劇場公開日 2020年10月9日

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「あなたのせいじゃない」82年生まれ、キム・ジヨン sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5あなたのせいじゃない

2024年1月4日
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鑑賞方法:VOD

amazonにて視聴。原作も映画も気になっていたのにタイミングが合わず、やっと観ることができた。
舞台は韓国だけれど、まんま日本じゃん!というのが、序盤の感想。特に、今はまさに正月。長男の嫁と姑との関係は、今年もそこかしこで繰り広げられたのではないか。
かく言う自分も、大晦日には長男の家にお邪魔して、もてなされた立場。我が家の場合、主に台所に立っていたのは長男のほうだったが、映画を観ながら「今後も素直に、長男とその嫁さんへの感謝の気持ちを忘れないようにしよう」と固く心に誓った。
中盤からは、家制度が、女性の犠牲の上に成り立ってきたエピソードに加え、社内での男性優位主義や女性の性的な搾取などが、絶妙な取り上げ方で描かれる。
その中で起こる主人公のジヨンの憑依は、病名とすると、解離性同一症の憑依型ということになるのかもしれないが、その要因は、彼女を取り巻く環境と生育歴そのものに他ならない。
つまり、彼女自身のせいではないのだ。
けれど、彼女のことを大切に考える夫や実母ですら、どこか彼女自身に理由を探してしまっているように思われるところがもどかしい。
しばらく前に、ブルデューのディスタンクシオンを取り上げたNHKの100分de名著という番組で、社会学者の岸政彦さんが、「“あなたのせいじゃない”と言い続けるのが社会学」と語っていて、心に響いた。
ブルデュー曰く、「私たちは生み落とされたそのときから、身振りや言葉遣い、趣味、教養といった体に刻み込まれていく文化能力をも相続していく。そのように相続された文化資本の多寡は、自らが属する社会的階層によってあらかじめ決定づけられ格差を生み出していく要因になっているにもかかわらず、“努力によって獲得されたもの”と誤認されることで巧妙に隠蔽される」(NHKのHPより引用)とのこと。夫や実母もとらわれているのは、ここなのだと思う。
歴史的に積み重なり、形作られてきた様々な因習を覆していくことは、容易いことではない。しかし、昨今、コンプライアンスという言葉と共に、悪しき習慣が少しずつ見直されてきていることも事実。
主語を大きくして、改革を訴えるプロパガンダより、この映画のように、1人の歩みに丹念に寄り添うことの方が、多くの気付きを与えてくれる。
10年後、20年後、この映画を観た時に「あの頃はまだそんなこと言ってたんだ」と笑えるような、フェアな社会が実現してることを、ちょっと夢みている。

sow_miya
ゆ~きちさんのコメント
2024年3月18日

sow_miya さん、共感ありがとうございました。

私の感想も全く同じです。今や日本人にとても人気のある観光地ですが、韓国人の自殺者の多さに深い闇を感じます。

ゆ~きち
琥珀糖さんのコメント
2024年2月25日

「怪物」にコメントありがとうございます。

私も観るまではとても楽しみにしてました。
私の違和感・・・sow_Miyaさんも、感じられました。
観てて楽しくないし、面白くないのが一番かしれません。
安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子の演技は、あまりに上手くて、
流石と思いましたが、湊の母親の言うことなんかそんな簡単に
学校は聞いてくれないでは?
あそこまで、謝ったり、教師があれ位の苦情で辞めてたら、
というか学校は先生をもう少し守りますね。

湊も暴力を受けたと、嘘を付いてる風もあり、保利先生への悪意・・
子供も十分に怪物的でした。
ヨリ君は湊より更に問題を抱えていました。

ラスト、色々な解釈があるようですが、私もmiyaさんと同じです。
この子たち行く先には「死」しかないと思いました。
色んな解釈が出来る意味で芥川龍之介の「藪の中」みたいですね。
是非もう一度ご覧になって下さいね。

琥珀糖
sow_miyaさんのコメント
2024年1月5日

きりんさん、コメントありがとうございます。こちら、東信地域在住のため、上田映劇がもっぱらの最寄り館です。塩尻には縁があり、年に何度かは東座の横を通るのですが、屋根の葺き替えは気付きませんでした。きりんさんのレビュー、いつも楽しみにしています。これからもよろしくお願いします。

sow_miya
きりんさんのコメント
2024年1月5日

sow_miya さんこんばんは。
東座にお見えでいらしたんですね!
東座は関東で封切られた新作が半年遅れでようやく廻ってくる土地柄なものですから、あちらで観逃したお客さんが ここ信州・塩尻まで追いかけてきたりもします。その頃には、もうすでにその映画がレンタル店の棚に並んでしまっていることもあるのですが、合木(ゴウキ)社長はめげずに頑張っています。
東座はなんと昨年、屋根を葺き替えたのですよ。

共感とフォロー、ありがとうございました。いつかお話をする機会がくるのではと思っておりました。こちらこそよろしくお願いいたします。

小生、右の目でスクリーンを、左の目で自分の人生を見ているものですから、こんな勝手に書き散らしたものが「レビュー」と呼べる代物であるのかどうか判りませんが、ご容赦くださいね。

きりん

きりん