劇場公開日 2022年7月9日

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「趣旨は類推しやすいけど、字幕が不親切…(補足入れてます)。」WANDA ワンダ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5趣旨は類推しやすいけど、字幕が不親切…(補足入れてます)。

2022年8月2日
PCから投稿

今年225本目(合計501本目/今月(2022年8月度)1本目)。

大阪市では3週間遅れという状況で公開です。
多くの方が触れられているように、また作内では一切言及はありませんが、おそらく、いわゆる軽度知的障害などがテーマにあるのではないか…と思えます(発言がオウム返しになっていたり、(日本でいう)中学英語しか用いていないなど)。
作内での時代背景からして今日(2021~2022)のように理解が進んでいる社会ではないので(どこの国でも)、(日本でいう)重度に相当する方は別として、軽度に該当しうる方はこの作品のようにひっそりと、そして奇想天外な発言をすることで(ただ、不愉快にさせる発言はない)暮らしていたのだろう、ということがわかります。

この関係で、テーマをそちらに大半よせた関係で、この年代のころからアメリカで盛んになったフェミニスト思想に関する描写も一切ありません。時代背景としては当然ありますが、それを扱う映画ではないので…。

ただこの作品、最初に「フィルムを修復したものです」など表示されることからして、いわゆるリマスター版なのかな?と思わせる一方で実はそうではない(日本では2022年公開)というのがポイントで、その観点では字幕の不足がすごく、理解するのが結構難しいところがあります。

こうした点は補足を入れました。

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(減点0.3) この作品それ自体は「おそらく」軽度知的障害などをかかえた当事者の当時の生き方を論じた映画だと解釈することができます。もちろんそれ以外の見方も可能ですが、映画のストーリーの展開的にその関係で「することやること」支離滅裂な部分があり(ただ、明らかにムチャクチャではない)、おそらくその筋ではなかろうか…と思えます。

ただ、その一方で2022年公開ということを考えても、字幕は原則主人公など登場人物に着目したセリフの字幕「しかなく」、映画内では実にいろいろなそれ以外の表記(特に、物語6割ほどで登場する、地下墓地の話)が何もなく、ここがとにかく激ムズな状況で「何をいっているのかわからない」「何がいいたいのかわからない」状況が発生する類型はおそらく存在しそうに思えます(趣旨的に、TOEICよりも英検寄りな知識を要求される)。

その意味で「なぜかしら」英語力勝負(特に文法)という不親切な部分があり、その解釈もかなりの前提知識を要求される割に補助字幕も何もないので、見る方によっては???になるのではなかろうか…と思えます。
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 ▼ Our friends, who art ...  って何?

 ・ 物語6割くらいのところで墓地にいく話が出ますが、墓地というのは古典表現が普通にみられる場所で、また(当時も今も)ラテン語なども見られます(映画内ではフランス語まで出てくるが、字幕は一切ない…)。これは墓地という場所と宗教との融合によるものです。

 ただ、この Our friends, who art... はかなり不親切…というか、わかる方はいないのでは…というところです。
このカンマつきのwhoの用法は、非制限用法の関係代名詞であることなどはもう前提知識です(そして高校英語では、仮定法とならんで苦手にする方が多い関係代名詞…)。

 ところが art って何?というのがハマリが発生しやすいです。art には「アート作品をつくる」という意味があり、ここは主格の関係代名詞なので、Our friends に呼応して三単現の-sもついていないその art (動詞用法)かな?と一瞬思えますが、それではほかの文章とつじつまがあわなくなります。

 実はシェークスピアの時代のころの中世英語のころは、be動詞などは今の活用と若干違っていた部分があり、これらは聖書や特に古典などでは古典用法を重んじてそのまま用いることがあります。英語では、be動詞の活用のひとつ are は、こうした聖書など特定の文脈では art に活用することがあります。つまり、 art = are という関係になります(逆の方向、つまり、are を art に書き換えることは(聖書など、特異な文章を作るのでない限り)しないのが普通。

 ただこうした用法は、(日本でも)聖書など、カトリックなりプロテスタントの方なりが聖書を「原書で読む」場合にはじめて出てくるようなレベルで、これをいきなり求められるのは正直つらいです(英検でもこんなの扱わないし、ロイヤル英文法など百科事典クラスの英文法書にしか載っていないです)。

 これに字幕がないので「何がなんだかわからない」のがこの墓地の部分で、ここで理解が力尽きる方が続出するのではなかろうか…という部分です(ほか、文字数関係で省きますが、この墓地シーンの英語の字幕のなさがすごくて、理解しようと思うと英文法に精通していないとどうにも無理な状況になる)。

 しかし、2022年のレベルでなぜここまで「日本の英語学習に配慮しない」謎の字幕になったのかは正直謎です…。誰でもかれでも英文学科卒とでも仮定したいのでしょうか…。

yukispica