劇場公開日 2022年3月4日

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「☆☆☆★★★ 原作は読了済みですが、これは映像化の圧勝ですね。とに...」余命10年 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5☆☆☆★★★ 原作は読了済みですが、これは映像化の圧勝ですね。とに...

2024年3月16日
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☆☆☆★★★

原作は読了済みですが、これは映像化の圧勝ですね。とにかく上手いです。

映像化された作品を振り返えると。原作半分、映画オリジナルのストーリー展開が半分と言ったところでしようか。

始めに映像化の圧勝…と書きましたが。これはひとえに、スタッフの技術の高さに起因している部分がかなり大きいと思います。
映像化するにあたり、ワンカット×2の美しさが記憶に残る程の画面作りには、時折溜息が漏れるくらいでした。

1番大きな原作からの変更点として。ヒロインが彼に対し、自分の病気を告白するのが、原作だと残り少しの辺り。それを映像化に於いては、映画中盤に入った辺りですからかなりその違いは大きいですね。
スクリーンを観上げながら「何故こうしたのか?」…を考えていたのですが。ふっ…と、ある事に気付きました。それが原作の中盤辺りでのスノボ旅行。

それまでヒロインは。(彼にどんどん)恋をする事で、将来像に怖さを感じ、彼の手すら握る事すら出来ないくらいでした。
それがスノボ旅行の帰りに、大雪で帰宅出来なくなり。車内に取り残された2人は初めての口づけを交わします。
現代的な恋愛に於いて、僅かこれだけの事しか出来ない恋愛模様は。言ってみればお伽話と言っても良い程なのですが。読みながら、この場面が原作では1番印象に残る場面だっただけに、やはり製作側も《この場面こそが肝》と思ったのではないでしょうか。
だからこそこの場面を、終盤の盛り上がりの箇所に挿入していたのだと思います。

ちなみに、原作との違いを少しだけ思い返してみると…

友人はコスプレイヤーで、彼女に誘われてヒロインもコスプレイヤーになる。
一方でヒロインは、若い時から漫画家になるのが夢で。漫画を勉強しながら友人の影響で自分の衣装を作る様になり、(原作だと)その衣装が最期の場面で効いてくる。

彼は名家の大事な跡取り。親に反目していたが悩んだ末に地元に帰って跡取りとなる。
従って、リリーフランキーのキャラクターは映画オリジナルの人物像になります。

そして大事な変更として。漫画家志望だったヒロインを小説家志望にしている点。
これは、元々原作者自身がこの原作を書き、その後早逝した事で。彼女の分身であるヒロイン役の小松菜奈=原作者として描き切った脚本上での優しさを強く感じます。

そんな脚本の巧みさは。映画の冒頭で、原作にもあった同じ病気で亡くなる友人から贈られるた《ある小道具》
この原作には無い《小道具》の存在によって、2人の恋愛模様の歴史が時間系列順に残されて行くのです。
この【2人を見つめ続けた記憶メディア】は、最後の最後で効いて来る訳ですが。最後に残る〝 恋のトキメキ 〟を表現する瞬間の脚本は、本当に上手いですね。寧ろ「狡い!」と言って良いくらいでした。
彼女が記録した〝 映像 〟でしたが。たとえ消え去ったとしても生き残り続ける、、、いや、その先の映像をも、彼女の脳内では記録され続けていた映像には「うわ〜!やられたなあ〜!」…と。

映画オリジナルのキャラクターだったリリーフランキーの味のある演技。
原作だと全然目立たなかった両親の、娘を気遣う様子もしっかりと描かれていたし。何よりも、先に記した様に。タイトルが出た瞬間での画面の「はっ…」とする美しくであったり。太陽の光であり、桜の花びらの美しさを始めとした撮影の素晴らしさには感嘆を抱きました。

私が鑑賞した回は若い女子高生で満席に近い入りで、終盤はあちらこちらから鼻を啜る音が聞こえ来ました。
それに反して、こちらは純粋な心を失ってしまったおじさんだけに。(最早)この程度の泣かせ演出では泣けないくらいに煤けてしまった心を持ち合わせてしまいました💧
でも、だからと言ってこの作品を悪いとは言っていません。寧ろかなりの良作だと思っています。
純粋な心を持つ人ならば素直に泣ける作品だと思います。

そして何よりも、小松菜奈本人から醸し出される《儚さ》の凄さは、少し時間が経った今、改めて考えてみても凄いですね。

2022年3月11日 TOHOシネマズ錦糸町楽天地/スクリーン10

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松井の天井直撃ホームラン