劇場公開日 2023年6月30日

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「トークショー・パンフレットがとにかく不親切すぎる…。」縁の下のイミグレ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0トークショー・パンフレットがとにかく不親切すぎる…。

2023年7月18日
PCから投稿

今年246本目(合計897本目/今月(2023年7月度)32本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))。

 さて、本格的な行政書士枠といったところです(詳細後述)。

 内容としては、日本を支えている技能実習生とその背景を描く映画であり、かなり正確に作られています。内容として多くの方に見ていただければ、と思います。
ミニシアターばかりなのが残念ですが…。

 ただ、この映画には致命的な欠点があり、それがどうしたものかなぁ…といったところです。
さっそく採点入りましょう。

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 (減点0.8) 行政書士が何をする仕事なのかわからない

 ・ 「官公庁に提出する書類の作成やその代行…」自体は正しいものの(行政書士法)、それだけ述べてもピンとくる方はかなり少ないのでは、と思います。例示としてあげられる「風俗営業」に関しても確かに行政書士の管轄にはなりましょうが、その細かいことを述べても(ちなみに、映画館も風俗営業法の適用を受けます。特別な事情等ない限り、オールナイト放映ができないのは、このため)、その一般的な語句としての「風俗」と、実際に行政書士を持っている私たちのそれがまるで違うため、この辺はかなりわかりづらいかなといったところです。

 この点、監督の方のみならず、映画の作者の一人である行政書士の方も一緒にトークショーに来られればよかったのに、といったところです。実際、トークショーが棒読み状態に近く、その中で「行政書士」という語句が出てもその説明がないので(一般人には)説明がつかず、技能実習生の論点自体は理解できても、ではその間を結ぶ「行政書士」とは何なのかという説明が不足しすぎていて(ちなみに、パンフレット(900円、有料)を買っても載っていない)、しかも監督さんが関東在住?なのか、関西圏では複数の映画館をはしごで舞台挨拶されたため、当方がみたときには「事前挨拶」の扱いで、ここがああだのこうだのということを聞くことができず(まぁ、私は調べればわかりますが、みんながみんな行政書士の資格持ちというのは想定できない)、その点でも不親切極まりない、といったところです。
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 (減点なし/参考/行政書士と「イミグレーション・ロイヤー」)

 そもそも、行政書士、司法書士といった複数の資格に分岐しているのは日本と日本の影響を受けた韓国、台湾(便宜上の国扱い、以下同じ)程度で、海外にはそもそも弁護士しか資格がないところも多いです。

 その中で、海外からいわゆる「ジャパニーズ・ドリーム」を目指して適法な在住ピザ、同労ピザ等を取ろうと考えたとき、通常、不動産の登記がどうとか(民法177条/司法書士)、あるいはいきなり訴訟を考える(弁護士。訴額に制限があるが、司法書士でも可能)ということはありえず、普通は「どうやったらビザが取れますか?」ということになりますので、「その意味」において、「海外目線」からすると、最初にコンタクトを取るのは行政書士になるのが普通で、「この意味で」海外では行政書士は「イミグレーション・ロイヤー(Immigration lawyer, 移民弁護士、法律家、等)」と呼ばれます。このことは特に、この映画で描かれる、ジャパニーズドリームを描く人が多い東南アジアでは顕著です(この映画でも描かれている通り)。

 ただ「広いようで実は狭い」その領域に限って言えば確かにその議論は成り立ちますし、実際に最初のコンタクトや手続きを行政書士が行っているのも事実です。しかし、技能実習生の立場は弱く、給与未払い等の事案が発生しても、行政書士には基本的に何もできません(行政書士には裁判の弁護士として補助的に立つ資格すらない(が、それらの法律はなぜか熟知を求められる))。一方で、国民や、これから日本に来る彼ら彼女らに、行政書士法や司法書士法ほかを熟読して「適切な場所に行きましょう」というのは無理があり、「最初に仲介してくれたのだから」ということで、本来行政書士の範疇を超える案件を持ってくる場合もあります(この映画の描写もそう)。この点は、「適切な対象につなぐ限り、そこで話を聞く限りでは問題なし」の扱いで(実際、全員が全員、行政書士法等を理解しているのではない、という問題があるため)、「そのあと、話を聞いて、適切な場所につなぐ限りにおいて行政書士がまず一次的に受け持つことが多い」も確かで、それが法に触れるかは微妙なところ、実際問題、海外からくる彼ら彼女らにそうした士業法の縛り(誰が何をできるか)を把握させるのは無理であるため、実際、映画内で描かれていること(未払い問題を持ってくる等。本来は弁護士事案)は存在します。

 ただ、「海外目線」で見ると、日本という国にやってくるためにはまず「ビザをとらなきゃいけない」という事情があるため、「その意味において」、行政書士が「イミグレーション・ロイヤー」(移民弁護士)等と呼ばれるのはこれは紛れもない事実である一方、それは「広いようで狭い領域」にすぎず、たとえば外国人問題は多くの領域が行政書士の範疇であるところ、多くの適法に在住する外国人の人権擁護、手続きや、難問問題などの扱い(クルド人問題等)とバラバラで、一口に「外国人に関すること」でも、行政書士の範疇の扱い範囲は極めてバラバラです。

 ※ 法律的な観点でいえば、「最強資格」はどう見ても弁護士ですが、特に海外からの移民問題ほかを扱う領域では、英語以外の言語(特に、タイ語やカタログ後ほか、マイナーな言語)では、法律系資格持ちという前提は当然として、実際に、「弁護士が最強資格」だとしても参入してくることがまずないため(英語、中国語、スペイン語以外のマイナーな言語をまず学習して使いこなせないと業務自体ができない)、「この意味において」行政書士が事実上の独占業務ということは言えます。

 こういったことの説明が何もないため、かなりわかりにくい(特に、行政書士が何をする資格の人なのか?は、この映画を見ても一見して理解しがたい)点はあげることが可能です。

yukispica