劇場公開日 2024年1月12日

「香港映画の昨日と明日」燈火(ネオン)は消えず あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5香港映画の昨日と明日

2024年3月5日
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鑑賞方法:映画館

シルビア・チャンがプロデュースした作品である。1953年生まれ。ほぼ同年代の香港生まれの女優にノラ・ミャオとかいる(懐かしい)
欧米ではキム・ベイシンガーとかイザベル・ユペールが同じ年齢。世代的には作る側に回るということなんだろうけど彼女は本作ではほぼ出ずっぱりで主演を務める。
愛する夫を喪った喪失感と、姿を消していく香港のネオンサインをシンクロさせたお話ではあるものの、やはり全盛期の香港映画への郷愁と、現状への危機感が意識にはあるのでしょうね。
アナスタシア・ツァンという若い女性監督に演出と脚本を任せ、出演者も盟友サイモン・ヤム以外は、夫の弟子役レオくんをはじめ子世代というか孫世代といってもよい若い役者で固めています。ここにはまず、これからの香港映画を支える新世代への期待感を感じます。
一方、ネオンサインが撤去される、新しく設置するには規制のハードルがとても高いというところに、同じく大工仕事であるところの映画制作を意識しているところがチラチラみえます。香港の行政や警察当局は巡撫意識が極めて高くおそらくは融通はどんどん効かなくなっている。例えばロケなんかも難しくなっていると思われるのです。この映画で意外にも目抜き通りのネオンの現状の映像がそれほどは出てこない(過去の映像は出てくる)のはそんな事情があったのではないでしょうか。
若い人はそれでも工夫してよいクリエーティブ(ネオンであっても映画であっても)をつくってね、というのがシルビアさんの言いたかったことなんでしょうが、映画の中では最後にともに建築士である娘と婿がオーストラリアに出ていってしまう。このあたりにシルビアさんの強い危機感というか絶望感を感じてしまうのです。

あんちゃん