劇場公開日 2021年2月12日 PROMOTION

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私は確信する : 特集

2021年2月8日更新

この法廷、誰かが嘘をついている―― “音”を頼りに
無罪を勝ち取れ 衝撃の完全犯罪に挑む渾身サスペンス

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“音”に集中し没入できる映画だ。「ヒッチコック狂の完全犯罪」と世間を賑わす殺人事件とその裁判。シングルマザーのノラは、バッシングを受ける容疑者とその弁護士に協力し、およそ250時間分の電話の通話記録を精査することになる。ノラは容疑者の無実を確信していたのだ。

途方もない作業だが執念が実を結ぶ。やがて浮かびあがってきたのは、メディアの報道とは異なる事実と、「この法廷のなかに“嘘”をついている者がいる」という現実。動転と波乱に満ちた、世紀の裁判が幕を開ける――。

2月12日から公開されるフランス映画「私は確信する」は、同国で実際に起きた未解決事件をテーマにした渾身のサスペンスだ。日本でも話題となった“ほぼ音声のみ”で進行する「THE GUILTY ギルティ」を彷彿させる構造で、迷宮に迷い込んだようなスリル、そして脳髄がピリピリと痺れる逆転のカタルシスに満ちた物語が展開される。

本特集ではこの「私は確信する」の見どころを、「サスペンスの質」「なぜ映画化されたのか?」「人物紹介」の3つに分けて紹介していく。


【予告編】冤罪か、有罪か―― フランスで大ヒットした裁判サスペンス

【良質サスペンス】250時間の“音”を精査し、法廷の
嘘を暴け―― ある女性の執念が前代未聞の判決を呼ぶ

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[物語]フランスで実際に起きた未解決事件…裁判の興味深いてん末が題材

2000年の未解決事件「ヴィギエ事件」が題材。事件発生から裁判の判決まで異例づくしゆえ“前代未聞”と称された、驚くべき実話に基づく法廷サスペンスである。

00年2月27日、日曜日。フランス南西部に住む女性スザンヌ・ヴィギエが、3人の幼い子どもを残して失踪した。殺人容疑がかけられたのは、夫のジャック・ヴィギエ。しかし明確な動機がなく、決定的な証拠どころかスザンヌの遺体さえ見つからなかったため、ジャックは証拠不十分で釈放される。

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ところが約10年が経過した2009年、ジャックに対し殺人罪を問う裁判が始まった。メディアは連日連夜、この事件をセンセーショナルに報道。一方でジャックの無実を信じ、彼の家族に寄り添うシングルマザーのノラは、敏腕弁護士エリック・デュポン=モレッティに弁護を依頼する。

自らもデュポン=モレッティのアシスタントとなったノラは、事件関係者による250時間にもおよぶ“電話の通話記録”を分析することに。声の主の特定すら困難な途方もない作業に執念で挑むノラ。個人的な電話では、人は口が軽くなる……やがて10年前の取り調べでは事件関係者が隠していた“証拠”や、メディアの報道などとは驚くほど食い違う“事実”が浮かびあがってくる。

ジャックはハメられたのか? 真犯人がほかにいるのか? いずれにせよ確実なのは、ジャックを犯人と決めつける者がいて、この法廷の誰かが嘘をついている――。さまざまな疑惑が渦巻く仮説や証言が飛び交う裁判は、思わぬ方向に捻れていく。

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[ここがすごい①]音がカギに 「ギルティ」彷彿させる“全集中映画”

物語の中心となるのは、通話記録を聞き込むノラが“会話の音声”から真実を明らかにしようとする模様だ。例えば当時のベビーシッターが被害者の様子を語ったり、ダニエルと名乗る男が数人いたり、男女が猛スピードで複雑な意見交換をしていたり……。

観客は自然と全身を耳にし、全神経を音に集中させることになる。研ぎ澄まされた感覚は深い穴へ落ちるように物語への没入を促す。するとあたかも自分自身がスクリーンのなかに入り込み、ノラとともにヘッドフォンで通話記録を聞き、ジャックの無実を証明しようと事件に挑むような気持ちになってくるのだ。

電話の声と環境音だけで誘拐事件に挑む「THE GUILTY ギルティ」に、勝るとも劣らない映画体験。一筋縄ではいかないひとときを、心ゆくまで堪能することができるだろう。

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[ここがすごい②]誰が嘘を? 真相暴き逆転に次ぐ逆転、爽快な展開

本作、正直に言えば多くの時間が「ノラが通話記録を聞き込んでいる」「法廷でデュポン=モレッティが弁護する」シーンだったりする。しかし見ればすぐにわかるが、これが非常にスリリングに仕上がっているから、鑑賞中は常に前のめりになってしまう。

それはなぜか? 情報開示の順番が特に優れているからだ。まず、事件の謎や矛盾が観客に示される。次に、ノラが通話記録の海に飛び込み、深く深く潜り“真相”を見つける。そしてデュポン=モレッティが法廷で真相を突きつけ、ジャックにとって不利な状況が轟音をたてて覆っていくのだ。

こうして、裁判では前代未聞の出来事が続出。証人の発言がコロコロと変わり、ジャック犯人説が一転して無罪濃厚となり、次の公判では逆にジャック犯人説が濃厚となったりする。予定調和を殴り飛ばすようなただならぬ展開が観客にスリルを与え、主人公たちが逆転するたびに爽快なカタルシスも与えていく。

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[ここがすごい③]ラストに強い感動が待っている

裁判は二転三転し、階段から転げ落ちるように判決へと突入していく。そこへ到達するまでのラスト10分。大きな見どころが待っている。

読者の興を削がぬよう、ネタバレに注意して慎重に記述する。見どころは弁護士デュポン=モレッティの最終弁論だ。事件を通じ、デュポン=モレッティは法廷にいるすべての人に、そしてスクリーン越しの私たちに訴えかける。

正義とは何なのか。不条理や恐怖に打ち勝つこととは。立って前を向いて歩き、勇気を振り絞って世界と戦え――。その10分間は、私たちの心の扉を強く強くノックするのである。

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なぜ、この事件が映画化されたのか?
ヒッチコック狂の完全犯罪、司法と情報社会の問題点…

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①センセーショナルに報じられた“ヒッチコック狂の完全犯罪”

映画化された理由のひとつは、この事件と裁判が現代ならではのてん末をたどるからだ。容疑者は“妻殺しの夫”。しかもサスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックの大ファンであるということから、メディアは「ヒッチコックの映画を模倣した完全犯罪」と報道。これに世間が反応し、論争を巻き起こした結果、事件が本来のサイズよりも無闇に大きくなっていった。

現在でも問題視される“メディアの過熱報道”と“炎上”が、この一件にも多分に含まれているのだ。ちなみに劇中、裁判長がジャックに対し「この事件と似ているヒッチコックの作品は?」とふっかけ、「バルカン超特急」「間違えられた男」を例に挙げるシーンがある。

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②あまりにも強引な警察の捜査… 司法と情報社会の問題を象徴

もうひとつの理由は、水面下で“司法のメカニズム”を問うほどの重大な出来事が起きていたからだ。実際の裁判に着想を得たアントワーヌ・ランボー監督が、現代司法のあり方を中心に徹底的な取材を重ねた執念が結実している。

ランボー監督はこう語る。「この事件で一番興味を持ったのは、確たる証拠なしに司法は一人の人間をどのように裁くのか、ということでした」。警察は注目度の高い事件を利用し、自分たちの威信をみせつけることにやっきになり、強引な捜査(例えば警視がジャックの両親を脅迫し、警察に都合のいい証言を強要する)もいとわずジャックに迫っていく。

さらに被害者スザンヌの“愛人”(この男がとことん曲者!)は、夫ジャックを犯人と決めつけ、メディアの取材やYouTubeの動画で憶測に基づいた推理を垂れ流す。そして報道や噂にさらされた民衆は、自分たちが言論によって悪人を裁こうと、正義感ゆえに獰猛な意見を世に放つ……。

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本作はそうした司法の問題点、推定無罪の原則、フランスの法意識、正義の暴力性などに深く切り込んでいく。その強度と迫真性は、大学の法学部や、プロの法律家の教材にすらなり得るほどだ。


【鑑賞の手引き】これさえ読めば人物相関はOK!
キャラクター紹介――名前・職業・背景を紐付ける

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最後に、鑑賞前の予習用に簡単な人物紹介を用意した。サスペンス映画、特に法廷ものは登場人物が多く、思惑も入り乱れるため何かと複雑になりがち。しかし以下の4人の名前と職業や肩書き、そして呼び名や背景をおさえておけば、鑑賞中に混乱する確率はグッと減るだろう。


[主人公]ノラ シングルマザーのシェフ、“戦う女性”

検事でも弁護士でもなく、レストランでシェフとして働き一人息子を育てる女性。ジャックとは子どもを通じて知り合う(彼女の息子の家庭教師が、ジャックの娘)。彼の無実を確信し弁護に協力、通話記録を精査するうちにやがて息子も仕事も生活も忘れ、取り憑かれたように事件にのめり込んでいく。

ルックスもそうだが、並外れた行動力と信念は「ターミネーター」シリーズのサラ・コナーを彷彿させる。劇中ではノラと呼ばれる。実在の人物ではない。演じるのは、フランスではコメディエンヌとしても人気が高い演技派マリナ・フォイス。

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[容疑者]ジャック・ヴィギエ 被害者の夫で大学教授

法学部の教授であり極度のシネフィル。ヒッチコック監督の作品を引き合いに、完全犯罪の講義をしたことがある。子ども3人からの信望も厚く、良き父親のようだが、警察からおよそ10年にわたってマークされている。

殺害の証拠はないものの、妻スザンヌの失踪後10日経過してから捜索願いを出したことや、彼女のマットレスを処分していたなど疑わしい点も多い。主にジャックと呼ばれる。また、劇中で「ヴィギエ」の名が登場した際は、大抵はジャックのことを指している。実在の人物。

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[愛人]オリヴィエ・デュランデ 被害者の愛人で、噂たきつける曲者

ダンス教師だった被害者スザンヌの営業マネージャーであり、愛人関係にあった中年男。憶測からジャック犯人説をとなえ、メディアに登場し切実に演説をかましたり、警察と共謀を図ったりもする。劇中では主にデュランデと呼ばれる。本作における悪役ポジションだが、実在の人物。

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[弁護士]エリック・デュポン=モレッティ ジャックの弁護担当、ノラと共闘

著名な敏腕弁護士。ノラにジャックの弁護を依頼され、一度は相手にせず無下に断る。彼女の不屈の意志に突き動かされ弁護を引き受けることになるが、それが苦難の日々の始まりだった。

頭脳明晰、観察眼も抜群でアドリブもきくため、法廷では舌鋒鋭く矛盾を暴き出し、不利な状況をことごとく覆していく。実在の人物で、2020年の7月からフランスの法務大臣を務めている大物。演じるのは「息子のまなざし」などで知られる名優オリビエ・グルメ。

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