「物語が終わりに近づくにつれ、涙する作品。」君を愛したひとりの僕へ nikoさんの映画レビュー(感想・評価)
物語が終わりに近づくにつれ、涙する作品。
愛してしまったからこその苦しみが細かく描かれていて感動した。
2作品を比較すると、
「僕が愛したすべての君へ」は、ちょっと内容が難しく大人向けな感じがして、これからの人生をどう生きるか考えさせられる作品だった。
「君を愛したひとりの僕へ」は、分かりやすい内容で死んだ人への一途な思いを描いており、死んでもこれほどに愛し、愛される関係の2人に感動した。
作品を見る順番は、どちらでもいいと思うけど、
①僕恋②君恋なら、和音の気持ちにも共感でき、感動しながらも心温かくなる。
①君恋②僕恋なら、おじいちゃんの言葉がちょっと刺さりにくいかなと感じるのと、和音より栞の方がお似合いと思ってしまいそうだなと感じた。
栞が脳死状態になった時の暦は、感情的になっていたけどその感情こそが本当の愛のように感じた。
一度決めたことを最後までやるという事はなかなかできることでは無いと思うし、ましてや生き返るかどうかも分からない。そんな状況の中でただひたすら一つの事を追い求める彼の姿は、悲しみと後悔が見えると同時に愛する人を救うという一途な思いが描かれて感動した。
栞が生きていた時間は、他の人の長い人生に比べるとほんの少しだったけれど彼女を思う暦を見れば、栞はまだ彼の中ではずっと生き続けていた。
これほど近くにいるのに、手が届かない。交差点に行くたびに、姿が変わっていく暦と時が止まったままの栞を見て、込み上げてくる何かがあった。
和音が最後に言った「さよなら、暦。幸せになってね」という言葉は、これまで苦しんできた暦を見てきたからこその精一杯のお別れだと感じ自然と涙が溢れてしまった。そして、エンドロールと共に流れる映像と音楽は、2人の思い出を振り返りながら2人が出会わない世界に進んでおり、少し寂しさを感じた。
映画を見終わった時に、席から離れたくないくらい満足感があり、帰り道こんなに愛し、愛される世界は存在するのだろうかとぼんやり考えてしまっている自分がいた。この映画は、人によって感じ方が違うと思うし、それが例えあまり良くない印象であっても、どこか心に刺さったシーンは必ずあると言えるくらい素敵な作品だった。