すべてうまくいきますようにのレビュー・感想・評価
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オゾンの柔らかく穏やかな語り口が胸に染み渡る
『空を飛ぶ夢』や『母の身終い』をはじめ、尊厳死という題材を扱った作品はこれまで幾つか観てきたが、オゾンが奏でる本作はその語り口が滑らかで柔らかく、どんな瞬間もユーモアを忘れない。時折、若かりし頃の父と娘のエピソードが出てくるが、いつだって父は自分のやりたいように事を推し進め、言いたいことを容赦なく子供にもぶつけてきた。こういう挿入部があるからこそ、彼が最後の瞬間にも自分勝手をとことん貫きたいと考えるのは何となく納得がいく。人間は生まれるタイミングはあらかじめ予想がつくが、自分の死ぬ瞬間に関しては掌からこぼれ落ちる砂のように制御できないもの。でも自分の意思で身じまいできると知った瞬間から、この高齢の父親の表情は途端に生き生きと輝き出しているように思える。この映画は、尊厳死について肯定するわけでも否定するわけでもない。あくまで「父娘の物語」という枠組みでこの語り口を完結させているのが特徴的だ。
Hybrid of Critical Favorites
Francois Ozon is one of those directors that can take an ordinary plot about slice-of-life drama and pack it full of unique perspective that reveals the many dimensions of our world albeit being shown on a 2D screen. In Everything Went Fine we get a Father-like tale of a man's receding lifeline as her daughter has to cope with his request to put him out of misery. Exquisitely French cinema.
安楽死の是非と家族の葛藤を描いた映画
2022年9月13日。
ジャン・リュック・ゴダールさんの死が安楽死だとニュースが伝わり、
少なからずどよめきが起こった。
ゴダール氏は日常生活に支障を来す複数の疾患を患っていた。
居住するスイスで「判断力があり利己的な動機を持たない人」に対して
合法化されている「自殺幇助(安楽死)」を選択。
医師から処方された薬物を使用して亡くなった。91歳。
この映画では突然の脳卒中で身体が不自由になった父親が、
娘に「終わらせたい」と言って、
娘は愛情と父の望みの2つの板挟みになって
葛藤するが父親の「安楽死」のために奔走する話です。
誤解されそうな描写があります。
アンドレのようにバクバク食事が出来てワインからデザートまで
平らげる人は該当しません。
回復が全く望めず、甚だしい苦痛があり、死期の近い人に
限られるのです。
余命が殆ど無いとの医師の診断書が必須です。
金持ちは安楽死出来るが、お金がない人はただ死ぬのを待つ。
これも、やや誇張。
スイスの安楽死は営利目的ではないので、日本人が出かけても、
150万~200万で実現が可能なのだそうです。
ただ診断書を書く医師には自殺幇助で逮捕される例があり、
とても難しいようでロす。
2019年にNHKのドキュメンタリーで日本人女性が、
同じようにスイスの施設で安楽死を成し遂げるまでを、
克明に記録したドキュメンタリーを見ました。
40代後半の女性は神経系の難病で話も呂律が回らず、車椅子でしたが、
病状は重かっです。
独身のため、叔母が2人付き添ってスイスへ行きました。
点滴を打ちながら穏やかに亡くなりました。
語学力がかなり必要ですね。
渡航の困難などを考えると相当な努力が必要。
エマニュエルとパスカルの姉妹もてんてこ舞いでしたね。
ソフィー・マルソーさんがとても美しく年齢を重ねられてて
感動でした。
それにしてもちょこっと登場のシャーロット・ランプリング。
夫がゲイと知って(親の反対を押し切って)まで結婚して、
今はパーキンソン病にうつ病。
身体の不自由な人の歩き方。
いやぁ恐れ入るほど上手いです。
(安楽死が必要なのは彼女の方では?)
アンドレは好き放題に生きて最後は苦しまずに安楽死。
なんか釈然としなかったです。
(でも安楽死には賛成です。日本でも早く法整備される事を望みます)
「PLAN75」と比べてみるがいい
高齢者の尊厳死をテーマにしてこのタイトル。どんな結末を想像するだろうか。死は人生の終わりではない。死も含めての人生なのだ。「いかに死ぬか」は「いかに生きるか」と同義である。
「PLAN75」と比べてみるがいい。結末はまるで違うが、人生の希望を見いだせるのはどちらか。オゾンはいつもこうやって斜め上から予想を裏切って、我が国と彼の国の成熟度を見せつけてくる。
軽くて重い
テーマは尊厳死についてで
重いんだけど
時々、
この映画はコメディなんだろうか
と思うくらい
軽い感じで会話や事が進む。
私にとっては
重いテーマを
あまりしんどくなく
見せてくれる
稀に見る
いい映画でした。
一夜明けたスイスの山々が素晴らしい
登場人物、ワタシ(つまりジジイね)を含めた観客の世代がマッチしている中で
オトンの心境を受け入れようとする前半の姉妹の活躍は静かで
後半は重たくもユーモアを散りばめ、
いよいよ決行に向かうにつれて小気味よいアクション風に変わっていく。
最後は成し遂げ感を見せてくれた映画でした。
ミステリー感強かったオゾン監督もなかなかやるな、と。
ソフィーマルソーもいい感じに歳をとられて妖美。
この感想を記している間にもだんだんと評価が上がってくる
心に染みる作品です。
70点
4
アップリンク京都 20230208
パンフ購入
愛情で結ばれているのは間違いないんだけど、先ずは個の人生・考え方を優先・尊重するのは如何にもフランスらしい。死を題材にしながらもウィットにとんでいる処もフランス映画らしい。ソフィー・マルソー好演。
①映画としては、脚本も良い、演出も良い、演技も良い、と三拍子揃った佳作。
②しかし、この映画を観るまでは「安楽死」「尊厳死」の問題はあんまり考えてこなかったなぁ。
安楽死を考える
85歳の男性・アンドレは脳卒中で倒れ身体の自由がきかなくなり安楽死を望むようになった。人生を終わらせるのを手伝ってほしいと頼まれた娘エマニュエルは、父の気が変わることを願いながらも、合法的な安楽死を支援するスイスの協会に連絡し・・・てな話。
安楽死は殺人か、というのが大きなテーマなんだと思う。介護疲れの老夫婦の殺人事件をよく聞く現代の日本でも本テーマは重要な事だと思った。
誰も悪い人は居ないのに法律上の問題で人殺しになったりならなかったり。
昔の日本では食いぶちを減らすために働けなくなった老人は姥捨山へ捨てに行ったらしいが、真剣に安楽死の事を考えないといけない時期に来ているのかもしれない。
13歳の時にラブームで主演したソフィー・マルソーが娘のエマニュエル役で主演してて、彼女をを久しぶりにスクリーンで観た。特別美しいという訳じゃないけど、なんか味が有って良かった。
先日、ラブームでエロ可愛い13歳のソフィー・マルソーを観たばかりで、彼女の40年以上の女優人生、いろいろ有ったんだろうなぁ、って思いながら観てた。
家族の距離感
家族より自分を優先して好きなように生きてきた父親が脳梗塞で倒れ、安楽死を願う。父への愛もあるし症状は改善しているのに考えが変わらない父に困惑するエマニュエルと妹のパスカル。
フランスでは条件が厳しいがスイスでなら可能と知り……
安楽死については、感傷的でもなく、冷徹でもなく、あくまで選択肢の一つとして提示しています。ユーモアも漂い軽い語り口です。
見どころは家族の関係性です。一緒に暮らしていても相手の心の中を完全に理解する事は出来ない。言うべき事は言うけど相手の意思を尊重する。踏み込んではいけない領域には無理に踏み込まない関係。前日に観た映画とは対照的で、どちらが正しいとは言えませんが、本作はとてもフランス的でした。
いかに生きるべきか、そして死ぬべきか... 最期まで自分らしくありたい頑固者の父を死出の旅へ送り出す娘たちの苦悩と惜別の映画
脳卒中で病院に緊急搬送された高齢男性が自分の身体の状態に鑑みて"自分らしさを保っている内に人生を終えたい"と安楽死を望み、その頑固な父の最期の切なる願いを託された中年姉妹とその家族が彼と向き合う様を描いたヒューマンドラマ。
殊更に家族の思い出を反芻したり、父を翻意させようと尽力するようなセンチメンタルな描写は抑えられており、あくまで身体が不自由となった父が死出の旅に出るまでの本人とその周辺の生活を時にユーモアを交えつつ淡々と描いているのが印象的です。
"安楽死"というとどうしても悲痛で重厚なテーマとして扱われる傾向が強く、"自死"を描くからには哀しみや諦めの悲愴感がドラマとして漂うものですが、一風変わったアプローチの作品ゆえに取っつきやすく、何より誰しもがいずれ彼我の立場となることを避けられない問題であるため、なおのこと高齢による問題の別種の捉え方として意義深い作品だと思います。
"安楽死"というかなりセンシティブな内容を扱った作品ではありますが、それを額面そのままにセンシティブなものとして観客に突きつけるのではなく、人としてのユーモアを保ったまま生を全うする一つの選択として描いているのが造り手側の何よりのメッセージでしょう。
ガチガチに法制化して制度として整えてしまうと有象無象の圧力として作用してしまうのでそれは決して望ましくありませんが、選択肢として存在することで却って一日一日を大事に自分らしく生きられる、という側面はあるのかもしれません。
(原題) Tout s'est bien passé
安楽死がテーマ!死に対しての残される者の感情をソフィー・マルソーが滲み出るような演技で魅せてくれました。
このテーマにしてこの観やすい作品でした。じんわりくる良作。
人生からの旅立ち
人生を楽しんできて楽しめなくなった、不自由になったから自らの意思で幕を引く
そんなに悪いことではないと思うんだけど周りの人からしたらそうでもないのかな
欧米諸国はキリスト教の影響で出来ない国が多いと思っていたけどスイスが認めているのは知らなかった
オゾンの成熟
自分がアンドレだったら安楽死をしたがると思いますが、アンドレの娘だったら恐らく戸惑います。親が安楽死によって幸せになれるのだとしたら、後押しはしたいのですが、難しいですよね。今は両親共に自立して生活ができていますが、要介護になったらもっと老いを実感するなあ。自分も含めて。
私は約20年前からずっとオゾンのファンで作品もほぼほぼ鑑賞していますが、ライフステージ毎に作風がガラリと変わっていて、時の流れを感じます。初期作品のポップなオゾンをリアルタイムで観ていたので、本作の様な成熟の域に入ってくると私も歳を重ねたなあと感慨深くなりました。色々と考えちゃいますね。
明るく死を選ぶ父と、翻弄される娘たち
父の覚悟は揺るぎない。
だからこそ、明るく饒舌に振る舞ってしまうのか?
周囲にこんなに愛されているのに、それでも決断が覆ることはない。
ある意味、人生をかけた生き様の教育のようだ。
どこかで覆らないかと期待してたけど。
ソフィ・マルソーが美しい。
味のある女優さんになったな〜と、懐かしく見ていました。
コミカルに描かれているけど、重い題材。
切ないな。
期待しすぎた
予告見て期待し過ぎました。
主人公と父親の現在は忌憚なくなんでも話せるって感じだけど、幼少期あんな感じだったのとつながらない。
なにかエピソード入れてほしかった。
人物描写も半端な感じがした。
あの男は何者?
把握しきれなかったのは私が何か見落とした?
一人でいけ?
え?死ぬとき一人?
父本人も娘たちもみんなあっさり受け入れてて、そんなもん???ってなった
安楽死の話になると、何度も突如としてすごい勢いで席を立つ妹。
でも、安楽死に反対してるわけでもなく、なんなんだろう…
外出自由で、寝たきりでも管につながれっぱなしで胃ろう、とかでもなく
孫の演奏会に行き、最期の晩餐も満喫してる人。
スイスの安楽死って、希望者が金払えばOKなの?と思うゆるさ。
何一つ響きませんでした。
映画館で観るのでなく、配信になるの待てば良かった。
【"終わらせて欲しい・・"自由気儘に生きて来たメンドクサイ父親が脳卒中で倒れた時に娘達に頼んだ事。娘達の葛藤をユーモアを絡ませて描いた作品。フランス人の死生観は、サッパリした感じなのかな。】
- 85歳の父親アンドレ(アンドレ・デュソリエ)が倒れたと、小説家の娘、エマニュエル(ソフィー・マルソー)に連絡が入り、父親は安楽死を彼女に願う。-
◆感想
・近年、高齢者の生死や認知症をテーマにした映画が増えている。アンソニー・ホプキンスの名演が記憶に新しい「ファーザー」や、「PLAN75」等である。
どの作品も面白く鑑賞したが、テーマ故か雰囲気は重かった。
・今作品は父親の安楽死を巡って娘達が葛藤を抱えながら奔走する姿が描かれているが、どこかユーモアが漂っている。
・一度は容態が悪化したアンドレはスイスで安楽死が決まった為か、どんどん元気になり果ては"孫の演奏会が聴きたい。"とか"エマニュエル夫婦と食事がしたい。"と言って、決行日をどんどん変える。父親の言い分に従って、奔走する娘達の姿も何だか可笑しい。
・更には、途中からアンドレが昔から同性愛者である事が観る側に伝えられる・・。
- で、恋人らしい男が現れる。因みに彼はフツーの太ったオジサンである。そんなこんなで振り回される娘二人の姿が、哀しくも可笑しい。-
・決行日の前日には、警察に通報され(日本と同じくフランスは安楽死を認めていない。場所がスイスであろうとも、娘二人は殺人は殺人幇助の可能性を問われる。)再びてんやわんや・・。
- 本来、父親と娘の最後の日になる筈なのに・・。-
<今作品はフランス人の死生観を、ユーモアを絡めて描いた作品である。
アンドレが"貧乏人はどうするんだ?"とエマニュエルに聞いた時の遣り取り等、ブラック過ぎるぞ!"
アンドレは人生好き勝手に生きて来たんだから、とっとと安楽死させてやれば良いじゃない!"等と不謹慎な事まで考えてしまった作品である。
それにしても、ソフィー・マルソーさんは実に美しくて、お若いなあ。
そして、シャーロット・ランプリングさんの灰色の眼は、矢張怖いのである。
警察に通報したのは誰だったのかな?あのオジサンだよね・・。>
あのクソ野郎(字幕表現)はなに?
『海を飛ぶ夢』(アレハンドロ・アメナーバル監督 2004年)や『みなさんさようなら』(ドゥニ・アルカン監督 2003年)といった、死期をコントロールしたいと願う主人公を軸に、周りにいる家族たちを描くモチーフは、さまざまな形で描かれる。尊厳死テーマで言えば、日本映画でも昨年話題になった『プラン75』というディストピア作品が記憶に新しい。邦画史的には『楢山節考』に行き着くのは自明。で、本作はその系譜。いまや巨匠呼ばわりされているフランソワ・オゾンが、ゲイにバイアスがかかっていない、真っ当なホームドラマを演出。配給はキノフィルムズ。かつて『8人の女たち』や『スイミング・プール』などの頃はギャガ配給だったことを思い出す。ともあれ、エマニュエル・ベルンエイム(『スイミング・プール』の脚本家)の自伝的小説が原作というから、ほぼ実話なのだろう。脳梗塞で真っ当な生活ができなくなった85歳になる父親が、ソフィー・マルソー演じる長女に尊厳死を望む、という物語。そんな一家の、父が目的を遂げるまでのあれこれが、冷静にスケッチされていく。高齢化が極まった日本では、日常的に『意識』せねばならないテーマだが、フランスの娘たちは、達観してるのか、後半は淡々とゴールへ進んでいく。この妙な冷静さが軽く怖いお話だった。
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