劇場公開日 2020年11月6日

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「彼が壊したかったものは、アメリカに作られた虚構の貴族たち」トルーマン・カポーティ 真実のテープ 七星 亜李さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5彼が壊したかったものは、アメリカに作られた虚構の貴族たち

2020年11月15日
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鑑賞方法:映画館

トルーマン・カポーティを「ティファニーで朝食を」の作者というぐらいしか認識していなかった。
そして、「ティファニーで朝食を」もオードリー・ヘップバーンのファッショナブルなスタイルにしか目に入っておらず、
「ローマの休日」の延長線上くらいにしか考えていなかったように思う。

トルーマン・カポーティを語るには、「ティファニーで朝食を」「冷血」プラザ・ホテルでのBlack and White Ball そして、3章までしか発表されていない「叶えられた祈り」なんだろう。

一貫して彼が暴きたいものは、後からは変えられない人の生まれという化けの皮を剥がして、そこから見えてくる人間の生の姿とのギャップを世の中に晒したかったんじゃないか。

「ティファニーで朝食」をでは、ほぼ娼婦のような主人公のホリーに自分の母親を重ね、
「冷血」では、犯人がなぜ、殺人を犯すような心理になったかを街中の人たちまで取材し、犯人と心を交わすことにより、どこか自分を重ね、
Black and White Ball では、かたやベトナム戦争が行われる中で、大々的にマスメディアを使って、500人近いトップセレブの仮面の下の偽善に満ちた顔を見せながら、
ゴシップを漁り、「叶えられた祈り」で彼らの裏の裏にある破廉恥な事実を世間に晒すことを楽しんでいる。

アメリカの金権主義、資本主義というシステムを使いながら、一部のセレブリティにとって都合のいい世の中。
カポーティは彼らと付き合いながら、自分を重宝しながらも決して心の奥底では自分たちの仲間とは思っていない彼らの特権意識を嘲笑っていたのかもしれない。

リアル「グレートギャッツビー」を思わせるような世界。
アメリカの富の集中が引き起こしている、人間の本性を垣間見れるドキュメンタリーだと思う。

七星 亜李