劇場公開日 2023年5月12日

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「人は一旦頂点に上り詰めると後は転落しかない!?」TAR ター 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人は一旦頂点に上り詰めると後は転落しかない!?

2023年5月12日
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鑑賞方法:試写会

怖い

知的

冒頭、指揮者として頂点を極めたヒロインのターは名だたる男性指揮者たちがタクトを振るクラシック・レコードを床に並べて、その中の1枚を何と足で物色する。男性主導の指揮者界を女性が制覇したことを物語る強烈なショットだ。

レズビアンを公言しているターには同性のパートナーがいるが、家事はその彼女に任せ切りだし、養子縁組で迎え入れた子供の子育ても同じくである。つまり、ターは男性のような日常を送っているのである。

そんなターがあるきっかけにより転落していくプロセスを、まるで観客を幻惑するようなホラー映画的演出を絡めて描く本作には、至るところに実在の人物や出来事が散りばめられているらしいが、それらをすべて理解するのは難しい。ターがかつてベルリン・フィルハーモニーを率いた伝説のコンダクター、ヘルベルト・フォン・カラヤンにインスパイアされたキャラクターだと聞くと、なるほど、と思うくらいだろうか。

しかし、確実に理解できるのは、性別に関係なく、人は一旦頂点に上り詰めてしまうと後は転落しかないと言うことだ。それを描く上で需要な要素となるキャンセル・カルチャー(ソーチャルメディア上でターゲットにされた特定の人物が排斥されていく形態の一つ、いわゆる炎上)も他人事ではない。

ターを演じるケイト・ブランシェットが本物の指揮者みたいに男前でかっこいい。ドイツ語も話すし、指揮棒を振る姿が板に付いている。そこが時々過剰に感じる場面もある。ラストについても解釈が分かれるところだ。一方で、ターが持つ天性のセンサーが実在する音は勿論、もしかしてあるはずのない音を察知してビリビリする感じを観る側にも味合わせてくれる音響が、随所で奏でられるクラシック音楽と共に耳を楽しませてくれる。

清藤秀人
アサシン5さんのコメント
2023年5月17日

僭越ながら補足させていただくと、頂点に上り詰める人の多くは、転落すべき素養に満ちている、それを指摘しているのではないでしょうか、また、転落しても這い上がる人も多い、示唆に満ちた映画でした、ありがとうございました😊よろしくお願いします🤲

アサシン5