劇場公開日 2021年7月16日

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「不死のクローン人間と余命いくばくもない男の逃避行が怒りを湛えたサイコキネシスを発動する韓流版『クロニクル』」SEOBOK ソボク よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0不死のクローン人間と余命いくばくもない男の逃避行が怒りを湛えたサイコキネシスを発動する韓流版『クロニクル』

2021年7月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

情報局の元諜報員ギホンは深刻な持病に苛まれ激しい頭痛を投薬で抑えながら何の希望もない自堕落な生活を送っていた。そんな折ギホンの上司だったホン部長からある仕事が舞い込む。それは韓国が独自で進めていた極秘プロジェクトで生成したクローン人間ソボクを護送すること。見た目は普通の青年に見えるソボクは人間の2倍の速さで成長し細胞分裂を抑制する薬さえ絶やさなければ死ぬことのない存在。当然裏の世界で注目されるソボクの護送は大変な危険を伴うもので、護送開始早々に正体不明の集団の襲撃を受けてしまう。なんとか脱出したギホンとソボクは情報局のアジトに逃げ込むがそこにも魔の手が迫ってくる。

人間の弱さと強さの両方を同時に表現出来るコン・ユの個性が滲み出た作品。組織を追われ堕落しただ生き延びるためにまた組織から仕事を請けるギホンと見た目とは裏腹に子供のように純真なソボクが逃避行の中で心を通わせていく話はある意味ロードムービーの鉄板ですが、ソボクを巡って争う組織がどちらもソボクを人間として取り扱わおうとしないことに対する怒りがサイコキネシスとして暴走する『キャリー』、『スキャナーズ』、『AKIRA』、『クロニクル』といったエスパー系のサスペンスが足されているのが新味。終盤の展開にはちょっと『ルパン三世 ルパンVS複製人間』のような乾いた終末観も相俟って、そもそもは荒唐無稽なプロットをエモーショナルに展開してしっかりと着地させる辺りさすが韓流と納得しました。ソボクを演じたパク・ボゴムの全てを達観したかのような悲哀を湛えた佇まいも印象的、今後が楽しみな逸材です。

よね