劇場公開日 2022年1月8日

「喪失とどう向き合うか。」春原さんのうた まめもやしさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5喪失とどう向き合うか。

2022年2月19日
iPhoneアプリから投稿

全編に渡り喪失感と少しずつ向き合う様子を描く。歌人の東直子による第一歌集『春原さんのリコーダー』の表題歌をもとに映画化した本作は、主人公が置かれた状況や悲しみの対象が明確に描かれることはない。空いたままの玄関や窓とは裏腹に、主人公の心はどこか閉ざされている。そんな中、部屋を通り抜ける風のように、気にかけて部屋に入ってくる人たちの姿が印象的。主人公と彼らの姿が、どら焼きの餡と包む皮の関係性に重なる。誰かに見守られ、誰かを見守る。そんな普遍的な人間関係の様子が、主人公が道案内するシーンに表れている。「もう大丈夫だよ」の言葉が聞けてどこか心がスーッと浄化されていくようだった。大切な何かを失ったことがある人にとって優しく寄り添ってくれる作品。

まめもやし