劇場公開日 2022年6月10日

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「グリンピースは食べない。」わたし達はおとな 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5グリンピースは食べない。

2022年7月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

難しい

デザインの勉強をしている大学生の優実は演劇サークルに所属する恋人に妊娠していることを伝える。
しかしある事情から2人の意見は日ごとに食い違っていき…

現役大学生で演劇サークルに所属している自分としてはとても他人事として観ることが出来ず、鑑賞中は自分の中を色々な感情が渦巻いていた。

物語上の出来事のひとつひとつはぶつ切りシーンの連続で、観ていてしんどくなるような濃厚なシーンは長回し。
恋人に友人、大学生活は充実しているはずなのにどこか無機質で無味乾燥な日々。
だからこそ、“妊娠”というテーマが重くのしかかってくる。
2人の出会いと2人の別れ。
2つの時系列が同時に展開し、幸せの絶頂と底辺が交互に描かれる。
観ている自分の心もぐちゃぐちゃになった

とにかく生々しい。
たかがグリンピースで喧嘩するところとか女同士の下ネタとか。
もしかしたら今も自分のすぐ側で起きているかもしれないような問題。
加藤拓也監督と言えば「死にたい夜にかぎって」が大好きだけど、本作も素晴らしかった。
とても長編第一回監督作品とは思えない。

実体験から泣いている人を笑うような人がトラウマで、恋人に振られ、泣いたり吐いたりしている優実を見て友人が大笑いするシーンは目を背けたかった。

直哉はナチュラルクズ野郎。
オブラートに包みながら少しずつ攻撃してくる。
「俺ちゃんと寄り添ってるでしょ」と言わんばかりの偽善者ぶり。
藤原季節にしか出来ない役だった。
木竜麻生の嗚咽には胸が張り裂けそうになる。
優実も優実で肯定しきれないが、彼女の進む道はあまりにも残酷。
あそこで物語は終わるが、ひと時の夢から覚めて現実を噛み締めるだけのその後は、描かれないだけに恐ろしい。

男と女の嫌な部分を煮詰めたような性春胸糞映画。
エンドロール後に優実が食べる食パンの味のなさが妙に分かって、口の中がカラカラになった。
“おとな”とは一体なんだろう。
わたしもあと数ヶ月で法的におとなになる。
わたしはちゃんと本当のおとなになれるだろうか。

唐揚げ