「助兵衛根性の塊のような映画」バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ MADAKIさんの映画レビュー(感想・評価)

0.5助兵衛根性の塊のような映画

2022年9月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

まず、レビュー者は原作ゲーム未プレイであるため、多くの方が言及(あるいは酷評)しているゲームの再現性についてはコメントできない点、ご承知おきいただきたい。しかしながら、それを差し引いてもこの映画はすごい。何がすごいかというと、いろんな方向に色気を出しながら何一つとして結実していない。合コンでみんなに粉をかけに行く特に容姿に優れていないのにモテたがる、そんな男のような映画である。

あらすじとしては、映画版第1作から第2作に近い。ウイルスによってゾンビをはじめとした異形のクリーチャーが闊歩するようになるラクーン・シティからの脱出を図る警察官や市井の人々にフォーカスした作品。なので、圧倒的な戦闘力も免疫もない一般人程度の視点でのサバイバルを描けばまあそれなりに見られる作品になるはずだと思っていたが、実に期待の斜め下であった。

・時系列がわかりにくい:警察署・病院・洋館が中盤以降の主な場面になり、これらの場面転換がわかりにくいという意見も結構見られたが、個人的には時系列の飛び(過去と現時点)が気になった。冒頭の少女=今のクレアだと気づくのに結構時間かかった。
・欲しいところに怖いシーンがこない:この映画、本格的にクリーチャーが街をうろつき始めるのに結構時間がかかる。ゲーム未プレイの私でも知っている、原作ゲーム第1作の冒頭に見られたゾンビがゆっくり振り向くシーンに至るまで40分以上かかっている。さびれた町がウイルスの影響でおかしくなっていく様を緻密に書こうという意欲は伝わるのだが、いかんせんセンスがない。音楽とカメラワークで煽っておいて、「あ、これは来るぞ」と思わせておいてこない、逆に平場で怖いシーンをやってしまうことが多く、言ってみれば拍子抜け。折角感染の初期段階から本格的にヤバくなるまでに尺を取ったのだから、もうちょっと上手くやるべきだった。あとトレーラーの運転手がダイナミックに警察を訪れるシーンは視聴者に「あ、ギャグで見ていいんだな」と知らせてしまったので本当に悪手。
・続編を匂わせるシークエンス:警察関係者ながら仲間を裏切って死亡したウェスカーを謎の女エイダが蘇らせるシークエンスがエンディング前に差し込まれているのだが、これもなんというか豪胆だなと思った。これで続編!やったぜマジで!と狂喜するレベルに支持してくれる人がどれだけいるか、製作者はよくソーシャルリスニングして検討した方がいい。おそらくこれも原作プレイヤー向けのサービスなのかもしれないが、そういう色気は本編をしっかり作りこんでから出すべきものだ。

元々ミラ・ジョヴォヴィッチのシリーズも策を重ねるにつれて迷走していったが、1作目や2作目までは怖さとアクションのカッコよさが高レベルに融合した良作だった。こっちは最初から迷いに迷ってスケベ根性を見せた結果として、誰にも刺さらない凡作になってしまった。ゲームコンテンツの栄華かに注力するなら、もっと頑張れソニー・ピクチャーズ。

MADAKI