劇場公開日 2023年8月25日

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「ひと夏の経験は永遠に」ファルコン・レイク ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ひと夏の経験は永遠に

2023年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

萌える

最終盤までは「ひと夏の経験」の王道を行くもの。

数年振りに逢った、母の友人の娘は美しく成長。
僅かに二歳の年齢差ではあるものの、
十代後半のこの違いは大きい。

主人公の『バスティアン(ジョゼフ・アンジェル)』は
年上の『クロエ(サラ・モンプチ)』を改めて意識し、
仄かな恋心を抱く。

一方の彼女はと言えば、少々ツンデレ。
彼に気のあるそぶりを見せたかと思えば、
地元の男の子たちとも交流する。

そんな『クロエ』を見れば
『バスティアン』の心は千々に乱れ、
思わず見栄を張ってしまうのは、
同性であれば理解もできること。

とは言え、彼女にしてみれば、
許容を越えているわけで・・・・。

二人の交流は
時に無邪気、ある時はエロチック。

当初は姉弟のような関係だったものが、
次第に大人びたものに熟成する。

それは見ていて微笑ましくもあり、
まだるっこしくもあり。

いや、年頃の男子なら
誰もが夢想するエピソードの数々ではある。

が、そこに、不協和音のように挟み込まれる「死」のイメージ。

タイトルにもなっている湖に「幽霊」が出るとの噂は、
実は『クロエ』の中でのみ完結しており、
ニュースにもなってはいないし、他の誰もが知ってはいない。

二人は「幽霊」をモチーフに動画を撮り楽しむが、
それは怯えへの裏返しであるよう。

こびりつき、剥がれることはない。

舞台はカナダのケベック州の美しい湖と
湖畔のコテージ。

周囲には自然が息づき、
鳥や獣の声、風雨の音がBGMのように画面を織りなす。

自身の理解者として、彼に傍に居て欲しい『クロエ』と
それを望む『バスティアン』。

最後のシークエンスは、
まさにその捻じれた体現なのだが。

長編とはいえ、100分ほどの尺で描かれるのは
パリからやって来た一家と、地元に住まう一家の真夏のバカンス。

似たようなシチュエーションや経験は、
おそらく誰しもが持っているであろう、
ただ、ほとんどは一過性のもの。

本作ではそれが
永遠になった一つの結実が、悲しい過程を経て語られる。

ジュン一