劇場公開日 2022年11月18日

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ある男のレビュー・感想・評価

全363件中、101~120件目を表示

4.5窪田正孝という俳優は恐ろしい。

2023年4月26日
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鑑賞方法:映画館

日本アカデミー賞受賞後の凱旋上映にて。

窪田正孝が父親と息子の二役を演じている。
基本的には内向的な役柄が得意な役者なのだと思うが、テレビドラマで彼を初めて見たとき、少年サイコキラーの役に戦慄したのを覚えている。柔和と狂気の両極端を演じきれる役者だ。本作では、そのカメレオンぶりが発揮されている。
鏡に写る自分を見て癇癪を起こすときの“顔の演技”には、本当に驚く。

主人公は、戸籍を偽っていた男の正体を調査する弁護士。
彼は、調査を進めるうちに迷宮へと入り込んでいくのだ。

田舎町に流れてきた男と再婚して女児をもうけたシングルマザーだった女。
父親になった男を慕っている、女の連れ子の少年。
戸籍を上塗り上塗りして、出自を完全に消し去ろうとした男。
男が別人であることに気づいた、アナクロな偏見の持ち主である温泉旅館の長男。
投獄されている戸籍ブローカー。
男と戸籍を交換した行方不明の温泉旅館の次男。
行方不明の男を想っている元恋人。
夫に隠し事がある弁護士の妻。
他にもユニークなキャラクターが主人公弁護士に心理的影響を及ぼしていく。
そして、人の存在において過去とは何か、愛した人の存在証明とは何か、自分と他人を別けるものは何か、様々な問いを投げつける珠玉のミステリー映画だ。

「私はいったい誰を愛したんでしょう…」

「仮に、Xさんと呼ぶことにします」

安藤サクラが、映画の冒頭で見せる涙のシーンで、いきなり物語の穴に引きずり込まれる。
間もなくして、窪田正孝が実に訳ありげに登場するのだ。
おずおずと、文具店店主=安藤サクラに交際を申し込む正体不明の男=窪田正孝。
弁護士=妻夫木聡の登場順は遅い。
キーマンとなるのは、獄中の男=柄本明。また、この映画も柄本明が支える。
刑務所の洞窟のような長い廊下はいったい何だろう。まるで、秘密基地に続く地下通路だ。面会室のデザインも奇抜だ。
この非現実的な刑務所の美術が、柄本明の怪演と、それに対峙して圧迫されていく妻夫木聡の心理を際立たせる。

調査を請け負ったイケメン弁護士に、レクター博士よろしく関西弁の柄本明がヒントを与えながら揺さぶる。
弁護士は、妻の父親、妻、自身のルーツなど、幾つもの葛藤を背負っているのだった。

徐々に明かされるX氏の生い立ちは熾烈なものだった。
弁護士はいつしか彼と同化していた様だ。そのことを我々は衝撃のラストシーンで知らされる。
映画のオープニングで写し出された一枚の絵がラストシーンの演出に用いられている。絵を見つめる妻夫木聡の後ろ姿が、絵と重なりあう見事な演出。

亡くなった継父の素性を聞かされた安藤サクラの息子(坂元愛登)が、父の実子である幼い妹に、自分がいつか話すと言う。
この兄が引き受けた役割は重く、いつか彼から事実を聞かされる妹のことを思うと、いたたまれない思いだ。

戸籍にまつわるサスペンスと言えば『砂の器』を思い出す。
空襲によって焼失した戸籍の再生制度を利用したカラクリを松本清張が発表してから60年弱、本作(原作は未読だが)では戸籍を売買する仲介人が登場する。
別人として生きたいと考える人は少なくないのかもしれない。
戸籍交換とまではいかなくても、誰も知らない土地でやり直せたら、とは思ったりする。
このレビューサイトでも、メッセージを何度か交換したレビュアーさんとは、お互いリアルには知らないのに友人気分になったりする。
全く素性を知らないから、互いの評価に邪推がないのが心地よい。
そんな、自分をゼロから評価してくれる人たちの中で人生をやり直せたら…どうだろう。

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kazz

4.0奥底にあるモノ

2023年3月28日
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役者さん全員熱い演技で面白かった。

実は中学生の子が一番難しい役どころなんじゃ無いか?と個人的には思いました。
中学生役の子、少年時代の「エックスさん」役の子、素晴らしかったです。

ただ個人的にストーリー上、腑に落ちないところがあったので星を一つ引きました。

でも全体的に見応えのある作品でした☺️

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TenTenTen

4.0過去に向かうベクトルとそれを打ち消そうとするベクトルの、衝突ではなく昇華を描いた一作

2023年3月28日
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鑑賞方法:映画館

事故で亡くなった夫は別人だった、というミステリアスな事態から展開していく物語ですが、「彼の正体は!?」という謎解きよりもその背景(動機)を少しずつ解きほぐしていく繊細な描写に注目したい内容となっています。あるいは冒頭に登場するルネ・マグリットの絵画と本作がどう同調しているのかを探る物語、ともいえるでしょう。

主人公谷口里枝を演じる安藤サクラをはじめ多くの登場人物の見せる、何かを押さえ込むような表情と立ち振る舞いは、本作の核心部分にも関わる重要な要素となっており、注目に値します。そんな制約から自由である(かのように見える)柄本明演じる服役囚の言葉と表情の強さも。

映像的な主張もまた物語の語り口同様抑制的で、かなりの年月が堆積しているものの雑然とはしていない文房具店や、洗練されているけどどこか空虚な城戸弁護士の自宅など、その場所の雰囲気をごく自然に体感できる美術に集中している印象があります。一方、繰り返される子供の背中越しの映像は、その先に何があるのか、という期待と不安を表現していて、本作においてとても印象的な「引っかかり」として機能しています。

本作は明らかに、「排除」にさらされる人々、あるいは排除に対する「畏れ」について言及していますが、それに対する作品としての応答の仕方は、例えば『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)を想起させるもの(というかむしろ『マンチェスター』のその先を描いている)で、結末における悠人(坂元愛登)の言葉とそれを受けた里枝の反応が、本作全体を貫くテーマを凝縮している化のようでした。最後の最後に仕掛けられたエピソードは、単なる感動作にしないぞ、という原作者と映画製作者のメッセージのようで面白かったんですが、評価はやや分かれそうです。この部分について、肯定的評価と否定的評価のどちらが多いのか、ちょっと気になります。

パンフレットは最近の水準からすれば平均的な価格ですが、丁寧な解説やインタビュー記事が豊富に盛り込まれていて、とても満足感の高い内容でした!

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yui

4.5地味なタイトルですが名作だと思いました

2023年3月25日
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鑑賞方法:映画館

結婚して自分と生活を共にしてきた旦那が亡くなった後で、その経歴が別人のものだったというミステリー映画です。

未亡人になった妻から依頼を受けた弁護士事務所が、亡くなった旦那の隠された過去の経歴の調査を開始するのですが、驚きの結末を迎えます。

この映画の始まりと最後に映し出される絵画が伏線となっていて、作品全体に重いトーンを与えています。

第46回日本アカデミー賞で、最多8部門で最優秀賞受賞したのも、納得です。

地味なタイトルですが、私は名作だと思いました。

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The_Winnie

4.5余韻が残る作品

2023年3月25日
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物語は淡々と進むが、キャストが自分達の役割をしっかり演じていた印象です。映像で全てを解決せずに、観る側へ感じ方を投げかけている。原作もさることながら、監督が良い作品に作り上げたんだと感じました。

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こうたんまる

4.0小説よりもわかりやすくて面白かった。 難しい法律問題をきちんと説明...

2023年3月24日
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小説よりもわかりやすくて面白かった。
難しい法律問題をきちんと説明し、登場人物も際立っていた。
視聴者を考えさせる終わり方も秀逸

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jyojyo4649

4.0逃れられない闇

2023年3月18日
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鑑賞方法:映画館

付き纏う自身のルーツに翻弄されるミステリー作品。
非常にゆっくりと、ページをめくるように進む物語が秀逸でした。
そんな作りだからでしょうか、安藤サクラを始めキャストの演技をじっくりと堪能できます。
それと窪田正孝ですね。気がつくと良い雰囲気を出すようになってました。
妻夫木聡も表情がうまく、段々と重く沈んでゆく感じが良かったです。
作品はそれぞれが抱える“逃れられない闇”、それらが実に巧妙に絡み合っていました。
社会的な差別や偏見がずっと横たわり、絵画で始まり絵画で終わる。
この皮肉めいた強烈な仕掛けが効いてました。
きっとどこにでもいるであろう「ある男」の物語でした。

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白波

4.0安藤サクラさんとても素敵でした。最後までドキドキしながら観ていまし...

2023年3月15日
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泣ける

安藤サクラさんとても素敵でした。最後までドキドキしながら観ていました。映画館で観て良かったです。

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binn

4.5日本アカデミー最多受賞作品なので

2023年3月15日
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泣ける

悲しい

知的

観る機会を逃していましたが日本アカデミー賞を最多部門受賞した作品なので少し遠くまで観に行きました。冒頭の安藤サクラと窪田正孝の出会いの場面だけで延々と見ていられます。やはり良い役者さんはただ見てるだけで良いですね。妻夫木さん含めてメインの役者さんも脇を固める役者さん達もとても素晴らしかったし脚本も素晴らしいかったです。ただ個人的な日本アカデミー賞は僅差で流浪の月の広瀬すずと松坂桃李、横浜流星さんでした。

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tomクルー

3.5モヤモヤ感がたまらない

2023年3月15日
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出だしから引き込まれてしまうような作品ではなく睡魔が襲いますが少しずつ引き込まれます。
皆さんご存知のとおりアカデミー賞ということで観ました!
ラストに近くなると色々見えてきます!
やっぱりか…って思ったりします!
気になる方は観てください!
何と言ってもアカデミー賞ですから…
私の個人の評価はまあ普通より良いってだけですが心には残ります。

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883HT

4.5濃厚骨太な‘鑑賞’すべき邦画

2023年3月14日
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浮遊した【個】なんて存在しない、つまり何かしらのルーツや社会などの集団、評論家の西部邁さんが仰っていた【真空パック】状態の個など存在し得ない。
その十字架とでもよべる運命を背負った人たちの、もがきながら懸命に生きる物語だ。

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雨の夜はヤバイゼ

4.5全編を通して出てくる自分とは違う境遇の人への無理解・無神経・差別意...

2023年3月14日
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全編を通して出てくる自分とは違う境遇の人への無理解・無神経・差別意識・排他意識・・・
そんなものにあてられつづけて、しんどいしんどい、、
でも、人と人 としても関われる。捨てたもんじゃない!と!!
おもしろかった。そして、役者さんたちがすてき!

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うみぶどう

3.5なかなか面白い

2023年3月13日
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もっと暗〜い映画かもしれないと思っていたけど、なかなかよかったです。最初と最後の不思議な鏡の絵が印象的で、弁護士だった主人公の男が主役であった理由がその最後のシーンで分かったかな。

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よっしーな

4.0深くて重い

2023年3月12日
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知的

難しい

こんな映画を集中して見るのが、大変心地好い
あなたは誰?私は誰でしょう?
私の歴史は私には大切ですが、あなたには関係ない
妻へのLINEは意味深い
最後何て答えたのか?

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daikokumai

3.0またそれか。

2023年3月11日
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生まれ、育ち、出身、学歴。それに伴うステレオタイプなレッテル。そんなフィルターを通して、大概は人は人を判断する。少なくても相手を深く知るまでは、そんな手掛かりをもとに、自然と相手を知ろうとする。ただし、この作品は相手を深く知れば知るほど謎が深まり、結局は血脈に行き着く。「またはそのパターンか」と辟易してしまった。
ラストの香織(真木よう子)のスマホへの不倫メールのシーン。あれ、いらんだろーよ。
日本アカデミー賞8冠は、正直嘆かわしい。

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ラーメンは味噌。時々淡麗醤油。

4.5素敵な映画、そして安藤サクラ

2023年3月8日
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安藤サクラの演技を見るだけでも価値がある
冒頭のシーンの表情から凄い。

もちろん映画としてのできも素敵
「人とは何か」を練られた構成で、しかし静かに落ち着いたテンポで考えさせる。
ひとつひとつのシーンに込められた意味が迫る。
ラストシーン。そう、他人の人生を語ることが自分の来し方行く末を考える事になる。

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tacohtk

4.0演技に魅せられ、ずっしり心にくる映画

2023年3月6日
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怖い

難しい

キャストが豪華で割と楽しみにしていた作品。
序盤から窪田さん安藤サクラさんの静の演技に引き込まれた。
さすがだった。ずーっしり重ーいあの感じが出せるのすごいなって。
でも、自分の理解力無さすぎて、妻夫木さんが調査してる途中の場面で混乱しかけた。
親のこととか家柄とか生まれた時から決まってしまっていること、どうしても変えられない過去、いろいろ抱えて抱えきれなくなってこの映画のある男のようになってしまっている人が現実世界にいてもおかしくないよなぁって思えた。
最後の最後に主演がなんで妻夫木さんなのか種明かしされるあの終わり方も好きだった。

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流星の水菜

4.5愛する人のなにを見ているだろうか。

2023年3月5日
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肩書きやカテゴライズされた要素はどれ程の意味を持つのだろう。誰かを愛するとき、その人のなにを見ているだろう。そんな問いかけを感じました。

平野啓一郎原作の脚本は期待を裏切らない密度で、平野さんが提唱する分人主義をベースに、戸籍ロンダリング、死刑制度、ヘイトスピーチなどをテーマに取り入れています。哲学的でありながら物語である意味を強く感じる主張がありました。
「戸籍を入れ替え生き直す。それぐらいのことをしなければ生きていけない人もいるんだ」特に印象に残った台詞です。

ミステリー要素も濃く、サイコホラー感もあり迫られるような音の使い方は追い詰められる、逃れられない、そんな登場人物の感情と観客をリンクさせる演出で追体験させられているようでした。映画館で映画観てるなあ。という実感を強く持ちましたし、素直な感想は「怖かった」です。

場面によって主人公が変化する構成も面白かったです。複数人の人生に焦点を当てているため登場人物も多いのですが、煩雑さもなく流れが入ってきやすかった。
極力情報入れずに観たため、次々出てくる演技派俳優に驚き、笑みが溢れてしまうほどお芝居に圧倒され続けられました。
里枝の息子役坂元愛登さんもお芝居素晴らしかったです。間の取り方空気の作り方の事実っぽさたるや。この2人のシーンは台詞演出ともに良いものばかりで見どころの一つです。

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ゆちこ

4.0買わないと何か悪い店には入りづらい

2023年3月2日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

結婚相手の男が実は誰なのかが分からない。
その理由をひもといていくミステリー。中々面白い作品である。
物語の流れで主人公が変遷する。

良い点
・お経のリズムに敏感な妹
・刑務所の人

悪い点
・難解な交換
・そっくり
・むしろややマザコン

その他点
・在日
・調査費用

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猪古都

4.0現代版「砂の器」

2023年2月25日
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鑑賞方法:映画館

人間の宿命を描いた不朽の名作「砂の器」を思い出した。
ところどころ分かりにくかった部分は原作を読んでフォローしたいと思う。
いずれにせよ今年の映画賞レースのトップを走る作品であることには納得できた。
演技陣も素晴らしかった。

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SHOT