劇場公開日 2020年12月18日

「ネガティブな自分自身との戦い」私をくいとめて Koheiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ネガティブな自分自身との戦い

2021年1月21日
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鑑賞方法:映画館

難しい

のん(能年玲奈)、林遣都、片桐はいりという魅力的なキャストに興味を惹かれ、映画館へ足を運んだ。前半は「おひとりさま」を謳歌する様子が描かれており、平和な展開が待っていると思った。けれども、そうした第一印象とは裏腹に、生きづらさを感じる人の腹の奥底を覗き見たかのような、居心地の悪さをも感じさせられた。のん演じる主人公はネガティブな思考の持ち主であり、世の中の人間たちを悲観していた。その矛先は自分自身に対しても向いており、生きづらさを抱えているといえる。中村倫也演じるもう一人の自分であるAとの対話を通して、自分と向き合い、なんとか乗り越えようとするのであるが、なかなかうまくいかないこともある。この作品を通じて、気丈に振る舞っているあの人も実は心の中に闇を抱えて生きているかもしれないと改めて思った。それは当たり前なのかもしれないが、普段何気なく生活している中では、人間を多面的に見るということが難しい。成功者の裏にある苦労を想像しようとしても、キラキラした部分ばかり目につく。表の顔と裏の顔があったとしても、表の顔しか見えないのである。また、主人公が好んで聞いていた劇中歌「君は天然色」がこの作品をより美しく仕上げていたことも印象的である。

Kohei