劇場公開日 2023年4月14日

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「抽象的でめちゃむずい作品 深読みしてもまだわからない」サイド バイ サイド 隣にいる人 R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5抽象的でめちゃむずい作品 深読みしてもまだわからない

2024年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

難しい

ミヤマに起きた過去は彼とリコによって語られるが、それをつなぎ合わせてもリコとの関係は見えてこない。
ミヤマは逃げた。誤ってエスカレーターを踏み外したリコを置き去りにした。それとも故意だったのか?
この作品の人間関係はかなりトリッキーだ。そしてゆっくり紐解かれるが全部は見せないのでわかりにくく、物語の根幹にある人の心とその核となる問題点がつかみにくい。
問題は過去なのかそれとも現在なのか?
霊能者である主人公ミヤマという設定も、物語そのものと関連性が薄く感じられ、まるでミスリードのようだ。
彼は上高地(明確化されてはいない)付近に1年前に引っ越してきた。理由はシオリと恋人関係になったからだ。
彼女には離婚歴があり娘美々と暮らしている。
ミヤマの能力は人に頼られることも多い。しかしこの設定もややこしい。美々にも霊能力があり、ミヤマに見えるものは美々にも見えるようだ。美々はあるバンドの人間がいつもいると話したことで生霊の正体がクサカだとわかる。
クサカは大好きな先輩であるミヤマと再会したいと強く願っていた。
しかしそれは怨念で、クサカはミヤマが放り捨てたリコをかくまうように愛し続けていたが、リコの心にはミヤマが根付くように棲みついており、リコは決して自分を愛してくれないことを理解したと思われる。クサカは毎日そのことに悩んでいた。最初は尊敬していた先輩を、恨み始めたのだろう。それが生霊の正体だ。
物語の前半に多く流れる不協和音のような音楽と気味悪いほどある「間」。シーンとシーンの間に流れるのは、どこにいても念は消えないということだろうか。
クサカは言う「オレはアンタが中途半端にしたものを、ずっと保管してやったんだ」
抜け殻のように一言も話さないリコを連れ、ミヤマは上高地へと戻ってくると、彼の自宅に居候させる。
光と影の対比。ミヤマの服は白に対しリコの服は全身黒。家の中ではどこにいるのかわからないほどだ。
無言の二人と長い「間」。突然墨絵の具の入ったボウルを蹴り飛ばすリコ。光を消すように流れる黒い影。
「虫が入るから閉めないと」作中2回も使われたセリフは何を意味するのか? 虫とは光のことかもしれない。一番光を必要とする人が光を嫌うのだ。
「変だよ、こんなの」 シオリの言葉 そうして彼ら4人が一緒に暮らすことになる。
看護士のシオリはすぐにリコの妊娠を察知、しかしそれはミヤマの子ではない。なんとも不思議な関係の4人での暮らしだが、徐々にリコの心が明るくなっていく。服装に色が出始め明るくなる。
美々 「美しい」という言葉の意味を探しにキャンプに出かける4人。 光、自然、不協和音の音楽からアップテンポの音楽に変化した。
朝、リコを探すミヤマ、そして二人の和解。
画家のリコは絵を描く。それが何か美々には見える。
牛探しのお礼にもらったソフトクリームの白。黒から白へ。
シオリの夢の話「特別な明かりが食卓を照らす」
食事する光景はいつも暗い場所。シオリの目的と物語の象徴。
シオリにはリコの描く絵が何か見えない。リコは「イメージ」とだけいうと「あなたの心そのままってことだ」
頭と足を対局して寝るミヤマとシオリ。それもまた象徴的でわかりにくい。そしてこの作品にはやたら寝るシーンが多い。寝るとは疲れを取る。そして癒し。寝ることで癒されているということだろうか?
猫の名前(あいちゃん)もややこしい。美々が「あいちゃんが絵に這い上がったの」
これはおそらく絵に魂が宿ったということだろう。やたらこんな抽象的なことが多い。
そしてトンネルは美しい世界と下界とのつながる場所なのだろうか? もしかしたらミヤマの自宅へ行く場合にだけ通る道なのかもしれない。
やがて食卓の上にシオリが思い描いていたフォルムの明かりがつけられる。
しかしその下で4人が食事をするシーンはない。そこにはミヤマだけがいない。この時からミヤマは自宅で過ごす時間が多くなっていく。一人で上高地の自然に身を置く。そこに現れた一人の男、身なりはミヤマそっくりだ。「ボクもここにしばらく滞在しようかな」
そして人間がいない風景と家。おそらくこの時リコの出産だったのだろう。長い間、象徴的表現が続く。
クリスマスデコレーション 盛り上がるみんな、赤ちゃんの声。一人だけ微妙な雰囲気を放つミヤマ。彼のいない食卓と明かり。
自宅にいるミヤマ 外のまぶしい光と反対に闇の中に佇んでいる。
迷子の牛、最初は伏線、2度目はソフトクリームの白を象徴し、3度目に、そこにいたはずのミヤマが消えていた。以後ミヤマは登場しない。
家のフローリングに寝そべるシオリと目から流れ落ちる涙。
完成した絵にはミヤマがはっきりと描かれていた。
さて、
ミヤマは牛に蹴落とされ落ちて死んだのか?
それともミヤマの魂は絵の中に入ったのだろうか?
ミヤマはなぜひとりだけ嬉しくなかったのか? これが最大の疑問点だ。ミヤマはあの赤ちゃんに何を感じていたのだろう? もしかしたら自分の死を予感していたのかもしれない。
また、リコはなぜ生む決心をしたのか? どうして誰もそれに触れなかったのだろうか? 彼女の精神状態は普通ではなかった。 時期を過ぎていたのか?
ミヤマと似た格好をして現れた男は何を象徴しているのか?
シオリは絵の正体を知った。そこにミヤマを感じた。リコの心そのものとはミヤマだったのだ。
難解で難しすぎる作品だった。
私は、
牛に蹴落とされて死んだミヤマは、少し前から自分の死を予知していたのだろう。シオリの涙の意味はリコの絵から感じるミヤマの魂に対するものだったと解釈した。
むずっ

R41
しろくろぱんださんのコメント
2024年5月6日

ご丁寧にコメントありがとうございます。
今回再度配信を観てみました。
記憶から抜けているところもあってまた違った印象をもちました。
コメントにあった様に生と死、光と影の自然の誕生と生まれ変わり。
身近にいる人は縁があって今いる人達で運命の様なもの。かなと思いました。
莉子とミヤマは影の部分を持っていて詩織が現実に引き戻してくれる光の様な明るさをもった人。
詩織もミヤマの正体は分からなかったのかもしれません。
全体にゆっくりとしたテンポで進むのでヒーリング効果もあるのかな。

しろくろぱんだ
しろくろぱんださんのコメント
2024年5月5日

難しい作品ですね。
百人いたら百通りの感じ方があっていいという事が書いてありました。
正解はなくその人が感じたままでということなのでしょうか。
ミヤマをどう捉えるか周りの人たちをどう思うかは観た人に委ねられる作品なんですね。

しろくろぱんだ