劇場公開日 2023年7月28日

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「陽子の凝り固まった心が少しずつほぐれていく658㎞の旅」658km、陽子の旅 しのぶさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0陽子の凝り固まった心が少しずつほぐれていく658㎞の旅

2023年10月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

ストーリーよりも菊地凛子に惹かれて観る。若い頃にアメリカ・ハリウッドで仕事をするために単独で渡ったと言うことでずっと興味を持っていた女優さん。
今まで観た映画の中で主人公のセリフがここまで少ないものは初めて。言葉が無い代わりに仕草や表情がとても重要になってくる。私も自然と陽子の表情を見つめながら心を読もうとしたりしていた。希望を持って上京した若い頃から挫折を繰り返して、カチカチに固まってしまった今の状況の苦しい心の状態の陽子。人を寄せ付けない孤独で誰にも心を開こうとしない陽子の表情が658㎞の旅(ヒッチハイク)を進めて行くうちに、少しずつ和らいで行き言葉も聞こえてくるように。途中には嫌な奴もいたけど、様々な人から無償の優しさで接してもらいながら、東京から福島~弘前へ向かう風景を見つつ上京以来疎遠になっていた父(帰郷はその父の葬儀のため)を受け入れることが出来るようになった陽子の表情の変化の演技が素晴らしい。人と目を合わせることも出来ず、蚊の鳴くようなか細い声しか出なかった陽子がどんどん変わっていく。形として見ることの出来ない心の傷を癒してくれるのは、やはり形の無い人の思いやりか・・と改めてシミジミと感じた作品。

しのぶ