グリード ファストファッション帝国の真実

劇場公開日:

グリード ファストファッション帝国の真実

解説

「イン・ディス・ワールド」「グアンタナモ、僕達が見た真実」のマイケル・ウィンターボトム監督が、ファストファッションブランド経営者の栄光と転落をブラックユーモアを織り交ぜながら描き、ファッションビジネスの闇に鋭く切り込んだ社会派ドラマ。ファストファッションブランドの経営で財を成したリチャード・マクリディは、自身の還暦パーティを盛大に祝うため、ギリシャのミコノス島へやって来る。イギリス当局から脱税疑惑や縫製工場の労働問題を追及されたリチャードは、このパーティでかつての威光を取り戻そうとしていた。しかし、傲慢に振舞うリチャードと周囲との間には不協和音が生じはじめ……。「TOPSHOP」などを保有していたアルカディア・グループのオーナー、フィリップ・グリーン卿をモデルに、ウィンターボトム監督とはこれで7度目のタッグとなるスティーブ・クーガンが主人公を怪演。共演は「グランド・イリュージョン」のアイラ・フィッシャー、「トレインスポッティング」のシャーリー・ヘンダーソン、「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」のエイサ・バターフィールド。

2019年製作/104分/PG12/イギリス
原題:Greed
配給:ツイン
劇場公開日:2021年6月18日

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(C)2019 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

映画レビュー

3.5勤勉を地で行く監督が描く“強欲”、その行き着く先は…

2021年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

最初に感じたことは「ウィンターボトムは健在」だということ。
ある人物や現象(データ)から時代を照射し、抜群の音楽センスでセレクトした曲に乗せて短いカットを重ねていく。時制とフォーカスする人物は常に複数あり、PCのモニター越しの映像にも細心の注意が払われる。監督の勤勉な演出スタイルによって歪な現代社会が浮かび上がってくる。

パーティへの5日間のカウントダウン
ファストファッション企業のM&Aで荒稼ぎし「卿」の称号までも与えられた男リチャード(スティーブ・クーガン)。
パーティ開始へのカウントダウンには、彼の生涯をまとめる伝記作家の視点、まるでカードゲームの駆け引きのように値切ることに勝利の愉悦を求め続ける姿、会場設営の進行、審問会での振る舞い、公共ビーチにたどり着いた難民たち、娘が出演するリアリティショーなど、複数のファクターが巧みに配されていく。
彼はいかにして業界に足を踏み入れ、どのようにして巨万の富を手に入れたのか。罵声だらけのパーティ準備の行き着く先には、予想だにしないとんでもない結末が待ち受ける。

7対93の不均衡。
世界に7%しか存在しない超富裕層(スーパーリッチ)と、搾取され続ける残りの93%。
史実に沿わない『グラディエーター』を模したローマ帝国のはりぼて円形競技場。虚飾の会場に招くビッグスターだってお金で買える。でもそのギャラは、パキスタンのお針子さんの時給を削って得たお金だ。
世界に蔓延する社会の闇、刻一刻と進む格差。奴隷のような姿をさせられたパキスタン女性アマンダの涙は、93%の嘆きなのかも知れない。ラストで彼女が押すボタンは、時代に対する警報であり、強者とされる7%に対する警告なのだ。

余談
クリストファー・ノーランが『ダンケルク』撮影前に参考にした13本の映画の中に、1924年のサイレント作品『グリード』が入っていた。
純粋である故に残酷な一面を持つ巨躯の男が美しい女性を娶る。だが生活は困窮、いつしか金の亡者となった妻にも裏切られてしまう。やがて日銭すらもなくなった男は妻を襲い金を奪う。強盗となった男を妻を寝取った男が追う。2人が行き着いた先は灼熱の砂漠。
いくらお金があっても、命をつなぐ水がなければ人は生きていけない。すべては強欲が生んだ顛末なのか…。

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高橋直樹

4.0この怪物の姿から世界の現実が見えてくる

2021年6月17日
PCから投稿

英ファストファッション・ブランドの創業者を主人公に、その強欲ぶりが周囲を構造的な泥沼へと引きずり込んでいく様を描いた社会派コメディ。彼の華美すぎる還暦パーティーがギリシアの島で着々と準備される模様と、幼少期から語られゆく半生、それに公聴会や伝記作家の目線を通じて数々の所業が明るみになる流れを織り交ぜ、”リチャード・マクリディ”の怪物性を痛烈に浮き彫りにしていく。どんな些細な交渉でも無茶を言い、掻き乱し、相手を困らせた挙句に好条件を手にしてほくそ笑むーーーーそんな他人の屍の上に牙城を築くような姿にムカッ腹が立ちつつも、そこに漂うギリシア神話的、シェイクスピア的な香りが、やがて訪れるであろう審判の時をひしひしと予感させる。多くのウィンターボトム作品と同様で好き嫌いは分かれそうだが、我々の意識を自ずと「世界の裏側」へといざなう趣向は変わらず。この監督の一貫したメッセージを感じずにいられなかった。

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牛津厚信

3.5強欲なんてレベルじゃない

2023年11月29日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

実在の人物をモデルにしているが、内容はかなり脚色されている。特にラストは完全な創作である。
多くの人が東南アジアなどでの低賃金労働について書いているが、「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」と同じように起業家を見る作品だ。そして「ファウンダー〜」の主人公と同じように本作の主人公マクリディ卿はサイコパスである。

サイコパスと聞くと連続殺人鬼などを想像するかもしれないが、実際は数十人に一人はサイコパスであるらしい。学校のクラクに一人か二人はいたということになる。サイコパスだからといって全員が人を殺めるわけではない。それどころか会社経営者などにサイコパスは多いという。

サイコパスの一つの特徴として自分の欲望に忠実だというのがある。言い換えるならば自分以外の人やものに対し敬意を持ったり尊重したりしない自己中心的なのだ。
つまり、自分の望みのために誰かが死ぬことになっても、そんなこと知らん。という具合だ。

マクリディ卿はサイコパスなので、事業に邁進するあまり回りが見えなくなったのではない。最初から見てなどいない。
そのあまりに自分本位な行いは本人の気づかないところでギシギシと軋み、ふとしたきっかけで決壊し悲劇を生む。
しかし本当に悲劇だったのだろうか。主人公はマクリディ卿だが、誰の視点で観るかによって感情は違ってくるように思う。悲劇はもっと前に起きていたのかもしれない。

時間軸をイジり娯楽性を生み出そうとしているところは好感が持てるが、実際、面白くなったかというとそうでもない。
物語が複雑化して何の話なのか分からなくなり、焦点が定まらない。
しきりに話す「グラディエーター」から察するに始めからずっと復讐の物語だったのかもしれないが、それにしては少々尾ヒレがデカすぎる。

副題になっているファストファッション帝国の真実に目を向けても、ファッションに疎い自分は知らないブランドであったし、作中でZARAかどっかを倒すとか言っていたけれど、昨年か一昨年にアパレル業界の世界売上げトップがユニクロになってしまったのでイマイチ盛り上がらなかったかな。この辺も超有名なマクドナルドを扱った「ファウンダー〜」とは違った。
まあ作品は面白かったんだけど。

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つとみ

3.512時間労働、きついなあ

2022年9月4日
iPhoneアプリから投稿

 実在の人物をモデルにしての話だが、トップになるにはこのくらい傲慢でないと無理なのかな。それにしても腹立たしいほどの傲慢さ。
 あの誕生日パーティーも悪趣味で品がない。
 ライオンのシーン、気の毒というよりも、ちょっといい気味、と思ってしまった自分が怖い。

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アンディぴっと
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