死に生き抜こうとする市子の逞しさを感じたし、
朝ドラ同様、関西弁で演じる杉咲花の好演ぶりに好感が持てた。
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