劇場公開日 2023年2月18日

  • 予告編を見る

「ジョージアの歴史を知る好材料」唯一、ゲオルギア しばいぬるりさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ジョージアの歴史を知る好材料

2023年5月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 やっぱ好きだわ、オタール・イオセリアーニの映画。同監督の映画祭で鑑賞。
 ノンシャランとした味わいのある他の作品とは違い、4時間余りの重厚なドキュメンタリーで流石に疲れたが見応えは十分だった。混乱期の1994年の製作で祖国がなくなるのでは、という危機感が当時の監督にあったことがうかがえる。
 ジョージア正教会がロシア正教会より古い歴史があったとは知らなんだ。それだけにジョージアがロシア帝国に併合されていた時期、ロシア正教会によってジョージア正教会所蔵の多くの宝物が収奪された恨みは如何ばかりかと想像される。
 ジョージア出身のスターリンについての描き方も興味深かった。スターリンが権力者になってから、自分は親戚だと名乗る人々がたくさん出てきた話には苦笑したが、知識人層には不興を買っていた。スターリンの腹心であったベリヤによる粛清はすさまじい。とはいえ、スターリンの死後、フルシチョフによるスターリン批判があった時には追悼デモが起き、150名ぐらいの死者が出たというから複雑だ。
 撮影当時はジョージアの最高議長だったシェワルナゼへのインタビューも興味深かった。一般にはゴルバチョフ政権での外相のイメージが強いが、ジョージアの共産党で出世しブレジネフに認められた話や、フルシチョフに「下手なことをしたらアブハジア人を扇動するぞ」と脅された話など印象に残った。実際、シェワルナゼはアブハジア紛争(悲惨な遺体が出てくるシーンがあるので要注意!)に悩まされることとなった。ともかく同じジョージア出身でもスターリンとは大違いの人生を歩んだ政治家だったと言える。
 ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、いろんな思いが錯綜する。そもそもあれだけの多民族で国土が広い統一国家を維持すること自体に無理があると思わざるを得ない。

コメントする
しばいぬるり