劇場公開日 2020年9月25日

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「徹底的に軽快なのにちゃんとエゲツない、ギャグにもアクションにも手抜きのないベタベタなアクションコメディ」ヒットマン エージェント:ジュン よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0徹底的に軽快なのにちゃんとエゲツない、ギャグにもアクションにも手抜きのないベタベタなアクションコメディ

2020年10月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

幼い頃に両親を亡くした少年ジュンは国家情報院に拾われ対テロ組織の精鋭部隊“猛攻隊”の一員となるべく鬼教官ドッキュに徹底的に鍛え上げられる。しかし数々の戦果を上げるエースとなったジュンの本当の夢は漫画家になること。夢を諦め切れないジュンは釜山港沖でのミッション中に事故死を装って逃亡する。15年後漫画家となっていたジュンだったがウェブ配信中のギャグ漫画不評で連載ストップ、美術教師の妻ミナとヒップホップ好きの娘ガヨンに稼ぎが少ないことを詰られながら土工のバイトに明け暮れる日々。さすがに自暴自棄となったジュンは酔った勢いで猛攻隊時代のエピソードをネタにした漫画を書き上げるが、居眠りしている間に漫畫を読んでしまったミナに配信されてしまったとたんに大評判に。その漫画に自分が描かれていることを知ったドッキュは正体不明となっている作者の正体を追うが、同じ頃同じくジュンを探す男達がいた・・・。

ポスタービジュアルからはほぼ想像がつかないレベルのかなりベッタベタのアクションコメディ。漫画家の話なのでグロめの回想はアニメで描写、しかしちゃんと実際のキャストに似せたキャラになっているし、アニメならではのアクションシークェンスも丁寧に仕上げられていて一切手抜きなしどころかむしろ実写より手間暇かかってるかも。自作がSNSで延々ディスられるカットや中学生が大喜びしそうな下ネタとかが必要以上にブチ込まれているので少々ドラマがもたつきはするものの、きっちり市街地で撮影されてるカーアクションや細かい動作まで計算された銃撃戦や格闘が要所要所に仕込まれているのでダレ場は意外となし。しかし韓流の演技陣の層の厚さと演技スキルの高さには毎回驚かされますが、本作もほぼドリフみたいなスラップスティックなギャグの数々に自然な躍動感を滲ませていて佐藤二朗やムロツヨシのようなドヤ顔は一切なし、やっぱり韓流アクションは我が祖国の300年先を行っています。主演のクォン・サンウは何となく田中圭に似た隙のある感じの二枚目ですが、作り込まれた肉体美とキレのあるアクションをキッチリこなす華麗な身のこなしは見事、横浜流星との勝負を観てみたいなと思いました。意外なところで主人公の妻ミナを演じるファンウ・スルへのキュートさにハートをブチ抜かれました。全然必然性がないのに彼女にもキッチリアクションの見せ場を用意するサービス精神にも唸らされました。

徹底的に軽快なのに死ぬ人はしっかり死ぬさりげなく凄惨なタッチは『トゥルー・ライズ』や『カンフー・ハッスル』っぽいなと思ったのですが、クレジットでファレリー兄弟、ジェームズ・キャメロン、チャウ・シンチーに謝辞が捧げられているのを観て、何て誠実なんだろうと感動しました。

よね