劇場公開日 2022年4月8日

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「自らの信条に裏切られることの辛さ」親愛なる同志たちへ Boncompagno da Tacaocaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5自らの信条に裏切られることの辛さ

2022年5月15日
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フルシチョフ時代に起こった、社会主義体制ではないことにされている労働争議をもとにした映画だが、しばらく忘れていた冷戦期のソ連社会のイメージが色々蘇った。地元の共産党役員で配給も特別扱いされる主人公の目を通して共産党組織の官僚主義や矛盾も明らかにされる。実際に映画のような、あるいはそれ以上の悲劇はあっただろうが、自分の信じた共産主義に裏切られていく主人公の思いに、もっと普遍的な人間の業を感じる。スターリン時代より自由化したフルシチョフ体制下で起きた値上げや賃下げ、ストというのも、歴史の皮肉である。スターリン時代を懐かしむ気持ちも、主人公の立場に立てば分かる。コサックの話まで入れたのはストーリーとして出来過ぎの感もあるが、十分に見応えある作品である。

Boncompagno da Tacaoca